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KinKi Kids 堂本剛、作詞に対する思いを語る 早咲きのクマノザクラから生まれた「逸る桜」秘話

2018年04月26日 21:21  リアルサウンド

リアルサウンド

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「春がまだ来ないのに、春を急かすような形で咲いている桜を見て、ちょっと僕は悲しく感じる分量が多かったんですよね」


 KinKi Kids 堂本剛の素顔に迫るドキュメンタリー番組『堂本剛の素』。第2回となる“「クマノザクラ」後編”が、4月20日より動画配信サービスGYAO!にて配信されている。第2回では、剛がクマノザクラから得たインスピレーションを歌詞に消化していく姿が収められていた。


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 ロケ開始30秒で、103年ぶりに桜の新種として認定されたクマノザクラを見つけてしまったため、“クマノザクラを見る”という当初の目的から“クマノザクラを間近で見る”に変更した剛たち。


 向かう道中でスタッフが「桜って、センチメンタルな感じになりますよね。一週間で散っちゃいますしね」と呟くと、剛は「そ。なんかさ、その時だけみんなチヤホヤしてさ、葉っぱが落ちたらもう見向きもしないみたいな。そんな可哀想なことある? 利用するだけ利用してね、みんな。桜という言葉を使って。終わったら、ハイ、サヨウナラやもんな~」ともの哀しげに話す。


 実際に間近でクマノザクラを見上げた剛は「綺麗ですね~。ほんまちょっとやったら切なかったけど、これは嬉しい咲き方ですね」と言い、「よかったわ~。なんか縁起いい感じするわ」としみじみ口にした。町役場の職員によると、クマノザクラは全体的にピンクがかっており、咲く時期がソメイヨシノやヤマザクラよりも早いのが特徴だという。またクマノザクラの後にヤマザクラが咲くため、「紀州の桜は二度咲く」と言われているのだとか。


 そんな早咲きのクマノザクラを見て、「逸る桜」という歌詞を綴る剛。タイトルの意味については「気持ちがハヤルとかね。急ぐという意味」と説明している。<春を急かし色彩付くから/僕は遠い君を想い出す><いずれ此の身も旅立ちます/此のピンクの羽のように><美しく…儚 悲しく>とクマノザクラの特徴と実際に目で見て感じたことを歌詞に落とし込んでいった。


 そして、「自分がそのとき思ったことを素直に書きたい。どれだけ言葉が長くなったとしても」と作詞に対する思いを語る。悲しいストーリーを見て涙を流し、応援ソングを聴いて元気になれるのなら健康体だと自身の考えを述べる剛は、「どこか悲しい現実を突きつけていたり、そんな暗いこと言わないでよっていうような内容だったり、そういう表現の方が、本当のどん底とか気持ちが紙一枚で繋がっているような人を救う歌が作れると、僕は思ってるんですよ」とコメント。そんな絶望の淵に立っている人たちを救える歌を作るとき剛は、「戦いながら書かなきゃいけない」と思うのだとか。


 続けて、「大多数の人を励ましたり、大多数の人を救えるような曲を作ろうとは思ってないから。僕の人生一回で僕しか生きれなくてっていう中で得た、小難しい考え方とか感情ってオリジナリティが強くなるはずだから。僕はそういうものを羅列してまず一回書いてみるっていうか」と剛だからこそ芽生える感性を何よりも大切にしていることを明かす。


 「一人の人生を投影したような詞」を書くことに注力している剛。もしかしたら、作詞は剛にとって身体の一部をそぎ落とす行為に近いのかもしれない。だからこそ、その詞を歌う剛の声は真っ直ぐと私たちの心に響いてくるのだろう。彼の人生を歌という形で開示していくことで、真っ暗な場所で立ち尽くす誰かに光を与える。大衆に向けて書いているのではなく、群衆からはぐれた誰かのために書くという剛は、やはりどこまでも繊細で優しい。そしてきっと誰よりも一瞬だけ輝く桜を憐れみ、思いを馳せている。そんな剛の目から見た桜は、どれだけ悲しくて美しいのだろうか。(文=朝陽空)