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安田顕と吉高由里子の関係性が見どころに? 『正義のセ』原作小説からの変更点は吉と出るか

2018年04月18日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 前クールドラマの視聴率ナンバー1『99.9-刑事専門弁護士- SEASON II』(TBS系)は弁護士が主人公であり、検事は対立する存在として描かれた。また、傑作と呼び声が高かった『アンナチュラル』(TBS系)も、主人公のミコトが働く現場は不自然死究明研究所であったが、そのミコトがある事件の証人を頼まれたことから、物語で検事と関係することとなる。過去にさかのぼれば、木村拓哉の『HERO』(フジテレビ系)シリーズもある。弁護士や検事を主役とする作品は、正義とは何かを問いかける、王道のテーマになりつつあると感じる。


参考:吉高由里子、パワハラ問題解決で“正義の味方”に 『正義のセ』思い込みがもたらしたもの


 そんな王道に新たに挑んでいるのが、吉高由里子が主演の『正義のセ』(日本テレビ系)である。このドラマは、阿川佐和子の同名小説が原作となっている。小説の中のヒロイン凛々子は、自分が感情的になりやすいからこそ、それをどうにか自分で克服しようと冷静になろうとする人であり、特に強姦事件の被害者の女性に対しては、こちらの意図を悟られたり、嫌な思いをさせないように、慎重に取り調べをすすめる繊細な心を持っている。


 そんな慎重さを持って仕事をしていたというのに、自分がかかわった事件が冤罪事件になってしまうときの凛々子の気持ちが、読んでいるこちらに深く伝わってきた。冤罪事件はあってはならないし、凛々子だって、冤罪だけは出さない検事でいようと目標に掲げていた。それでも起こってしまうのだということを描く、これまでの検事ものとはまた違った角度からの小説は、『99.9』に迫るくらいのドキドキと面白さがあった。そして、正義とは何かということは、そうそうに答えが出てこないからこそ、じっくりとこちらに考えさせる部分があった。


 一方、第1話を観た限りでは、ドラマはもう少しキャラクターや物語がシンプル化され、凛々子は恋も仕事も頑張るまっすぐで、熱い女性検事というキャラクターになっている。それは、かつて吉高由里子が主演で放送された『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)や、石原さとみ主演の『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)、杏が主演の完全懲悪の1話完結もの『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)などの、日テレの女性のお仕事ドラマを楽しみにしているターゲットのことを考えてというのも想像できるし、実際にそれは今のところは視聴率にも表れている。


 そんな中、このドラマ化で大きく変わっている部分としては、やはり安田顕演じる凛々子の相方の相原勉の部分だろう。『HERO』の男女を逆にしたものとも思えるし、その関係性で見せていきたいという意図もわかる。凛々子や恋人、家族のエピソードが分かりやすくなっている分、相原事務官のキャラクターは、小説よりも濃いめに描かれている。小説で出てきたのは、「ロボットのように冷静で、入手した情報を感情的に受け止めることは決してない」というキャラクターであったが、このドラマでは、かなり相原がフィーチャーされ、キャラクターが豊かになっていると感じる。そこは安田顕あってのことだ。


 相原事務官は、登場するなり、凛々子にかける言葉や行動で、なんとなくそのキャラクターをわからせることに成功している。朝は人一倍早くやってきて、腰は低すぎるくらいに低いが、人が使った机を丁寧に拭くような神経質な部分が感じられる。


 職務に対しては真面目で、事務官が検事に進言するべきではないと、出過ぎた真似はしないが、言い出すとお小言は止まらない。第1話でも、相原勉のお小言のシーンが個人的には一番おもしろかった。今後も、見どころの一つになるだろう。しかし、相原はお小言をいうだけではない。ときには凛々子の猪突猛進さに巻き込まれてしまうかわいさも持っている。第1話では、凛々子とともに事件の糸口を見つけた際に、ハイタッチしようとした凛々子に対して、事務官として躊躇したりもする姿に、相原の違う一面が垣間見えた。


 このドラマでは、原作にあった強姦事件に凛々子が取り組み、そこから冤罪につながり、その謎を追うハラハラしたサスペンス的な部分をどこまで描くのかはわからない。むしろ、凛々子と相原の微妙な距離感がどう変わっていくのかを楽しみにするタイプの作品なのかもしれない。


 しかし、前クールで正義とは何かを鋭く描いた『99.9』や『アンナチュラル』を観てきた視聴者にとって、本作がどこまで届くのかはまだ未知数でもある。(西森路代)