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好きな小ネタから撮影裏話まで 主演タイ・シェリダンが語る『レディ・プレイヤー1』

2018年04月26日 18:02  リアルサウンド

リアルサウンド

 映画『レディ・プレイヤー1』が4月20日から公開された。スティーヴン・スピルバーグが監督を務めた本作は、VR世界“オアシス”だけを希望に生きる人々が暮らす2045年が舞台。ある日、“オアシス”の創設者ジェームズ・ハリデーが亡くなり、“オアシス”内に隠した3つの鍵を一番最初に見つけた者に経営権と56兆円が贈られるという遺言が全世界に公開。17歳のウェイドとその仲間たちは、必死に謎を解き明かそうと奮闘する。


 今回リアルサウンド映画部では、主人公ウェイド役を務めたタイ・シェリダンにインタビュー。モーションキャプチャーを使った撮影や、イースターエッグ(小ネタ)についてなどを語ってもらった。(取材・文・写真=阿部桜子)


ーー同一人物といえど、ウェイドとそのアバターであるパーシヴァルの性格は異なっていますよね。演じ分ける上で工夫はありましたか?


タイ・シェリダン(以下、シェリダン):ウェイドを見たときに、彼の中に2つのキャラクターがあることを感じてほしかったんだけど、演技のアプローチとしては全く違うキャラクターを演じる方法を取ったんだ。どうしてかと言うと、最初にウェイドが登場する場所と、パーシヴァルが出てくるところは、まったく違うからね。


ーー“オアシス”のシーンは、どのように撮影されたのでしょう?


シェリダン:モーションキャプチャーを使っていたんだけれど、実は最初の8週間で撮影し終えちゃったんだよね。つまりウェイドを演じる前に、パーシヴァルの撮影は終わっていたんだ。ストーリーの中では、バーチャルと現実の世界を行ったり来たりするよね? だから、この2つの世界を分断されたものではなく、綺麗に繋げなければならなかったんだよ。それにバーチャルと現実の世界が重なるシーンがあるから、モーションキャプチャーで何をやったか自分で覚えておかないといけなかったんだ。だから12人くらいの人がモーションキャプチャーでの演技をメモに取って、現実パートの細かいところまでチェックしていたよ。


ーーモーションキャプチャーの撮影は、今回が初めてだったんですか?


シェリダン:僕はそうだったね。スピルバーグは、『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』や『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』でモーションキャプチャーを使っているからとても慣れていたよ。あと、マーク・ライランスが『BFG』で経験していたね。でもこの映画では、スピルバーグが初めて使う技術もたくさんあるんだ。だから『レディ・プレイヤー1』は、ほかの映画でも使われていない最新のテクノロジーを駆使した映画なんだよ。僕は、最終的にどういう画になるのかをリアルタイムで見ながら、モーションキャプチャーのスペースで演技をしていたんだ。


ーーそんな撮影を経て、出来上がった本作には驚いたのではないでしょうか。


シェリダン:オリヴィア・クックと2人で観たんだけれど、あまりにも驚きが多くて、言葉もなかったよ……。アニメーションが本当に素晴らしかった。俳優っていうのは、自分が出演した作品を観ることに少しためらいがあるから、観客として観るっていうのはすごく難しいんだよね。でも驚いたことに『レディ・プレイヤー1』は、自分が出ていることを忘れて没頭することができた。とても特別な経験だったね。


ーー劇中ではたくさんの80年代カルチャーが登場しますが、あなたが生まれる前の出来事ですよね。


シェリダン:映画のオマージュはもともと知っていたんだ。でも、アーネスト・クラインの原作小説『ゲームウォーズ』は80年代のカルチャーを学ぶのにとても役に立ったね。80年代に生きていたとしても絶対知らないようなことが、この小説の中には書かれているんだ。その中にも、僕が知っていたものもあるんだよ! 劇中に、“ある映画”の中に入り込むシーンがあったよね? あの映画は撮影前にもう1度観たよ。昔の作品を観るのってすごく楽しいんだ。子供の頃観たものを大人になってもう1度観ると、違う意味を持ってくるんだ。でも、80年代の音楽だけは知らなかったから、ブラッシュアップしたよ。


ーー数々のイースターエッグの中で、お気に入りはありましたか?


