トロロッソと組んだ2018年のホンダに対するプレッシャーは、明らかにそれまでの3年間とは異なっている。トロロッソ側からホンダへの批判めいたコメントは、これまでのところ全く発せられていないからだ。
例えば、開幕戦ではピエール・ガスリーのMGU-Hがトラブルを起こし、リタイアした。レース後、ガスリーは「テストではトラブルが全く起きていなかったから、開幕戦で起きるなんてがっかり」と言いながらも、「でも、僕らはこのトラブルから何かを学び、ポジティブな面に目を向け、さらに強くなってバーレーンで戻って来なければならない」とホンダを直接的に批判することはなかった。
チーム代表のフランツ・トストも同様だ。
「さまざまな理由により結果を得ることはかなわなかった。失望の週末を振り返るより、山積している課題に取り組み、バーレーンでは良い結果を残したい」と、MGU-Hのトラブルは週末に起きた不運のひとつにすぎないという主旨のコメントでレースを振り返っていた。
ちなみに1年前のオーストリアGPではフェルナンド・アロンソが「戦闘力のないマシンでポイント争いができたことはとても驚いている」と語り、エリック・ブーリエ「2017年のオーストラリアGPがマクラーレン・ホンダにとって至福の時として記憶に残ることはないだろう」と語っていたのと大きな違いである。
ただし、トストがホンダのトラブルを見なかったことにしていたわけではなかった。オーストラリアGPのレース後、山本雅史モータースポーツ部長は森山克英ブランド・コミュニケーション本部長とともにトロロッソのホスピタリティハウスを訪れ、トストに謝罪。そこでトストはホンダ側にこんなお願いをしていた。
「トラブルが起きた原因に関しては、しっかりと解析してもらいたい」
オーストリアGP後も「その後、問題はどようなっている?」と、トストから山本のところへ何度もメールが届いたという。つまり、トストにとっても、開幕戦でのMGU-Hのトラブルは決して小さな問題ではなかった。
それでも、昨年の終盤にルノーのPUに問題が発生したときのような批判を行うことがなかったのは、ホンダとの関係を大切にしたいというトロロッソだけの考えではなく、レッドブルとの将来を考えているからだと、あるトロロッソのチーム関係者は言う。
「私たちの関係が良ければ、その先にホンダの2チーム目の供給も見えてくる。だから、われわれから関係を悪化させるような言動は極力慎むようにしている」
優勝争いをしているトップチームのレッドブルが2019年にどのパワーユニットを搭載するのか。その決定はホンダだけでなく、トロロッソにとっても決して無関係なことではない。