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佐藤健の高校生役は29歳にして違和感なし! 『いぬやしき』や『半分、青い。』の演技を考察

2018年04月28日 06:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK)で、永野芽郁演じるヒロイン・楡野鈴愛を優しいまなざしで見守り、爽やかな高校生姿を披露している佐藤健。封切られたばかりの『いぬやしき』でも同じように高校生を演じているが、こちらは爽やかさとは程遠い、佐藤自身初のダーティーなキャラクターだ。


参考:【画像】『半分、青い。』と『いぬやしき』での佐藤健の高校生役を比較


 2006年に放送されたドラマ『プリンセス・プリンセスD』(テレビ朝日系)にて、17歳で俳優として走り出した佐藤。その後すぐに『仮面ライダー電王』(テレビ朝日系)で主役ライダーという大役をつかみ、一気にスターダムを駆け上がった。彼がデビューした17歳と言えば、現役高校生である。デビュー作も高校生役であったが、当然ながら彼は多くの作品で年相応である高校生役を演じてきた。


 それらの中でも深く印象に残っているのは、やはり『ROOKIES』(TBS系)の岡田優也役だろうか。数ある学園ドラマ、不良ドラマ、そしてスポ根ドラマの中でも金字塔的な位置づけにある本作には、当時の人気若手俳優がこぞって出演。ここに名を連ねることは、仮面ライダーからのさらなる飛躍と言ってよいものであった。さらに、岡田役で見せた口数の少ないクールなキャラクターは、『仮面ライダー電王』のコミカルな芝居から一転して、演技の幅の大きさを見せつける機会ともなっていた。続く『Q10(キュート)』(日本テレビ系)、そして映画『バクマン。』(2015)などで年齢とキャリアをともに重ねつつ、高校生役を演じてきた。


 あれからすでに10年以上の月日を、俳優として、その最前線を走り続けてきた佐藤はすでにもう29歳。しかしながら、いまだに高校生役が違和感なくしっくりくる。


 『半分、青い。』で彼が演じる萩尾律というキャラクターは、ヒロイン・鈴愛と同じ日に同じ病院で生まれて育った幼なじみ。仲良しグループのみんなと青春を謳歌しながらも、ひとりだけいつも冷静でどこか大人びた存在だ。佐藤自身のキャリアがキャリアなだけに、その安定した演技にはもはや瑞々しさは感じられないかもしれない。しかしだからこそ、時おり見せる少年のような笑顔の効果は大きく、本作が日本中に爽やかな朝を届けることに貢献している。実際的な若さ以上に、彼のように経験を積んできたからこそできる、良い意味で余裕のある“高校生芝居”といったところだろうか。


 奇しくもこの爽やかキャラ好演中のタイミングで封切られた『いぬやしき』。律とは打って変わって史上最凶の極悪高校生ともいえる、獅子神皓というキャラクターに佐藤は扮している。思いがけず強大な力を手にしてしまった獅子神は、全日本人にたったひとりで宣戦布告するのだ。ネタバレ防止のため詳述は控えたいところだが、ここに母子の親子愛、男女の恋愛要素、唯一の友との友情などのドラマが展開し、一筋縄ではいかない“獅子神=佐藤健”の姿を堪能することができる。


 何よりやはり、佐藤のしなやかで強靭な肉体には見惚れてしまう。アクション俳優としても大きな存在感を示す彼は、『るろうに剣心』(2012-2014)シリーズや、『亜人』(2017)などでも圧巻の身体パフォーマンスを披露してきた。とくに彼の疾走感溢れる走りの姿は、荒々しい状況下でも品があり美しく、物語の大きな転換時に見られることが多い気がする。本作でも彼の俊足が挿入された瞬間に、観客は胸の高鳴りを抑えられないだろう。


 佐藤はこれまで、人気俳優のひとりにしては珍しく、毎日見る顔というわけではなかったように思える。毎年なにかしら大きな作品で大役は務めるものの、出演本数自体は決して多くはない。作品1本1本に時間をかけているのであろうということは、彼の出演作を観れば間違いなく分かるはずである。彼の演じる多くの知的でクールなキャラクターたちが言葉以上にその姿で語るのと同様に、彼は作品で語るのだ。今年は出演作の公開が続く。間違いなく“佐藤健の年”になるだろう。


(折田侑駿)