財務省の福田淳一事務次官が、女性記者にセクハラ発言をしたと報じられた件で、同省の調査手法に疑問の声が投げかけられている。財務省は4月16日、「福田事務次官からの聴取だけでは事実関係の解明は困難である」ことを理由に、被害に遭った女性に名乗り出るよう求める文書をマスコミ各社宛に送った。
しかし、被害者の二次被害を生みかねないことから、世間や野党からは配慮が足りないという批判が相次いでいる。
こうした中、日本労働弁護団の渡辺輝人弁護士や佐々木亮弁護士、太田啓子弁護士ら10人の弁護士有志は4月17日、署名サイト「change.org」上で、調査方法の撤回を求める署名活動を開始した。
「財務省のハラスメント隠蔽体質を示しており、女性の尊厳を軽視している」
弁護士らは、現状の調査方法では「第三者性が担保されていない」と指摘する。財務省は被害に遭った女性に対し、財務省が委託した弁護士事務所に連絡するよう促しているため、
「匿名で申告できるとの記載もなく、調査方法の趣旨、結果がどのように利用されるか、及び被害告発者のプライバシーが十分に守られるのかが不明」
だと懸念している。
また、福田事務次官は報道を自らに対する名誉棄損と捉え、「週刊新潮」を出版する新潮社に対し提訴を準備しているとも発言している。こうした中で女性記者が名乗り出た場合、「自分も訴えられるかもしれないと恐れを抱くのは当然のこと」として、
「このような状況下において被害者が名乗り出ることができないことは当然のことであり、申し出がなかったからといって事実関係を確認できないとすることは決して許されません」
と釘を刺す。更に、麻生太郎財務大臣が当初、事実確認すらも行わない方針だったことについて「財務省のハラスメント隠蔽体質を示しており、女性の尊厳を軽視している」と強く非難した。
「怒りと絶望しか感じない」「セクハラについての社会全体の意識に悪影響」
そもそも、福田事務次官の提訴の意向などは、次官個人の考えである。にもかかわらず、「加害者とされる当事者の一方的な言い分を財務省名義で公表することは、被害告発者への圧迫」だとも主張していた。
署名は18日13時時点で1万人を超えている。署名に賛同した人からは
「賛同します。怒り心頭です」
「『名乗り出ろ、でなければ被害は認めない』なんて人権侵害を省庁が公式見解で発表することに怒りと絶望しか感じない」
「財務省という官庁がセクハラについてこのような調査方法を行うことを許せば、セクハラについての社会全体の意識に悪影響があります。財務省はすみやかに調査方法を撤回すべきです」
など、意見に同調するコメントが寄せられていた。集まった署名は、財務省、内閣府人事局、麻生財務大臣に届けられる予定だ。