4月26~29日に行われるWRC世界ラリー選手権第5戦アルゼンチンに向けて、参戦するドライバーたちが意気込みを語った。
南米アルゼンチンを舞台に争われるラリー・アルゼンティーナは1980年に初開催された1戦。おなじく南米メキシコで3月に行われた第3戦同様、グラベル(未舗装路)を舞台に争われる。
ただし、その路面コンディションはバラエティに富んでおり、砂丘地帯や地面から岩が顔を覗かせる山岳地帯が舞台となるほか、ステージによっては川を渡るエリアも存在する。
特に路面が軟らかい砂丘では、マシンが走行するたびにわだちが深くなり、午後の走行ではこのわだちにハンドルを取られることや、マシンにダメージを負うような状況も出てくる。そのためドライバーは午後の走行に向けて車高を調整する必要がある。
また、この時期のアルゼンチンは初秋の季節で大気は不安定。ラリー中は降雨に見舞われることもあるほか、標高の高い山岳ステージでは霧や雹がドライバーを襲う可能性もある。
ラリーは、アルゼンチンの首都ブエノス・アイレスから北西に700kmほど離れた湖畔リゾート地、ビジャ・カルロス・パスが中心地。競技初日の26日夜には街の中心部でストリートステージのSS1が行われる。
翌27日(金)の競技2日目からはビジャ・カルロス・パスの南側に広がるカラムチータ谷の周辺で本格的なグラベルラリーが幕を開ける。この日はSS2~8の7SSが行われ、このうちSS5はサービスパーク近郊で2台が同時走行するスーパースペシャルステージだ。
競技3日目の28日(土)は一転して山岳地帯が舞台の1日。この日も前日同様に7SS、SS9~15が行われる。このうちSS12はスーパースペシャルステージとなる。
競技最終日の29日(日)はSS16~18の3SS。このうちSS16とSS18に設定される“エル・コンドル”はラリー・アルゼンティーナを代表する名物ステージで、コース両脇を大きな岩がそびえ立つなかを走行する。
2018年大会におけるエル・コンドルは2017年に設定されたルートを逆走するような構成となっているので、ドライバーにとっては新たなチャレンジ要素だ。
シリーズ最上位クラスに参戦している4メーカーは、全チームが3台体制での参戦。フォード・フィエスタWRCを投じるMスポーツ・フォードはセバスチャン・オジエ、エルフィン・エバンス、テーム・スニネンの3名を起用する。
2017年のラリー・アルゼンティーナを制したティエリー・ヌービル擁するヒュンダイ陣営は、アンドレアス・ミケルセンとヌービル、ダニ・ソルドの3名にヒュンダイi20クーペWRCを託す。
苦戦続きのシトロエン勢はクリス・ミークとクレイグ・ブリーンにカリッド-アル・カシミを加えた布陣。トヨタ勢はヤリ-マティ・ラトバラ、エサペッカ・ラッピ、オット・タナクと不動の体制で挑む。
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■Mスポーツ・フォード
●セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)
「今シーズンはとてもいいスタートを切れたから、アルゼンチンでもこのポジティブなスタートを維持するつもりだ」
「アルゼンチンは、ジュリアン(イングラシア/コドライバー)と僕が優勝したことのない唯一のイベントだから、勝利に固執するつもりはないけど、表彰台の頂点に立ちたいね」
「優勝するのが簡単ではないことは分かっている。だけど、今年僕たちは躍進を遂げているからベストを尽くす。(先頭走者を務める)金曜日のタイムロスを抑えることができるかが鍵になるはずだ」
「前回のグラベル(ラリー・メキシコ)でマシンのフィーリングは最高だったけれど、アルゼンチンの路面は完全に異なる特徴を持つ。ここの道はよりソフトで砂利が多いけれど、ところどころかなりラフだったりもする。だから、いい結果を残すにはスピードと耐久性のバランスが大事になる」
●エルフィン・エバンス(フォード・フィエスタWRC)
「(コドライバーの)ダン(ダニエル・バリット)が完全に回復してイベントに復帰できることがうれしい」
「ここには、僕らふたりにとって特別な思い出がたくさんあるんだ。2015年に初めて表彰台を獲得した場所で、昨年は優勝にかなり近いところまでいった」
「あれは受け入れ難い敗北だったけれど、それで僕らはより強くなった。今年もまたトップリザルトに挑戦したいと思っている」
「今シーズンはベストな出だしとは言えない。だけど、今週こそ好転させるつもりだ。コルシカでの着実な結果と、アルゼンチンにダンが戻ってきてくれたことで、いい結果を出すことにフォーカスしたチャレンジを楽しみにしているよ」
「わずかなミスも許されないから、こういうイベントでは、かなり慎重なアプローチを取らなければならない。ほとんどすべてのコーナーでコースアウトに陥る可能性がある。だから、クリーンなラリーを心がけて、ミスは最小限にしなければならない」
「僕らはこのイベントの準備として、いくつかの開発テストを完了した。そこで、またグラベルでのドライビング感覚を得ることができたよ。初日はかなりいい出走順となるし、マシンのフィーリングもいい。だから、やれるだけやってみるよ!」
●テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)
「ラリー・アルゼンティーナは、僕がまだ参戦したことがないという点で興味があるイベントだよ。2016年にレッキを担当して、覚えているのは多くのリズムチェンジがあるということ。高速セクションから突然、ミスの許されない狭いセクションに道が変化するんだ」
「このリズムチェンジが最大の挑戦になるけど、路面が軟らかくなっている箇所もあるし、点在する岩や小石によってパンクするリスクもある」
「ポルトガルで開発テストを終えて、グラベルで充分な距離を走行できた。あのテストはすごく重要だったよ。マシンを信頼しているけれど、アルゼンチンではコンディションが少し異なるからね」
「今週の僕の目的は、学習を続けることと、経験を積むこと、ドライビングを向上すること。それができたら、いい結果も付いてくるはずだ」
