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大逆転あり、我慢ありのスーパーフォーミュラ開幕戦鈴鹿。山本尚貴が2年ぶりのポール・トゥ・ウイン

2018年04月22日 17:51  AUTOSPORT web

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スーパーフォーミュラ開幕戦鈴鹿でポール・トゥ・ウインを果たした山本尚貴(TEAM MUGEN)
鈴鹿サーキットで開幕した全日本スーパーフォーミュラ選手権の2018年シーズン。日曜に行われた決勝レースは予選ポールポジションを獲得した山本尚貴(TEAM MUGEN)が優勝を飾った。注目された2スペックタイヤ制が導入されたシーズン初戦は、チームによってスタートタイヤの選択、そしてピットインのタイミングなどチームの戦略が大きく分かれる結果となった。

 2スペックタイヤ制、そしてレース距離が前年開幕戦鈴鹿の203キロから300キロに延長され、まずは戦略面に注目が集まった開幕戦鈴鹿の決勝。好スタートを切ったのはポールスタートの山本。その後ろに福住仁嶺(TEAM MUGEN)、塚越広大(REAL RACING)、伊沢拓也(TCS NAKAJIMA RACING)がつける。3番グリッドの野尻は動き出しはよかったものの、アンチストールシステムが作動したか、スムーズにシフトアップできず失速し、順位を下げてしまう。

 一方、5番手スタートの塚越は3周目に2番手を走行していた福住にホームストレートで並ぶと1コーナーの飛び込みでアウト側から豪快にオーバーテイク。その軽快なマシンの挙動から、多くのチームが燃料満タンでスタートするなか、塚越は少なめの燃料でスタートしたものと推測される。

 ペースの速い塚越は2番手に浮上すると猛然とトップの山本を追い、序盤はこのふたりが2番手以下を大きく引き離すレース展開となった。塚越は一時、山本に1秒以内まで迫り、ストレートではマシンを並び掛ける挙動を見せるものの山本もブロックラインで隙を見せない。

 11周を終えた時点で山本、塚越、福住、伊沢、国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)のトップ5。このなかで伊沢までのトップ4人がミディアムタイヤ、国本がソフトタイヤを装着していた。

 注目されたレース戦略、最初に動いたのはKONDO RACINGだった。13周目、ソフトタイヤを履いていた山下健太(KONDO RACING)がピットイン。ミディアムタイヤに履き替えている。しかし、最低でも15周とみられていた燃料給油に必要な周回数(フューエル・ウインドウ)からは2周少なく、果たしてこのままゴールできるのか、山下に注目が集まった。

 次に動いたのは松下信治(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。松下はソフトタイヤでスタートし、15周でピットインを行ってミディアムタイヤに履き替えてレースに復帰。フューエル・ウインドウのミニマム周回数であるこのあたりからソフトタイヤを装着ドライバーが次々とピットインを行い始める。

 そして20周目、トップの山本を追っていた2番手の塚越がピットイン。塚越はミディアムタイヤ装着ドライバー陣のなかで最初にピットに入っている。しかし、ソフトタイヤで残りの周回数を走りきるとは考えづらく、給油時間などから考えても、この時点で塚越は2ストップ作戦が濃厚。

 ピットイン済みのドライバーでトップは山下、そしてレース折り返しまでソフトタイヤで24周を走り切った関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が続く。関口はソフトタイヤ装着ドライバーのなかでもっとも多くの数周を引っ張り、24周を終えてピットイン。ここでチーム・インパルは制止時間13.8秒と、15~17秒台がほとんどのピット制止時間の中で最速のピット作業を完遂。関口はそこからミディアムタイヤを履いてレースに復帰。

 関口のアウトラップの26周目にアクシデントが発生。関口のチームメイトの平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が関口にオーバーテイクを仕掛け、平川はヘアピンの入り口で関口のインにマシンのノーズをねじ込むが、接近しすぎた両車のマシンがヒット。関口のマシン左側に平川のマシン右フロントが乗り上げ、ややマシンを斜めに浮かせたあと、平川はそのままスポンジバリアに突っ込んだ。平川はそのままリタイア、関口のマシンには見た目に大きな損傷はなく、そのままレースを続けている。

 周回数が30周を超えたところで、ミディアムタイヤ装着ドライバーが続々とピットイン。31周を周回した福住がピットイン。残り20周をソフトタイヤで走り切る作戦だったが、福住はアウトラップのヘアピンを過ぎたあたりでスローダウン。マシントラブルが発生したようで、スロー走行でそのままマシンをピットガレージに戻し、リタイアとなってしまった。

 上位のホンダ陣営が次々と脱落していくなか、トップを走り続けていた山本は32周でピットイン。制止時間がモニター上で19秒6と決して速くはなかったが、それまで築いたギャップが10秒以上あり、山本はミディアムからソフトタイヤを履きかえて悠々、トップでコースに復帰した。

 2ストップ作戦か注目された塚越は、34周を走り切って2回目のピットイン。再びソフトタイヤを履き、コースに復帰した。その時点で2番手を走行していた山下も、そのまま最後まで燃料が持つか持たないかが注目されたが、37周を走りきってピットイン。ソフトからミディアム、そして最後はソフトタイヤという2ピット戦略だった。

 この時点でトップ3は山本、関口、野尻で、表彰台圏内の3人はそれぞれ単独走行でそのままフィニッシュかと思われたが、レース終盤、ソフトタイヤを装着した山本のペースが落ち始め、10秒近くあったギャップを関口が1周1.5秒程度詰めていき、じりじりと山本に迫り、50周目のコントロールライン通過時点でその差は3秒を切るほどになった。

 ファイナルラップでは約2秒差となった2台だったが、時すでに遅し。山本は最終ラップに残していたオーバーテイクボタンを使い、一度もトップを譲ることなくチェッカーを受けた。関口は2位、野尻が3位に入った。ミディアムタイヤで前半を引っ張ったディフェンディングチャンピオンの石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)が4位、5位に伊沢。松下は12位でフィニッシュした。

 2018年シーズンから導入された注目のソフトタイヤの戦略、予選順位から見ると、14番グリッドの関口が前半スティントでソフトタイヤを最長の24周引っ張り、上位ドライバーのトラブル脱落などがあったが、2位とジャンプアップで大逆転を果たすなど、ドライバーによって三者三様の使い方が見られ、順位が目まぐるしく変動するレース展開となった。