2018年04月18日 18:11 弁護士ドットコム
エステサロンで働いていた女性従業員4人が、会社相手に2014年~2016年までの未払い残業代として計約520万円を求めていた訴訟で4月18日、東京地裁(堀田秀一裁判長)は会社に計約420万円の支払いを命じた。
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女性たちの代理人は「典型的な求人詐欺の事例で、固定残業代が無効と判断された」と評価している。
このエステサロンは、全国に約30店舗を展開するPMKグループ。判決などによると、原告の女性らは入社前に「基本給15万円、特殊勤務手当2万円、技術手当2万円」などと説明されていたが、手当は固定残業代として扱われていた。店長が裁量で認めたときだけ、30分単位で別途残業代が支払われていた(法定では1分単位)。なお、入社時に法律で義務付けられている雇用契約書の交付はなかった。
裁判では、割増賃金のベースになる基礎賃金の金額について、固定残業代分が含まれるかどうかも争点になったが、裁判所は、固定残業代について同意があったと認定できないため、手当込みの金額を基礎賃金として認定した。
会社代表は、「判決はまだ見ていないが、あらかじめ控訴すると決めていた。雇用契約書を交付していなかったのは事実だが、賃金を払わず、不当な残業をさせていたわけではない」と話している。
会社を訴えた女性たちは、専門学校を卒業後に新卒で入社している。今回の裁判では、就活生や入社したての社会人にとっても、参考になるトピックが複数ある。
*就活生は、会社説明会の資料を残しておくこと
裁判では、固定残業代について会社側が説明していたかどうかも争点になった。裁判所は、女性たちが会社説明会でとったメモを評価。詳細な書き込みがあるのに、固定残業代についての記載がないことなどから、説明がなかったと判断している。
*新入社員は給与明細の内訳を確認して
新社会人の労働相談では、固定残業代に関するものも多い。
職業安定法改正を受けて2018年1月から募集・求人時に、固定残業代について明示する必要があるが、守られているとは限らない。4月下旬が近づき、新社会人への初任給の支給が近づいているが、新社会人は給与明細の内訳をチェックした方が良さそうだ。
*労働組合などを通し会社側と交渉
女性たちは、個人加盟できる労働組合に相談して、会社側と交渉、訴訟を戦った。労働条件に疑問がある場合は、公的機関や労働組合などに相談すると良いだろう。
(弁護士ドットコムニュース)