開幕3戦を終えて、いまだ勝利がないメルセデス。ただし、開幕2戦同様、3戦目の中国GPでもチャンスはあった。
1回目のピットストップで見事にアンダーカットを成功させたバルテリ・ボッタスは、もしもあのままレースが続行されていれば、優勝する可能性は高かった。しかし、31周目に導入されたセーフティカーによって、すべてが狂った。
セーフティカーが導入されたとき、ラップリーダーのボッタスは2番手のセバスチャン・ベッテルとともにすでにピットロード入口を通過していたたため、物理的にピットインすることができず、戦略面でレッドブル勢の後手を踏む形となった。
ただし、ルイス・ハミルトンはその限りではない。セーフティカーが導入されたとき、ハミルトンは4番手を走行していた。レッドブル勢はマックス・フェルスタッペンが3番手、ダニエル・リカルドが5番手を走行していた。つまり、メルセデスはフェルスタッペンが動いたのを知りつつ、ハミルトンをステイアウトさせたわけである。
なぜ、ハミルトンをピットインさせなかったのかをスポーティングディレクターのロン・メドウに尋ねると、こう答えた。
「レッドブルは第2スティントのミディアムタイヤに苦労していたが、われわれはまだそこまでタイヤに苦労していなかったから……」
だが、その決断は裏目に出た。結果論から言えば、もしあそこでハミルトンもレッドブル勢と同様、ピットインしてソフトタイヤに変えていれば、優勝していたのはリカルドの前を走行していたハミルトンだったかもしれなかったからである。
優勝したレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表も「なぜ、マックス(・フェルスタッペン)がピットロードへ向かったのに、メルセデスはその直後を入っていたルイス(・ハミルトン)をピットインさせなかったのか不思議だ」と語っていた。そのことは、メドウも認めている。
「いまとなっては、戦略ミスだと言われても仕方がない」
では、なぜメルセデスは、フェルスタッペンがピットインしたのに、あえてハミルトンをステイアウトさせたのだろうか? トト・ウォルフ(エグゼクティブディレクター)は、こう答えた。
「セーフティカー導入前にも、ルイスは第1スティントではキミ(・ライコネン)の、第2スティントではマックスの後方にいたがいずれも抜きあぐねていたから、同じようにピットインしてソフトに履き替えても順位は変わらないだろうと考え、ピットインせずにトラックポジションを取りに行った」
つまり、メルセデスの戦略ミスを誘発させたのは、中国GPにおけるハミルトンの謎の失速が大きく影響していたと言っても過言ではない。