先月、地元に帰った折に、同級生の死を知った。精神も肉体も頑健だった旧友が自殺をしていたという。にわかには信じられず、墓に手を合わせに行ったものの、未だにその実感が沸かない。
自殺の理由は都会の生活に疲弊し、心の病をこじらせたものであるという。フリーで気楽に暮らす僕にとってはせいぜい「労働者って大変だなあ」程度で済むが、実際にキツい条件で働いている人はそうは行かない。働いて微々たるお金を稼ぐという工程の繰り返しに、狂いそうになっている人なんて、結構多いのかもしれない。（文：松本ミゾレ）
上司は「なぜ途中で帰るのか」と詰問、両親には「帰りが遅い」と嫌な顔される
先日「はてな匿名ダイアリー」に「社会厳しい」なる投稿を見かけた。投稿者は、社会人になって2週間が経過したと言う、バリバリの新社会人。しかしそのメンタルは、既にのしイカのようにぺらぺらになってしまっている。
研修で朝が早いのに、夜は何度も懇親会に連れ出され、深夜まで飲む毎日。家も遠いので片付けに参加せず泣く泣く途中で帰ると、翌日、会社の人間に怒られたのだという。両親には「なんでこんなに（帰りが）遅いの？」と嫌な顔をされ、まさにどん詰まり。可哀想にも程があるというものだ。
研修も毎日こなしているようだが、睡眠時間も4時間程度だとか。これではついつい眠くもなるのだろう。「寝坊したら怒られるし、社会厳しい」と弱音を吐いている。なんとも見てられない境遇にある新社会人だ。
今の時代はクソみたいな不景気である。どんな職場も大抵台所事情は心許ない。しかし、そういう時代だからこそなおさら無職になんてなりたくない。多少キツい仕事でも、頑張ってこなそうとする気持ちは分かる。
でも、この日記を見るにつけ「なんだか会社側も無茶な要求ばっかで気分悪いな」という気が沸々と湧いてくる。
ブラック労働撲滅のためにもさっさと会社を離れるべき
こちらのコラムではしばしば、ブラック企業の経営者にとっては苦々しい意見を述べてきたところであるが、今回も同じようなことを書いてしまおうと思う。
どう考えても彼が入社したこの会社、ブラックではないだろうか。歓迎会などというつまらない飲み会の強要、新社会人の事情を加味しない身勝手さ、朝早くからの研修。ブラック企業の人間には、自分が真っ黒であるという自覚がない。それは彼ら自身がそれに気付くと頭がおかしくなってしまうからだ。だから自分たちが耐えてきた真っ暗な思想で、新社会人を染めようとする。
つい最近まで学生だった新社会人はたまらないはずだ。あっという間に心が限界を迎えてしまう。
今回のこの日記には、彼の入社した会社がブラック企業だと認識し、アドバイスするコメントも多い。
「ブラックだろそれ。身体壊される前に転職考えたがいいぞ」
「ブラック企業ってのは会社だけがブラックなんじゃなくて構成員がブラックなんだよなあ」
「それ異常だから。転職準備したほうがいい」
こんな感じで、まあこちらの考えと似通っている意見が目立った。中には「会社の近くに引っ越せ」みたいな声もあったんだけど、バカを言っちゃいけない。いつまで日本にはこういうおかしな意見がまかり通るのだろうか。労働はせいぜい食うためにすべきであって、労働のために生活環境を変えるなど本末転倒である。
僕は常々思うんだけど、この国の労働者はろくすっぽ給与の貰いも多くないくせに、労働者意識が無駄に高過ぎる。もっとサボっても大局的には一つも変わらないのに、全員が全員、まるで自分が絶対に欠かせない歯車か何かと思っているようだ。
日本には、不要な努力を強いる環境が溢れている。ブラック企業が存続することで社会に悪影響が及ぶというのに、そのブラックに加担してどうしようと言うのか。
この日記を書いた彼には、さっさと今の職場を離れるべきだと伝えたい。バカみたいに苦労する見返りが微々たる金では、心は持たない。
