中国GPの会見で、バーレーンGPで起きたピット作業ミスについて尋ねられたフェラーリのマウリツィオ・アリバベーネ代表は「タイヤ交換でトラブルが起きる原因には、ピットクルーのヒューマンエラー、ホイールガンなどのメカニカルなトラブル、そして電子デバイスの誤作動が考えられ、バーレーンGPでは3つ目の電子デバイスの誤作動が原因だった」と説明した。
いったい、どういうことか?
まず、タイヤ交換作業の基本的な説明をしよう。現在のピット作業はシグナル方式となっており、4輪それぞれを担当するガンマン(ホイールナットを脱着する者)の全員が、自分の作業を終えた後にホイールガンに装着しているスイッチを押し、かつフロントジャッキとリヤジャッキ担当のスタッフがマシンをジャッキから下ろした直後に作業終了のスイッチを手動で押して初めてドライバーの目の前にあるシグナルかグリーンになるシステムとなっている。
この操作を手動ではなく、自動で行うことは安全性の観点からFIAによって禁止されている。
では、アリバベーネが言う「電子デバイスの誤作動」とは、なんなのか?
それは、ホイールナットが正常に締まったことをメカニックに知らせるセンサーのことで、ホイールガンに付けられているランプで認識することになっている。
ナットが正常に締まったかどうかを少しでも早く判断したいため、ホイールガンに内蔵したトルクセンサーによって、締まり具合を感知し、ランプが赤から緑に変わった瞬間に、担当メカニックはナットからガンを抜くと同時に、作業完了を知らせるボタンを押すというわけだ。
しかし、バーレーンGPでのフェラーリは、装着していたタイヤを取り外すことができなかったので、いったんホイールガンを外して、再び作業を開始したところ、センサーが誤反応を起こし、それにメカニックが反応してスイッチを押し、グリーンシグナルが点灯したという。
だが、この説明には少々無理がある。なぜなら、ミスが起きた左リヤタイヤは装着していたときに起きたのではなく、タイヤが外れないまま発進させていたからだ。
新しく装着するタイヤのホイールナットを締めているときに、不十分だったにも関わらずセンサーが誤作動したのだったら、メカニックが誤って作業完了を知らせるスイッチを押すことは理解できる。
しかし、まだ古いタイヤを外してもいない段階で、たとえホイールガンのランプがグリーンになったからといって、作業完了を知らせるスイッチを押すことは通常では考えられない。
しかも、後輪を見ているリヤジャッキ担当のメカニックからも、左リヤタイヤが外れていないことは見えていたはず。にも関わらず、ジャッキを下ろしたのはなぜなのか?
いずれにしても、フェラーリのピットミスは、オーストリアGPのハース、中国GPのマクラーレン同様、100%人為的なミスである可能性が高い。