トップへ

渡辺謙演じる島津斉彬、まさかの“ナレ死”が話題に 『西郷どん』鈴木亮平と魂のぶつかり合い

2018年04月23日 10:31  リアルサウンド

リアルサウンド

 島津斉彬(渡辺謙)がまもなく亡くなるというのは史実からも明らかであり、タイトルが「殿の死」であったことから、視聴者のほとんどが今回の『西郷どん』(NHK総合)第15回の放送を観るに当たっては、覚悟を持って彼の死を身構えていたことだろう。


 第1回より、本ドラマの最重要人物として描かれてきた斉彬だったが、ナレーション上で死亡したことが語られる、まさかの“ナレ死”という事態に、Twitter上では多くの驚きの声が挙がっている。『西郷どん』の公式サイトには、渡辺謙の本ドラマとしては最後と思われるインタビューが掲載されており、そこでは彼の唐突な死について「おそらくそれは西郷の感覚でもあるだろうし、ドラマを観ているお客さんにとっても、ナレーションだけで『え?え?えーっ!?』って思うくらいの最期にしたいと思ったんですね」と渡辺と演出家とが相談した上でのシーンだったことが明かされている。


 そこにあったのは、渡辺が島津斉彬という人物を演じた上で感じた、「時代を見据えた上での焦燥感」「急な坂道を上っている途中でプツンと切れるような終わり」。銃声と砲撃の音に囲まれながら死を遂げるラストは、“天狗”として吉之助らの前に初めて現れたシーンを思い起こさせた。


 4月1日に放送された『「西郷どん」スペシャル ~鈴木亮平×渡辺謙の120日~』(NHK総合)でも先行して公開されていた「今から、お前はわしになれ」と、斉彬が吉之助(鈴木亮平)へと魂を継承する場面は、2人にとっての最後のシーンであり、とてつもない熱量を帯びた、まさに演技と演技のぶつかり合いだった。


 スペシャルの放送で、渡辺が口々にしていたのが「距離感」という言葉だ。第5回での御前相撲の撮影までに、渡辺と鈴木はあえて話をせず、距離を取っていたというが、この最後のシーンは吉之助が意を決して斉彬へと意見をする、いわば2人が初めて対等となるシーンなのだ。やっせんぼだった吉之助の考えによって腹が決まるという、思いもしない成り行きに、斉彬は嬉しそうに笑い、吉之助の頬を叩く。2人の頬に伝う涙は、嬉しさからか、別れを悟ってのものか。熱くたぎるような2人の目力には、役柄を超えた役者としての魂の継承をも感じてしまう。


 第16回「斉彬の遺言」では、悲しみを押し殺し、斉彬の志を引き継ごうとする吉之助が描かれる。渡辺のクランクアップ当日、鈴木は「殿の弟子として、あとまだ長いですけど、背負って心のどこかに殿を置いて生きていきます」と言葉を残している。2人が過ごした120日の結晶が、ラストの魂の継承のシーンであり、渡辺の意志も、鈴木が演じる“西郷吉之助”の中で息衝いていく。(渡辺彰浩)