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視聴者さえも煙に巻く七変化! 『コンフィデンスマンJP』長澤まさみの女優魂がすごい

2018年04月23日 06:01  リアルサウンド

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 今期の“月9”枠を射止めた 『コンフィデンスマンJP』が放送開始より飛ばしまくっている。本作はいわゆる“コンゲーム”を題材にしたドラマ。信用詐欺、取り込み詐欺など、あの手この手でターゲットを騙し、二転三転するストーリーを楽しむジャンルで、有名どころとしてはハリウッド映画『オーシャンズ11』シリーズがその典型だ。


参考:長澤まさみと吉瀬美智子が演技バトル! 『コンフィデンスマンJP』ゲスト出演者の面白さ


 毎度、「目に見えるものが真実とは限らない。コンフィデンスマンの世界へようこそ」というナレーションで始まる本作は、長澤まさみ扮するダー子と、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)ら詐欺師チームの活躍を描いたコメディ。ターゲットとなるのはマフィアまがいの財団のボスや強引なリゾート開発でのし上がる女社長ら、成功の裏で手段を選ばない悪行を重ねてきた人物ばかりというのもあり、世直し的な痛快さがドラマの肝となっている。が、それ以上にスリリングなのが長澤まさみ、その人だ。


 本作で長澤が演じるのは、詐欺チームのリーダー、ダー子。どんな相手も罠にかける天才的な頭脳と、ほぼ一夜漬けで難解な専門知識をマスターしてしまう抜群の集中力を持ちながら、天然かついい加減な性格で底抜けにポジティブという憎めないキャラクターだ。ターゲットの選定から、計画の立案、ボクちゃんやリチャードへの指示出し、そして数多いる協力者(子猫ちゃん)の手配までをひとりでこなしてしまうあたり、とんでもなく有能な人物には違いないが、その素性は本名すらも謎。今後の展開の中で明かされていくのかも大いに気になるところである。この、開けっぴろげなのに謎めいている、言わば視聴者さえも煙に巻くキャラクターこそ、他でもない長澤の規格外の演技力の賜物と言える。


 長澤まさみは、00年代以降の日本の映画、ドラマシーンにおいてさまざまな足跡を残してきた女優だ。東宝のシンデレラガールというエリート街道からデビューし、『世界の中心で、愛を叫ぶ』で日本中を虜にした。正統派女優の道を進むかと思われた彼女のひとつの転機となったのは倉本聰脚本のドラマ『優しい時間』(フジテレビ系)ではなかっただろうか。不幸な生い立ちから心に不安定さを抱えた女性という難役を見事乗り切り、その後『モテキ』で持ち前のプロポーションを活かした健康的なセクシーさを、『WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~』では奔放な気っ風の良さも惜しげもなく晒してきた。それでいて近年の『海街diary』『嘘を愛する女』で等身大の女性像を演じても、埋もれることなく確かな輝きを放っている。


 その上でダー子という役を見ると、とにかく疾走感がすごい。しおらしく清楚な表情を見せたかと思えば、次の瞬間には大口開けて爆笑しているようなキャラクターには一分の隙もない。さらにダー子を演じながら、「姉御肌の壺振り師」「仕事熱心なCA」「根暗なインターン生」などターゲットを騙す上でさまざまなキャラクターにもなり切る。すなわち“演じながら”演じている。それだけに長澤に要求される振り幅は相当広いはずだが、本人曰く「実は、いろいろなキャラクターに成り切る方が演じやすいんです。常に新鮮な気持ちでいられます」と、むしろ楽しんでいる様子。思えば脚本の古沢良太は、『リーガルハイ』でも主人公の古美門弁護士を演じた堺雅人に、相当アクの強い演出をかぶせ、結果唯一無二のキャラクターを作り出した“前科”がある。本作での長澤も、古沢脚本のマジックで、これまで培った多彩な引き出しを次から次へと開けられている状態なのかもしれない。『コンフィデンスマンJP』は長澤まさみという女優のポテンシャルを改めて世間に印象付ける作品にもなりそうだ。


 本作への出演に向けたインタビューでは「私自身も、今が女優として重要な時期にさしかかっていると感じていますので、“今を頑張らなくして、この先はない”という覚悟で挑みます」と意気込みも相当なもの。第3話以降もゲスト俳優の演じる美術界、芸能界、美容界とさまざまな業界の悪人たちが登場し、丁々発止のやり取りでドラマを盛り上げていく。引き続きどんな顔を見せてくれるのか、長澤まさみの七変化に翻弄されたい。(渡部あきこ)