2018年04月17日 10:32 弁護士ドットコム
森友学園への国有地売却に絡み財務省が決裁文書を改ざんした問題で、批判の矛先は税務署にも寄せられている。税務署は、財務省の外局である国税庁が全国に置く組織。理財局長としての森友問題に関する国会答弁で批判を浴びた佐川宣寿氏は、国税庁長官を3月9日に辞めたが、納税者の怒りがおさまらない様子はいくつも報道された。
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読売新聞の報道によれば、東京都内の税務署の職員は「納税者に記載の誤りを指摘したら『後で書き換えればいいでしょ』と嫌みを言われた」と嘆いている。また、別の税務署職員は「次は税務調査で余計な苦労があるだろう」とため息をついたという。
税に関する申告で、実際、一度申告したものを後で書き換えることはできるのか。できたとしても簡単にできるのか。ここで改めて考えたい。
まず、2018年の確定申告は3月15日に終わったが、申告期限後は、税金を多く申告してしまったり還付される税金を少なく申告してしまったりした場合に「更正の請求」という修正手段をとることができる。申告期限は5年以内とされ、例えば2013年分は2018年12月末まで請求を行うことができる(逆の場合は「修正申告」)。
税務署に提出した資料を改めて返してもらって、二重線を引いて資料を書き直したり修正テープを貼って上書きしたりするといったことは認められていない。「更正の請求書」という所定の様式に必要事項を新しく記載しなければいけない(e-Taxを使うことも可能)。
手間がどれくらいなのかは、納税者の属性によって異なるので一概には言えない。ただ、最初にした誤りの申告に比べて飛躍的に手間がかかるというわけではなさそうだ。山本邦人税理士に聞いた。
ーー申告書の訂正について教えてください
「まずは、申告期限内に自分で誤りに気づき、出し直しをする場合です。この場合は特に税務署に連絡をすることなく、再度申告をすれば訂正が可能です。法定申告期限内に同じ人から確定申告書が複数提出された場合には、法定申告期限内にその人から特に申し出がない限り、最後に提出された申告書をその人の申告書として取り扱うことになっています。
税務署からどちらが正しいほうか、確認の電話が入ることもあります。したがって法定申告期限までなら、正しい計算に基づいて作成した新たな確定申告書を提出できます」
ーー申告期限後はいかがでしょうか
「法定申告期限後に自分で誤りに気づいた場合ですが、この場合は『所得を増やすほうの修正』か『所得を減らすほうの修正』かで、手続きが異なります。
『所得を増やすほうの修正』の場合は、修正申告という手続きになります。正しい申告書を再度作成して申告し、追加の税額を納めることになります。
一方、『所得を減らすほうの修正』の場合は、更正の請求という手続きになります。法定申告期限から5年以内であれば、更正の請求書という書類1枚を、それを説明する資料とともに提出することになります」
ーー簡単に認めてもらえるのでしょうか
「更正の請求書が認められる要件として、国税に関する法律の規定に従っていなかったこと、または計算に誤りがあったことのどちらかが必要になります。つまり、選択可能な法令の適用変更など、正しい処理から正しい処理への変更などは認められないので注意が必要です」
【取材協力税理士】
山本 邦人(やまもと・くにと)税理士
監査法人にて経営改善支援業務に従事した後、2005年に独立。中小企業の財務顧問として業務を行う。税金面だけではなく、事業の継続的な発展という全体最適の観点からアドバイスを行う。
事務所名:山本公認会計士・税理士事務所
事務所URL:http://accg.jp
(弁護士ドットコムニュース)