トップへ

まさに医療ドラマの“全部のせ” 二宮和也主演『ブラックペアン』、計り知れない密度を見せる

2018年04月23日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 『チーム・バチスタの栄光』をはじめとした“チーム・バチスタシリーズ”の作者としても知られる、海堂尊の小説『ブラックペアン 1988』を原作にしたTBS日曜劇場『ブラックペアン』が4月22日からスタートした。元外科医で医学博士でもある海堂の作り出す医療ドラマの精巧さは言わずもがな。本作でも第1話から芳醇なドラマが展開していく。


参考:白衣姿の二宮和也&竹内涼真【写真】


 “神の手”を持つといわれる心臓外科医・佐伯清剛教授(内野聖陽)を擁する東城大学医学部付属病院を舞台に、日本外科学会理事長選を前に敵対する帝華大学病院の西崎教授(市川猿之助)との対立と、西崎が送り込んできた医師・高階(小泉孝太郎)が持ち込む先進医療機器「スナイプ」をめぐる攻防。それをすべて掌握しながらも孤高を貫く天才外科医・渡海征司郎(二宮和也)の姿。


 大学病院を舞台にした医療ドラマの鉄板ともいえる『白い巨塔』(フジテレビ系)を彷彿とさせる空気感に、『ブラック・ジャック』さながらの天才の登場。さらに最新の医療機器が推進されるという医療技術の未来をも描写するという、まさに医療ドラマの“全部のせ”状態が完成。それを序盤から幾度と繰り返されるオペシーンを中心に見せていくのだから、このドラマの密度は計り知れない。


 とはいえ、その肝心のオペシーンには早くも少々の疑問の余地が残る。というのも、天才的な腕を持つ佐伯教授と渡海の執刀するオペの手際の良さと比較すると、他の医師の執刀するオペがわかりやすいほど下手くそで、見ていてこの上ないほどの危なっかしさを感じること、そして渡海と他の医師との執刀権をめぐる口論が予想外に感情的で、実に短絡的な場面になってしまっているからだ。


 とりわけ今回の第1話では研修医の世良雅志(竹内涼真)と、彼が受け持つ患者の皆川妙子(山村紅葉)との間柄が、冷徹な医療ドラマにおけるオアシス的な役割を果たし、感情を惹起する。原作では主人公であり本ドラマではストーリーテラーの役割を果たす世良の人間性と、渡海の“オペ室の悪魔”と呼ばれるだけの存在感とのコントラストを引き出す上では、オペのシーンにこそ身の毛もよだつほどの冷徹さと緊張感が欲しくなってしまう。


 ところで、タイトルになっている「ブラックペアン」。これは、佐伯教授が手術の仕上げで使う特注のペアン(外科用止血鉗子)で、彼の机上に印象的に置かれている様が登場する。そして渡海が終盤で眺める腹部のレントゲンにはペアンの影と担当医として渡海の父の名前。なぜ佐伯教授が黒い鉗子を使っているのか、それはおそらくこのドラマの鍵となる部分のようだ。(久保田和馬)