2018年04月24日 10:32 弁護士ドットコム
鹿児島県大崎町で農業の男性(当時42歳)の遺体が見つかった「大崎事件」(1979年)で、冤罪を主張する原口アヤ子さん(90)の支援者らが4月23日、都内で集会を開き、早期の再審を求めた。
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この事件は地裁、高裁ともに裁判のやり直しを認めたが、検察が不服を申し立てたため、最高裁で審理されている。
弁護団事務局長の鴨志田祐美弁護士は、これまでの歩みを振り返り、書面を中心とした旧来型の「調書裁判」が冤罪を生む一因になったと指摘した。
男性は原口さんの義弟。確定判決では1979年10月12日、自転車で溝に転落し、地元住民2人によって自宅に運ばれたことになっている。原口さんも土間から様子を見たところ、布団が膨らんでいるように見えたので、寝ているものと思ったそうだ。
しかし、翌日から姿が見えず、10月15日に牛小屋から遺体で見つかったため、殺人・死体遺棄事件として扱われた。物証はなかったが、証言などから原口さんが親族3人と共謀してタオルで首を絞めて殺したと認定された。殺人と死体遺棄で原口さんは10年服役した。
一方、今年3月12日、再審開始を認めた福岡高裁宮崎支部の決定では、男性は自転車による事故死の可能性が高いとする原口さん側の法医学鑑定書が評価された。鑑定書の通りだとすると、男性の死には事件性がなかったことになる。「生きたまま家に運ばれた」という前提が崩れ、原口さんらが殺したというストーリーは成立しない。
再審請求審の中で、初めて開示された写真のネガによると、現場には事件発生直後、死因が分かっていない段階から「殺人事件」との札がつけられていた。鴨志田弁護士は、捜査機関の決めつけが、冤罪を作り出してしまった可能性があると指摘する。
集会には、冤罪を描いた映画『それでもボクはやってない』などの周防正行監督も出席した。大崎事件は夜間に起きているが、開示されたネガによると、当事者らの「行動再現」は日中にやっているなど、適正とは言い難い調査もなされている。
周防監督は、「たとえば、映画監督はただ脚本を読むのではなく、書かれている世界を頭の中に立ち上げている。法曹三者は書面を見て、現実の場面を想像できているのだろうか。書かれていることに対して、現実にはどういう空間があったのかを考えていかないといけない。『書面依存症』は重大な欠陥じゃないかなと思いました」と述べた。
支援者らは原口さんが91歳になる6月15日より前に最高裁が再審を認めることを求めている。
(弁護士ドットコムニュース)