ここ何年も、企業が新入社員に求める能力の第1位は「コミュニケーション能力」だ。しかし、それってお互い様というか、上司の側にも求められるものなんじゃないだろうか。
はてな匿名ダイアリーに4月21日、「上司が無能過ぎて吐きそう」との投稿があった。投稿者は新人ではないようだが、上司のアナログな仕事ぶりと、何をどう直せば良いか分からないダメ出しに辟易している。
200枚ものWord資料をすべてプリントアウトし、赤字を入れて返してくるという上司の指示は、「←これ直して」だけ。度々問い正しても「どう直せばいいのか」は教えてくれず、投稿者は最終的に「もう関わりたくない」「胃が痛い」「助けて」と訴えている。(文:okei)
休日の朝、手書き訂正の写真が100通以上送られてきた
投稿者は、自分が回すプロジェクトは「Googleドキュメント」でメンバーと共有し、速やかに仕事を完遂するというタイプ。それだけに、すぐに「面倒だから」と電話で説明したがる上司を非常に疎んじている様子だ。
電話だと後ですぐに違う事を言われるので、Word上で作業した方が履歴が残るし早いと考える投稿者に対し、紙と電話で仕事を進めたい上司との攻防が続いた。なんとか電話を拒否して「Word本文に直接(コメントをつけて)指示を書いて下さい」と連絡したが、しまいにはこんなことになった。
休日の朝、LINEに100通以上の通知がきたのだ。
「上司がプリントアウトしたものを手書きで訂正して、それを全て写真撮影したものだった」
最後に、「今日中に全て直して月曜日プリントアウトして持ってきて」とのメッセージがあった。休日に、有無を言わさぬ業務命令である。しかも相変わらず「どう直すか」という指示はなかった。
さすがにこれは、絶望的なほど無駄なやり方に思えるのもよく分かる。上司は社内チャットすら覚えようともしないし、「そもそもGoogleを信用していない」というから胃の痛みは増すばかりだろう。
「ツールの問題じゃなくてコミュニケーションの問題」
この投稿はブックマークが500以上つき、賛否両論に分かれていた。賛同が多かったコメントは、
「問題点は上司がアナログなことではなく、修正の具体的指示をしないことである」
という指摘で、筆者も同感だ。上司はダメ出しするなら「結果的にどうなるとOK」という最終目標を示してくれないと、実際にどうすればいいのか分からない。
一方で、投稿者もよくないと諭す声や批判も多かった。
「上司からしてみれば自明過ぎて詳細書く必要もないような修正項目なんだろうな。増田(投稿者)も無能と思われてそう」
「紙で印刷して持って行くほうが楽な人ってクライアントにもいるよ。『どう修正するのかその紙に書いて』って言ったほうが早いで」
などである。「ツールの問題ではなく、コミュニケーションの問題」との声もあり、まったくその通りだ。むしろツールへのこだわりがコミュニケーションを阻害していないだろうか。投稿者は電話を頑なに拒否するなど、相手のやり方で話を聞こうという歩み寄りがみられない。
追記で明かされたメールのやりとりをみると、
「〇〇君、自分の意見を言って。何でも指示を待ってたらダメだよ」
「自分で見つけるスキルを身につけような」
などと返されており、どうやら上司には教育的な意図がありそうだ。もしかすると、赤の部分を統計的にじっくり分析すれば、なぜダメなのか見えてくるのかもしれない。
だとしてもこの上司は、訂正指示した部分を忘れたり、直していない所を了承したりするというから残念だ。はっきりした理由もなくダメ出しする、面倒な上司と思われても仕方ないだろう。
コミュニケーションは、ただ自分の思っていることを言えば良いのではなく、相手の立場に立って伝わるように話すことが大切だ。この場合、お互いに自分の考えを相手に伝える表現力や努力が足りず、いつまでも並行線なのがもどかしい。こうした齟齬は、日本の全国各地で繰り広げられていそうな気がする。