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「定年後再雇用」仕事は一緒で賃下げは認められるか…「長澤運輸事件」最高裁で弁論

2018年04月20日 13:42  弁護士ドットコム

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同じ仕事をしているのに、正社員と非正社員とで賃金に差を設けることは認められるのかーー。定年後に嘱託職員として再雇用されたトラック運転手が、正社員との賃金に格差があるのは違法だとして同じ賃金の支払いを求めた訴訟で4月20日、最高裁第二小法廷で弁論が開かれた。


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労働契約法20条では、正社員(無期契約労働者)と非正社員(有期契約労働者)との間で、不合理な労働条件の違いを禁止している。非正規労働者は全労働者の約4割を占めるとされ、政府が「同一労働同一賃金」の実現を目指す中で、最高裁がどのような判断を示すか注目が集まっている。判決は6月1日。


●2審で原告が逆転敗訴

弁論が開かれたのは、横浜市にある運送会社「長澤運輸」の男性社員3人の上告審。3人は2014年にそれぞれ定年退職した後、同社に有期雇用の嘱託社員として再雇用された。セメントをトラックで運ぶという正社員時代と同じ仕事内容にもかかわらず、賃金を3割近く引き下げられたとして、同年提訴した。


一審の東京地裁は、「仕事の内容は正社員と同一と認められる。特別な理由もなく、賃金格差があるのは違法だ」と判断し、会社側に対して正社員と同じ賃金を支払うよう命じた。


二審の東京高裁も、期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁じた「労働契約法20条」が、定年後の再雇用にも適用されると判断。一方で、「定年後の再雇用において、一定程度賃金を引き下げることは広く行われており、社会的にも容認されていると考えられる」などとして、同法に違反しないと判断。原告が逆転敗訴した。


●「社会的容認論は一方に偏した見解だ」

20日に行われた弁論で、原告側は、二審で定年後の賃下げが「社会的にも容認されている」と判断されたことについて、「賃金格差が広く行われているという社会的事実は確かに存在するが、決して労働者が容認しているわけではない。社会的容認論は一方に偏した見解だ」と反論した。


また、「熟練の乗務員を新入りより安く働かせることが不合理であることは明らか。2割安く運搬させ、コストカットすることに合理性は見出せない」などとして、労働契約法20条の解釈・適用として誤っていると主張した。


原告の一人である鈴木三成さんは、再雇用となった翌日から賃金が大幅に下がり、入社1年目の人より低くなった。年収は定年前が約500万円だったのに対し、再雇用後は370万円前後にまで減ったといい、「定年したら同じ仕事をしていても生活を切り詰めろ、定年したら、お盆休みや正月の支度もする必要ないということでしょうか」と訴えた。


●「同一待遇を保障しようとするものではない」

長澤運輸側は、労働契約法20条について「不合理な格差を解消しようとするものであって、雇用形態の異なる無期労働契約と有期労働契約の同一待遇を保障しようとするものではない」と反論。


「同条が目的としているのはあくまで均衡待遇(バランスの取れた処遇)で、判断するにあたっては社会一般の状況も考慮すべきであることは、むしろ当然」と主張した。


(弁護士ドットコムニュース)