■54人中54人がセクハラ被害を経験したと回答
アメリカの野外音楽フェスティバル『The Coachella Valley Music and Arts Festival』(以下『コーチェラ』)が、現地時間の4月22日に幕を閉じた。
4月13日から15日、4月20日から22日の2週にわたって行なわれた同フェスティバル。第1週はライブストリーミングが行なわれ、「コーチェラ」を「ビーチェラ(Beychella)」に変えてしまったBeyonceの圧巻のステージをはじめ、様々なアクトのライブを世界で同時に楽しむことができた。
一方で残念なニュースもある。米『Teen Vogue』のレポートによれば会場でセクハラ被害が多発していたというのだ。
『コーチェラ』第1週に参加した『Teen Vogue』のエディターVera Papisovaは、会場で54人の女性にインタビューし、54人全員が3日間のうちに性的暴行や性的嫌がらせを受けたと回答。彼女自身も会場でインタビューを行なっていた10時間の間に22回も身体を触られたという。
■「この週末だけで40回」「どのコンサートでもあること」
インタビューに答えた20歳の女性は「お尻や腰を触られる以上のことはなかったけど、そこは触っていい場所じゃないし、そんなこと同僚やほかの男性にはしないでしょ?だったら私にもしないで。今日で3日目だけどこの週末だけで40回はあった」と告白。
別の19歳の女性は「どのコンサートでもあること。『コーチェラ』では多くの男性が女性に触って逃げて行く。気づいてないと思ってるんだろうけど、私は何度も経験しているし、全部気づいてる」、16歳の女性は「怖いし、周りの人たちも助けてくれるかわからない。それに身体の大きい男性が相手だと怒らせて暴れたりするのが怖いから言い返したりするのも難しい」と語っている。
また地元メディアの「KMIR」は、『コーチェラ』が行なわれる2週間でコーチェラ・ヴァレーにあるアイゼンハワー病院の性暴力被害対応チームが受ける通報は、通常の1か月分に相当する数だと伝えている。
■相次ぐ大型フェスでの性的暴行事件
『コーチェラ』に限らず、音楽フェスティバルではアルコールやドラッグ使用の影響もあり、セクハラ被害、性的暴行被害は相次いで報告されている。
2014年にはイギリスの『レディング・フェスティバル』で19歳の女性をレイプした疑いで2人の男性が逮捕。薬物の過剰摂取で死者を出したアメリカのEDMフェス『Electric Zoo』でも2013年に10代の少女が性的暴行を受けたと報道されている。
■90%以上の女性が音楽イベントでのハラスメント被害経験あり
アメリカのNPO「Between Friends」と「Rape Victim Advocates」は、2016年に音楽イベントでのハラスメントや暴行問題に取り組むキャンペーン「the OurMusicMyBody」を立ち上げた。同キャンペーンが昨年11月から12月にかけて509人の音楽ファンを対象に行なった調査では、92%の女性が音楽イベントの会場でハラスメントを受けた経験があると回答。この「ハラスメント」には体を触られる、性的暴行、同意なしに写真を撮られる、差別的な言動をされるなどが含まれる。
イベントの規模にかかわらず、暗がりや解放的な雰囲気に任せてセクハラを働くのは許されない行為だが、大きなイベントであればあるほど、被害の実態や犯人を把握するのが難しく、被害者が泣き寝入りするほかないケースも多いだろう。言うまでもなく女性が露出の高い服を着ているからといって同意なしに触って良い理由にはならない。
こうした事態に対してオフィシャルサイトに「アンチ・ハラスメント・ポリシー」を掲載している『ロラパルーザ』や、ファンやスタッフに向けてワークショップを行なったロサンゼルスのプロモーターDo LaB(『Lightning in a Bottle』などの音楽フェスを運営。『コーチェラ』ともコラボしている)などの動きもあるが、音楽フェスティバルにおけるセクハラ問題の議論や対策はまだ十分とは言えないのが現実だ。日本でもこれから夏フェスシーズンに突入するが、来場者が不快な思いをせずにフェスを楽しめる環境づくりは運営の努力だけでなく、来場者のモラルにかかっているのではないだろうか。