全日本ロードレース選手権第2戦鈴鹿JSB1000クラスで、結果的に中須賀克行(ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チーム)がその速さと強さをいかんなく発揮した。レース2では高橋巧(チームHRC)との激しいバトルを制し、鈴鹿サーキットでダブル・ポール・トゥ・ウイン。ひたひたと背後から迫るホンダワークスを振り切る勝利だった。
鈴鹿サーキットで迎えた全日本JSB1000第2戦の土曜日予選、観客席からどよめきが起こった。中須賀が2分4秒876の新コースレコードタイムを叩き出したのだ。これまでのコースレコード2分5秒192を更新する驚異的なタイムだった。
迎えた決勝レース1、飛び出したのは高橋、そして渡辺一馬(カワサキ・チームグリーン)だ。ホールショットを奪った高橋を渡辺一馬が交わし、中須賀は2番手で渡辺一馬に続く。序盤はそのふたりに加えて高橋、野左根航汰(ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チーム #5)、渡辺一樹(ヨシムラ・スズキMOTUL)が集団を形成し、レースをリードした。
「一馬選手がオープニングラップでトップに立って、いいペースで走っていたので後ろについて様子をうかがうことにしました」
中須賀はレース中の様子についてそう振り返っている。18周のレースはこの5台をトップ集団として続いた。中須賀はその間、ずっと渡辺一馬の背中にぴたりとつけ、虎視眈々とオーバーテイクするタイミングを伺っていたのだ。
そして14周目のデグナーカーブ立ち上がりで、中須賀が動いた。トップに出るタイミングについて、レース後の会見で中須賀は「周回遅れが出たら前に出ようと思って走っていた」と語っている。
レースリーダーに躍り出た中須賀はそこから一気にスパート。渡辺一馬を交わして2番手に上がった高橋の追随を許さず、そのままトップでチェッカーを受けた。終わってみれば、2位の高橋に約2秒もの差をつけての優勝だった。
「いつもだと最終シケインで仕掛けているけれど、そこで勝負をしても高橋選手たちがついてくるのは予想できていたので、いつもとは違うデグナーカーブ立ち上がりから立体交差、110Rで仕掛けてトップに立ち、この作戦が的中して、その後に独走できました」
速さだけではない、巧みな戦略が強い中須賀を形成しているとあらためて感じさせるレースとなった。
■レース2、中須賀と高橋、ヤマハとホンダのワークス同士が激突
予選のセカンドタイムがグリッドを決めるレース2でも、ポールシッターとなったのは中須賀。そして2番手に続いたのは高橋である。
ホールショットを奪った高橋は渡辺一馬とのバトルを制してオープニングラップのコントロールラインをトップで通過。中須賀も高橋に続く。ふたりは序盤に2分6秒台のハイペースなタイムを記録し、周回を重ね続ける。
どこで中須賀が高橋に仕掛けるか。高橋をテール・トゥ・ノーズで追い続けていた中須賀は「高橋選手がトップに立って、すぐに2分6秒台のハイペースでの走行だったので、うかつに仕掛けることができず、どのタイミングで勝負するかを考えながら走っていました」と明かす。
レース終盤まで、ふたりの順位はトップ高橋、2番手中須賀のまま変わらなかった。動きがあったのは15周目だ。「第1~第2コーナーで高橋選手を一度抜いたのですが、第3コーナーですぐに抜き返してきた」という激しいバトル。しかし、中須賀の目には高橋の状態を冷静に見抜く。「高橋選手は様子を見る余裕はなく限界ギリギリの走りだと分かりました」
「僕もサインボードを見る余裕がないほどでした」とも語る中須賀だったが、16周目のスプーンカーブで高橋を交わすとそのまま一気に引き離し、トップでチェッカー。シーズン4連勝、2017年シーズンから数えて8連勝を果たした。
「最後はうまく高橋選手を抜いて、そしてタイム差を広げることができました。開幕4連勝で流れはしっかり掴んだので、今後のレースもしっかりと戦っていきます」
ヤマハとホンダのワークス対決で、チームHRCの高橋を退けた中須賀。会見では「高橋選手のペースになじむのに必死だった」とコメントしているが、最後には高橋に約2秒の差をつけての優勝だった。中須賀の強さには、まだまだ底が見えそうにない。