■ヒュンダイ・モータースポーツ
●アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)
「ラリー・アルゼンティーナは多分シーズン全体で一番好きなラリーのひとつだと思う。特殊なタイプのグラベルイベントだ。路面は砂が多くて、僕のドライビングスタイルとより相性がいい」
「コーナーへの進入で角度をつけることができるから、より激しくアタックするのに役立つんだ。そして2回目の走行時、ステージはとても荒れているからマシンを守る走りが大事になる」
「それでも全体的には美しいラリーだよ。エル・コンドル(SS16/18)とミナ・クラベロ(SS17)のふたつが、僕が特に楽しみにしているステージだ」
●ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)
「ラリー・アルゼンティーナは有名なイベントだし、信じられないくらい熱心なラリーファンを引きつける魅力がある」
「ステージを走っている最中、素晴らしい雰囲気に包まれているのもありがたいことだ。特に去年の大会ではパワーステージで劇的な逆転勝利を飾ったからね。今回も同じような結果を残したい」
●ダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)
「大勢の観客がこのラリーを誰にとっても特別なものにしてくれる。たくさんの人々がコース沿いに並び、応援してくれるのを見るのはいつだって嬉しいものだ。どんなパフォーマンスを出していようが、僕たちを本当に後押ししてくれる」
「もちろん僕たちの目標はトップで戦うことだ。僕たちは何度か続けて良い結果を出してきている。この勢いを利用して、グラベルでの表彰台をもう1度獲得したい。メキシコでそうしたようにね」
■シトロエン・レーシング
●クリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)
「この5戦目のラウンドにはランキングの上位に返り咲くという固い決意で臨んでいく。でもこのラリーはとてもチャレンジングだから、それなりの心構えで臨む必要がある」
「いつものように自分のベストを尽くすが、天候が要因のひとつになるかもしれない。路面コンディションに関しては、過去半年の間にどれだけ雨が降ったかにも左右されるんだ」
「いずれにしても、このラリーを僕は気に入っている。ステージの難度も幅広く、とても熱心で温かい地元のファンからの歓迎がある。それに加えて、ここではいつもいい気分なんだ。これまで4度参戦したうち、WRCでの初優勝も含めて、2度の表彰台を獲得しているからね」
●クレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)
「このラリーには過去1度しか出場したことがないし、それも限定的な参戦だった。ライバルは何年もここのステージを走っているから、自分の経験不足が影響するんじゃないかと不安だよ」
「ただ、昨年は少し参加しただけだけど本当に楽しめた。スタートが待ち遠しいよ」
●カリッド-アル・カシミ(シトロエンC3 WRC)
「最後にこのラリーに参戦してからしばらく経っているから、僕にとって大きなチャレンジになるだろうと思っている。でもとても楽しみにしているよ。自分のドライビングを再度確認し、ステージに向けたペースノートを見直すなど、入念に準備をしなくては」
「僕の目標は、完走し、自分自身が楽しみながらも、チームをサポートすることだ」
■トヨタ
●ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)
「2014年の優勝を含め、ラリー・アルゼンティーナには楽しい思い出がたくさんある。本当に挑戦し甲斐があるイベントだから、うまくいった時はとても大きな満足感が得られるんだ」
「さまざまな路面が良いバランスでミックスされているのがラリー・アルゼンティーナのコースの特徴だ。金曜日は谷間の軟らかい路面を走行するハイスピードなSSが多く、土曜日には山岳地帯の荒れた路面を走る」
「そして日曜日には、今年もパワーステージに指定された有名なエル・コンドルを走行するけど、コース脇の丘にはいつも大勢のファンが集まり声援を送ってくれる素晴らしいステージなんだ」
「ラリー・アルゼンティーナはクルマに大きな負荷がかかる1戦だけど、我々チームは昨年の大会から多くを学んだ。全員で一生懸命働き続けクルマをコンスタントに改善してきたから、今年はきっと成長した姿を見せることができるだろうし、その結果としてポイントを獲得できればうれしいね」
●オット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)
「ラリー・アルゼンティーナはつねにとてもタフなイベントだ。スムーズで高速な良いステージがある一方で、技術力と注意力が求められるテクニカルな道も多く、週末の間にいくつもの異なる条件の道と対峙することになる」
「また、路面コンディションも非常に悪くなりやすいから、クルマにとっても大変なラリーなんだ。昨年、総合3位でフィニッシュしたから、今年は自信を持ってラリーに臨むことができる」
●エサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)
「ラリー・アルゼンティーナへの出場は今回が初めてだけど、過去にレッキ(コースの事前下見走行)を2回行なったから、どのようなラリーであるかは思い描くことができる」
「路面はところどころ非常に悪化しやすく、岩や石が転がっている道も多いと聞いているから、そのような路面ではいつも以上に注意して走る必要があるだろうね」
「金曜日のSSは土曜日よりも路面が少し軟らかいため難しく、日曜日のSSは山岳地帯が舞台となり、固い路面に岩や石が散らばり、砂や埃が覆う滑りやすいルーズグラベル状態となった道が多いと思う」
「ひとつ前のグラベルラリーだったメキシコでは非常に多くを学んだので、ラリー・アルゼンティーナではより良い戦いができるという自信があるよ」