シェリダン:やっぱり『アイアン・ジャイアント』かな。本当に何度も何度も繰り返して、多分100回以上観ているよ。僕としてはこのキャラクターに特別な感情を抱いているね。アイアン・ジャイアントが僕が演じたパーシヴァルの隣に立っていて、さらにスティーヴン・スピルバーグが監督した映画に出ただなんて信じられない思いだったよ。


ーー日本に関するイースターエッグもたくさん出てきますが、日本のアニメはもともと知っていたんですか?


シェリダン:もちろん知っていたよ。世界各地でプレミアをやってきたけれど、日本のイースターエッグが出てくるシーンは、みんな発狂するほど喜ぶんだ(笑)。みんなの日本のアニメに対する愛はとても強いよ。だから僕も興味を持つようになったんだけど、今まで観た中で好きだったのは『君の名は。』だね。現実的でヒューマンドラマを描いた作品が好きなんだ。


ーーそんな懐かしいものもたくさん出てくる中、未来を舞台に現在の問題に触れている気がしました。


シェリダン:この映画は、今起きていることを描いていると僕は思っているんだ。今は常にデジタルで繋がっている時代だよね。この作品では、未来の物語の中に現代へのメタファーが描かれている。例えば“オアシス”の存在は、今あるデジタルプラットフォームに似たところがあるよね。今は2018年だけど、テーマが普遍的だから、長い間みんなに共感してもらえる作品になったと思うよ。


ーーちなみに、人生で初めてしたゲームを覚えていますか?


シェリダン:NINTENDO64だったよ! ゲームキューブも持っていたかな。ただ、小さいときはゲームをしていていたんだけど、10代になってからゲームはやらなくなってしまったんだ。テキサスの田舎で育ったからスポーツが好きで、いつも外にいたからね(笑)。でもVRのゲームは大好きだよ! 初めてやったときは現実を忘れて、本当にその世界にいるみたいだった。この映画をきっかけにVRにとても興味が湧いたよ。


ーーウェイドとあなたには、どこか共通点を感じますね。


シェリダン:結構似ているところがあるんだ! 劇中でウェイドは、おばさんと一緒に暮らしているけど、僕がキャスティングされたときも、ちょうどおばさんと住んでいたんだ(笑)。彼はとてもVRの世界に飛び込むことが好きで、僕もキャストの中でも特にVRが大好きだった。本当に偶然なんだけれど、ウェイドと似ているところがたくさんあったよ。


ーー本作の良いところは、ヒーローのようにスーパーパワーを持っているわけではない普通の青年ウェイドが、世界を救おうとするところだと思います。


シェリダン:そこがこの作品に、人間性をもたらした部分なんじゃないかなと思う。ハイファイブのメンバーは、みんな全然特別な存在じゃないんだ。彼らを見ていると、自分に自信がなかったり、本当の性別を知られたくなかったするよね。そういうところが、みんなの共感を呼んだんだと思う。どうしてかと言うと、誰しもが自分の中に恥ずかしいことって持っているからね。最終的にハイファイブの5人は、自分自身を受け入れて、さらに他人からも認められる。ここがこの作品の美しい部分だと思うんだよね。


ーー見事なチームワークを見せていたハイファイブの5人でしたが、撮影裏でも団結していたんですか?


シェリダン:2週間のリハーサルを経て撮影に入ったんだけれど、毎日モーションキャプチャーのスーツを着て、やったことのない撮影を行ったんだ。だからすごく絆が強くなったね。そこにスピルバーグが来たんだけど、本当に色んな話ができたよ! だってスティーヴン・スピルバーグの映画に出るなんて最高すぎるだろう? それに、スピルバーグは若々しい心を持った人で、本当に子供のような一面を見せる場面もあったんだ。だから、僕たちも子供時代に戻ったように演技ができたんだよね。公園で遊んでいるみたいに、包み隠さず自分の全部を出すことができて、彼が作り出してきたキャラクターの一員になれた気がした。『E.T. 』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『グーニーズ』とかもそうだったと思うんだけど、スピルバーグが子供のような精神を持っているからこそ、『レディ・プレイヤー1』のセットにいた全員が家族の一員ような気持ちになれたんだと思う。スピルバーグは父親みたいな存在で、お父さんが子供たちを愛するようにとても健全な環境で撮影することができたよ。