麻生太郎財務大臣の発言が批判を浴びている。朝日新聞デジタルによると、麻生氏は4月17日、吉田博美参院幹事長の政治資金パーティーで、
「5年前より今の方が悪いという人は、よほど運がなかったか、経営能力に難があるか、なにかですよ。ほとんどの(経済統計の)数字は上がってますから」
と発言したという。ネットではこの言葉に
「運に左右されずに幸福に暮らしていく社会を構成していくのがあなたたちの仕事じゃ……」
「再分配機能の不備ではなく運の問題で済ませるのか」
などの声が出ている。
世論調査では8割が「景気回復実感していない」
麻生氏の言うように、数字の上では景気が回復しているように見える。日経平均株価は、2013年4月中旬は1万3000円台だった。その後、2万円台と1万円台を何度か行き来し、今年の4月18日には2万2000円台まで上昇している。
株価だけでなく、民間の平均給与額も上がっている。2013年の民間給与実態調査では、正社員の平均給与は473万円。男性の平均給与は511万円、女性は272万円だった。
公開されている最新のデータである、2016年の同調査と見比べると、正社員の平均給与は487万円とプラス14万円、男性も10万円増えて521万円、女性は8万円増加の280万円と、いずれも平均給与額は上がっている。
しかし、非正規雇用者の平均給与は2013年の168万円から4万円下がっており、景気回復で実際にどこまで豊かになったのかは判断が難しい。
また、JNNが今年3月上旬に実施した世論調査では「安部政権の経済政策によって実際に収入が増えるなど、あなたは、景気回復の実感はありますか?」と聞いているが、「実感がある」と答えたのはわずか13%。83%は「実感はない」と答えていた。
NHKの今年1月の調査でも、景気回復を実感している人は17%と少ない。「あまり実感していない」「全く実感していない」の合計は76%だった。
8割近くの人が景気回復を実感していない中、「実感していないのはよほど運が悪かったから」と言われれば、「個人のせいにするのか」と不満を感じる人が出てもおかしくない。
経営者ら向けの発言ならもっともだ、という声も
ただ、麻生大臣の発言は企業の経営者らが集まる場でのものだ。一般のサラリーマン向けの発言ではないため、ネットには
「みんなちゃんと本文読んだ?『経済成長を一般社員に還元できない経営層はよほど運がない』という意味にも読み取れるよ。むしろ麻生さんは下々の者の味方をしてくれてるんじゃないの?」
「政治家のパーティーで経営者に言った言葉として何も間違ってない」
と、発言の趣旨に理解を示す人もいた。