2018年04月19日 19:32 弁護士ドットコム
国際政治学者としてテレビ出演などをしている三浦瑠麗さんが4月17日、福田財務次官のセクハラ疑惑問題に絡み、「性暴力は親告罪。セクハラでも被害者が情報を提供しないと、それ以外に認定することができない」などとTwitterに掲載し、事実誤認だとする批判が相次いだ。
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その後、間違いを指摘された三浦さんは「申し訳ございません」とツイートしたが、刑法改正による「非親告罪化」について認識していない人も少なからずいるのではないか。この問題をTwitter上で指摘していた深澤諭史弁護士に、どう変わったのか聞いた。
ーー親告罪とはどういったものでしょうか
「まず、被害者が加害者の処罰を希望するとの意思表示を『告訴』といいますが、告訴をしない限り、加害者を刑事裁判にかけることができない犯罪のことを『親告罪』といいます。現在は、例えば器物損壊罪や名誉毀損罪があります。
その趣旨は、軽微であるとか、被害者の名誉やプライバシーに深く関わることを考慮して、そういう犯罪の処罰は被害者の意思を尊重すべき、というものです。性犯罪は、その性質上、被害者の名誉やプライバシーに深く関わります。そこで、被害者の意思を尊重して、かつては親告罪とされていました」
ーーところが親告罪ではなくなったということですか
「はい。性犯罪は重罪であり、その性質からしても、処罰を被害者の意思に委ねることは、多大なる精神的負担を課してしまうことになります。また、被害者の名誉やプライバシーの尊重は、捜査や刑事訴訟の手続の過程で配慮すべきであり、告訴しない限り処罰もしないことを配慮とすることは、ある意味で無責任な発想であるともいえるでしょう。
そこで、刑法改正(2017年7月施行)により、性犯罪は親告罪でなくなり、告訴がなくても起訴をして処罰が出来る事になりました」
ーーもとの「性暴力は親告罪」とのツイートは、のちの「申し訳ございません」のツイートよりも多く拡散されているようです
「インターネットには、不正確な法律情報、それに基づく議論が氾濫しています。これは、法律が絡むトピックというのは意見対立が激しく、そのため、ついつい自分に都合のいい法律情報だけを真偽問わずかき集めてしまうことがあるためだと思います。
単にネットで間違った発信をしてしまうというにとどまらず、それに基づき行動をすると、思わぬ不利益を被ることもありますから、注意が必要でしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
深澤 諭史(ふかざわ・さとし)弁護士
ネットやコンピューターにまつわる法律事件を中心に取り扱う。ネット選挙の法務では関係者向けの講演などを実施。著書に「その『つぶやき』は犯罪です(共著、新潮新書)」がある。特設ウェブサイト: http://IT法務.jp
事務所名:服部啓法律事務所
事務所URL:http://hklaw.jp/