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浜辺美波、自由奔放キャラで別人に 『崖っぷちホテル!』鳳来ハル役で見せる純真さ

2018年04月23日 14:42  リアルサウンド

リアルサウンド

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 『崖っぷちホテル!』は老舗ホテル「グランデ インヴルサ」を舞台に繰り広げられるシチュエーションコメディだ。4月22日放送の第2話から副支配人となった宇海直哉(岩田剛典)は、威厳0の若き総支配人・桜井佐那(戸田恵梨香)とクセもの揃いの従業員を振り回しつつも、早速ホテルの再建に取りかかる。第2話で注目したいのは、宇海が突如行なった人事異動により、総料理長に昇格した鳳来ハル(浜辺美波)である。


 浜辺演じるハルは、空気が読めず底抜けに明るいキャラクターだ。第1話から、競艇ばかりやっているシェフ・江口竜二(中村倫也)の嫌味を嫌味と捉えず、アイディアを思いつくと人が話していてもすぐに行動するなど、自由奔放である。第2話で総料理長に昇格した際、江口は「無理に決まってんだろ」と言い放つが、ハルは屈託のない笑顔で「ですかねえ?」と楽しそうに返す。


 マイペースにも程があるハルだが、その空気の読めなさに苛立ちを感じないのは、ハルを演じる浜辺の天真爛漫な演技のおかげではないだろうか。全力で目の前のことに取り組むハルの笑顔は、観ていて気持ちがいい。思い立ったら即行動なハルのコロコロ変わる表情を観ていると、視聴者である私たちもハルのペースに持っていかれてしまう。しかし浜辺が心の底から楽しそうな表情を浮かべ、嫌味のない演技をするたび、私たちはハルの行動に好奇心を抱いてしまうのだ。


 ハルの良さは、行動力にもある。第2話で宇海は、ホテルの内装リニューアルのため休業する間、過去の顧客名簿に目を通すよう従業員に指示した。そんな中ハルは、かつて人気を博していた“幻のケーキ”を見つけ、佐那のもとへ駆けつける。やってみたいと思う素直な気持ちを「せっかく準備期間があるんだから、私、それ作ってみたいんです」というまっすぐな言葉で伝えるハル。


 思ったことをそのまま伝えるハルだが、浜辺は変に圧を感じさせることなく、この台詞を言う。ハルのまっすぐな思いを屈託なく演じてみせるのだ。その後、佐那はそのアイディアに賛成しつつも、小さな頃に食べたケーキの味を覚えているか分からないと不安を口にする。ハルはそんな佐那に対して「やりましょう」と間髪入れずに言うことができる。ハルにとって、それがうまくいくか分からない不安より、やったことがないものに挑戦することが大事なのだろう。ワクワクとした表情を見せる浜辺の目は、純粋な好奇心だけで満ちている。


 台詞回しも独特だ。劇中、総料理長の座を奪われた江口はいじけている。しかしそんな江口の心を知らないハルは、競艇新聞を読み込む彼に「そんなもの読んでないで、他のケーキの準備をお願いします」と言ってのける。「幻のケーキの企画が失敗すればいい」と言い放ち、その場を立ち去る江口に対しても、ハルは


「ライオンの親が子供を谷底に落とすっていうやつですか?」
「私に対する愛情ですね、江口さんの」


 と自分なりに解釈する。この解釈には、ハルの隣にいた佐那だけでなく、呆気にとられてしまった視聴者も多かったことだろう。けれども彼女の発言には一切悪気がない。「ありがたいなあ」という表情を浮かべる浜辺に、嫌な感じはしないのだ。むしろ自分なりの解釈で、対立することなく人と接するハルに、羨ましさを感じる。浜辺の純真な演技は、見ている人を笑顔にさせる。


 浜辺の演技には底知れない魅力がある。ドラマ『賭ケグルイ』(MBS・TBS系)で、主人公・蛇喰夢子を演じていた浜辺。このときの彼女は、物腰柔らかな口調で相手を追い詰めていく、破滅的なギャンブル狂を演じていた。ギャンブル狂の夢子も、今作のハルも、「目の前のことを純粋に楽しむ心」という共通点がある。しかし浜辺が浮かべる表情一つで、夢子とハルの共通点が同じようで違うと気付かされる。どちらの笑顔も浜辺には違いない。しかし不穏な笑みを浮かべる浜辺と天真爛漫な笑顔を見せる浜辺は、別人だ。


 ドラマ終盤、ケーキづくりに没頭するハルの表情は真剣そのもので、立派な1人のパティシエだった。幻のケーキの企画を終えたとき、珍しく江口に讃えられたハルは「だって私、天才ですから」と空気の読めないハルに戻る。ハルのさまざまな表情を魅力的に見せる浜辺は、ハルを演じているのではなく、ハルそのものを体現しているのかもしれない。今後も役者として成長していくであろう浜辺に、ハルの行動に抱くものと同じ、好奇心を抱いてしまった。(片山香帆)