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「彼女が乱暴されている」勘違いで相手殴って逮捕…「正当防衛」が成立する可能性は?

2018年04月18日 11:12  弁護士ドットコム

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交際している女性が勤める会社の上司の男性を殴って、大ケガを負わせたとして、会社員の男性が4月中旬、傷害の疑いで兵庫県警に現行犯逮捕された。


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報道によると、男性は4月15日午後11時10分ごろ、兵庫県加古川市の路上で、男性の顔を複数回殴った疑いが持たれている。


交際相手の女性は、職場の飲み会後、上司らに車で送り届けてもらったが、酒に酔って自宅近くで動けなくなっていたという。そんな女性を介抱する上司の姿を見た男性は、「彼女が乱暴されている」と思い込んで、殴りかかったという。


まだはっきりとわからないところが多いが、今回のような「勘違い」で相手を殴った場合、少し同情の余地がありそうな気もする。「正当防衛」は成立しないのだろうか。刑事事件にくわしい落合洋司弁護士に聞いた。


●正当防衛は「他人の権利」を守ろうとした場合でも認められる

「犯罪は、刑法に規定された犯罪類型(構成要件)に該当したうえで、違法性・責任がすべて認められることで成立しますが、『違法性阻却事由』といって、違法性がなくなる場合があります。


その1つが、正当防衛です。『急迫不正の侵害に対して、自己または他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない』とされています(刑法36条1項)。


正当防衛は、自分だけでなく、他人の権利についても認められています。誰かが襲われているのを助けるために暴行・傷害行為に及んでも、正当防衛が認められれば、犯罪は成立しません」


●勘違いでも「正当防衛」は成立する

勘違いであっても「正当防衛」は認められるのだろうか。


「勘違いで他人が襲われていると思って、正当防衛行為に及んだ場合を『誤想防衛』と言います。そういう誤想(思い違い)に基づいていても、ほかの正当防衛の要件を満たしていれば、犯罪は成立しないというのが判例です。


また、誤想した状況に対する防衛行為が行き過ぎた場合を『誤想過剰防衛』と言います。『防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、または免除することができる』という規定に基づいて処理されます(刑法36条2項)」


どんな判例があるのだろうか。


「かつて『勘違い騎士道事件』といわれる傷害致死事件がありました。外国人で空手の有段者である被告人が、夜間、もみ合う男女を目撃したのが発端です。


このとき、女性が『ヘルプ・ミー』などと叫んだため、女性が乱暴を受けており、さらに被告人にも襲いかかってくるものと勘違いして、男性に空手の回し蹴りをして転倒させて、死亡させてしまいました。最高裁判所で誤想過剰防衛が認定されています」


●「刑事責任が慎重に検討されることになる」

今回のようなケースでも逮捕は、やむを得ないのだろうか?


「正当防衛やそれに類する事情が認定されるかどうかは、捜査が終わってみないとわからないことが多く、逮捕・勾留が伴うこともあります。


捜査の結果、そういう事情が認定されて、不起訴処分になることもあります。また、起訴されたあとに、そういった事情が認定されて、裁判で無罪になったり、刑の減軽・免除がされることもあります。


今回のケースでは、誤想防衛が成立する可能性があります。今後の捜査で、刑事責任が慎重に検討されることになるでしょう」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
落合 洋司(おちあい・ようじ)弁護士
1989年、検事に任官、東京地検公安部等に勤務し2000年退官・弁護士登録。IT企業勤務を経て現在に至る。
事務所名:高輪共同法律事務所
事務所URL:http://d.hatena.ne.jp/takanawa2009/