2018年04月25日 10:12 弁護士ドットコム
新年度が始まり、学校では新しいメンバーによるPTAや保護者会がスタートする時期になりました。保護者同士の円滑なコミュニケーションが、子どもたちの学校生活向上にもつながるとはいえ、トラブルも絶えません。
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今年4月、晴れて都内の私立小学校に長女を入学させた女性。入学前の説明会で配布されたプリントに驚きました。そこには、「保護者同士のメールやSNS、LINEは禁止とさせていただきます」と書いてあったのです。同時に「学校の方針に従うこと」という誓約書にもサインさせられたといいます。
「保育園ではママ友たちとLINEで連絡を取り合い、子育ての悩みを相談するなど、お互い支え合って育児をしてきたのでショックでした。でも、誓約書を書かされたので、もしこっそりLINEをして、学校側にバレた場合、子どもの学校生活にも影響しないか心配です」と女性は話します。
他にも、ランチ会を禁止する学校もあるようです。一体、学校側はどこまで保護者の行動を規制することができるのでしょうか。浮田美穂弁護士に聞きました。
保護者同士のLINEやSNS、ランチ会などを禁止する学校がありますが、法的な拘束力はあるのでしょうか?
「そのような学校があるとは驚きました。もちろん、法的な拘束力はありません。
保護者同士のトラブルが絶えない学校で、そのトラブルの処理に学校が巻き込まれたり、児童自身の生活が乱されるなどして、学校としては大分困っているのかも知れませんが、あくまでも、『できるだけしないで下さい』という『お願い』でしかありません。
ママ友に育児の悩みを相談したり、励ましあったりするのは有意義なことですし、ママ友とランチ会をしたり、メールやLINEをするのも、しないのも、保護者の私生活の自由です。
学校が一方的に、保護者の私生活の自由を奪うことはできませんから、学校がいくら『禁止とさせていただきます』と言ったところで、法的な根拠はなく、あくまでも『できるだけしないで下さい』という『お願い』でしかないのです」
私立小学校のケースでは、学校の方針に従うという誓約書に署名捺印させられています。もしも禁止されていることに違反した場合、誓約書は不利になりますか?
「『お願い』であっても、その『お願い』に従うという誓約書に署名捺印したのだから、違反したら不利になるのではないかという点がご心配かと思いますが、たとえ誓約書に署名捺印しても、学校の『お願い』に縛られることはありません。
そもそも、『保護者同士のメールやSNS、LINEは禁止とさせていただきます』というのが、保護者の私生活の自由を奪う内容であり、かなり行き過ぎた内容だと思います。学校が禁止したいのは、メールやSNS、LINEで無用なトラブルを起こすことだと思いますが、利用することそのものを禁止しているからです。
そして、『学校の方針に従います』という誓約書も署名捺印しない訳にはいかないので、署名捺印しているのであって、保護者はこの点については反対しますという意思表明をすることはできません。
ですから、たとえ誓約書に署名捺印しても、学校の上記『お願い』に縛られることはなく、署名捺印した上で違反したとしても、それにより不利になることはありません。
また、保護者のしたことで児童が出席停止や退学の処分を受けることもありません」
保護者がLINEなどを利用する場合のアドバイスをお願いします。
「子どもたちに、LINEでそんなことをしてはいけないと指導しているのと同じようなことを大人もしていることがありますが、保護者がそのようなことをしていてはいけないと思います。
自分の子どものライバルを蹴落とすためにSNSやLINEを利用することは慎んで頂きたいと思います。
相談者のように、子育ての悩みを相談したり、お互いに支えあったりするために、利用されるのはとても良いことだと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
浮田 美穂(うきた・みほ)弁護士
2002年、弁護士登録。2010年度金沢弁護士会副会長。2011年から、石川県子ども政策審議会児童福祉部会委員。著書に 「ママ弁護士の子どもを守る相談室」(2013年、一万年堂出版)。
事務所名:弁護士法人兼六法律事務所
事務所URL:http://kenroku.net/