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文科省が妊娠した女子高校生の学業継続支援を要請 識者は「学校から排除すれば貧困に陥って子どもにも不利益」と指摘

2018年04月18日 17:01  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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文部科学省は3月末、教育委員会などに向けて、妊娠した高校生の学業継続を支援するよう求める通知を出した。妊娠した女子高校生の約3割が高校を中退しているのが現状だが、高卒資格がないと貧困に陥り、子どもにまで悪影響を及ぼす可能性がある。

シングルマザーを支援するNPO「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の理事長で、「全国子どもの貧困イニシアチブ」の世話人でもある赤石千衣子さんは、「妊娠した高校生を排除するのではなく、支援が必要な対象として扱うように少しずつ進んでいる」と話す。

文科省は体育の実技を課題レポートや見学で代替するよう要請

文科省の調査によると、2015年度と2016年度に、妊娠を学校が把握した生徒の数は、全日制と定時制を合わせて2098人。そのうち「産前産後を除く全ての期間通学」したケースが778件で最も多い。しかし「本人または保護者の意思に基づいて自主退学」したケースが642件、退学を勧められて自ら退学したケースが32件に上った。

この結果を受け、文科省は妊娠した生徒本人に学業継続の意思があれば、「安易に退学処分や事実上の退学勧告等の処分」を行わないよう、都道府県や指定都市の教育委員会に通知。在籍する学校に通い続けるのが難しい場合には、転校や休学、定時制・通信制への転籍を支援するよう要請した。

生徒がそのまま学校に残る時は、養護教諭やスクールカウンセラー等と一緒に支援を行うことや、体育の実技の代わりに課題レポートの提出や見学で代替することも求めた。やむを得ず退学する場合でも、高等学校等就学支援金や高卒認定試験等の案内をするよう促している。

「学校に託児所を作ったり、親を始めとする周囲の協力が必要です」

赤石さんは、妊娠しても学業を継続できるよう支援する必要性について次のように話す。

「これまで高校生での妊娠は"逸脱"として捉えられ、妊娠した学生は支援の対象ではなく、排除すべき対象として扱われてきました。しかし高校を中退してしまうと、資格取得や就職をするチャンスが少なくなったり、高卒認定資格を取得するのが難しかったりするため、貧困に陥りやすいのです。そうすると子どもにまで不利益が及ぶので、きちんと支援すべきだと思います」

しかし現実には、3割超の高校生が高校中退を余儀なくされている。学業の継続には何が必要なのか。

「学業を継続しようとしても育児との両立が難しいことがあります。学校に託児所を作ったり、親を始めとする周囲の協力が必要です。厚生労働省は、ひとり親とその子どもたちを対象に高卒認定資格取得を補助していますが、制度を利用しづらいという問題もあります。そもそも学校から排除されたことで、学ぶ意欲を持てなくなっている場合があり、生徒個人に寄り添った支援が必要です」

すでに託児室を設けている高校も一部にはある。都立新宿山吹高等学校や都立砂川高等学校では、通信制の生徒がスクーリングの時に利用することができる。こうした託児所の整備が進めば、学業と育児の両立がしやすくなる。

また厚労省は、ひとり親世帯の親と子を対象に、「高卒認定試験合格支援事業」を行っている。高卒認定試験に合格するための講座受講料の一部を支給するものだ。ただ、講座の終了時と合格時に一部が支給される制度であり、経済的に窮していると利用しづらい面もある。