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EXILE ATSUSHI、堂々たる“凱旋復活ライブ”で見せた決意 歌唱曲に込められたメッセージを読む

2018年04月17日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 4月13日の深夜、TBSにて『EXILE ATSUSHI PREMIUM LIVE』の模様が、ATSUSHIの最新インタビューの様子を交えてオンエアされた。今年2月28日、3月1日の2日間、大阪・京セラドームで行われた『EXILE ATSUSHI PREMIUM LIVE』。それは、約1年半にわたる“海外留学”を経たATSUSHIにとって“凱旋ライブ”であり、再び日本のシーンで活動していくことを、高らかに宣言する“復活”のライブでもあった。


参考:EXILE ATSUSHI、アメリカ留学へ至った苦悩を告白 「楽屋で暴れるくらいの具合の悪さに」


 2日間合計で約8万人を集めるなど、空白期間をものともしない人気ぶりを世に示したこのライブ。そんな華々しいライブ本編の映像がスタートする前、番組冒頭に流されたインタビューで、ATSUSHIはある衝撃的な発言をするのだった。2016年、ソロシンガーとしては史上初となる6大ドーム公演ツアーの終わりに、日本での活動を一旦休止し、アメリカに留学することを発表したASTUSHI。ボーカリストとして、さらなるパワーアップを目指すための選択だったというその決断の背後には、ATSUSHI本人が抱える苦悩があったというのだ。


「もしかしたら音楽嫌いになっちゃうかもなとか、もう仕事としてちょっと歌うのきついかもなっていう時期があったんですね、正直。スイッチを入れようとすると、同時に変なスイッチが入っちゃって思うように歌えないみたいな。なんでこんな好きなのに、思うように歌えないんだろうっていうストレスって、嫌いなものができないストレスよりもやっぱり、遥かに大きくなってしまってましたね、僕のなかで」


 曰く、アメリカ留学は、自らの危機を乗り越えるための時間でもあったのだ。かくして、日本とは異なる環境で、心身ともにリフレッシュしながら、自身の歌と音楽を見つめ直したというATSUSHI。その成果は、果たして今回の“凱旋復活ライブ”のなかで、どのように反映されているのだろうか。


 自身の2ndソロアルバム『Music』に収録された「MAKE A MIRACLE」で盛大に幕開けた“凱旋復活ライブ”本編。ゴージャスなバックバンドを背後に、十数名のダンサーたちを従えながら歌うその光景は、休止前と変わらぬ光景だ。しかし、そこから雰囲気が一転、バラードを歌う段になって、彼はさらにひと回り成長した自身の“歌”を、実に情感たっぷりに歌い上げるのだった。とりわけ、ステージに膝をつきながら熱唱した「BLACK RAIN」。その歌声に涙するファンの姿も多く見受けられた。


 さらに、EXILEのライブではなかなか歌う機会がなかったという自身の作詞によるEXILEのバラード曲「If~I know~」、「Orion」を、自身の手書きによる歌詞をスクリーンに映し出しながら、一語一語噛み締めるように歌い上げるATSUSHI。けれども、このライブで最も興味深かったのは、その後、RED DIAMOND DOGSのギタリストでもあるDURANを招き入れて、歌とエレキギターという珍しい形式で披露された数曲だろう。


 番組では、ジャスティン・ビーバーの「What Do You Mean?」のカバーのみが放送されたが、実際のライブでは、サム・スミスの「I’m Not The Only One」、ブルーノ・マーズの「Versace On The Floor」など、ATSUSHIが滞在中に全米を席捲した3曲を歌い上げてみせた。それは、これまでの彼のストイックなイメージとは少々異なる、開けた印象を聴く者の心にもたらせていたように思う。その極め付けは、その後に披露された三代目J Soul Brothers「R.Y.U.S.E.I.」のカバーだろう。柔らかくもどこか楽し気に歌うATSUSHIの姿がそこにあった。


 その後、自身のプロジェクトでるRED DIAMOND DOGSの曲であり、ある意味休止前の“置き手紙”でもあった「Stand By Me」を改めて歌い上げるATSUSHIは、すでに250曲以上も歌ってきたというEXILEの曲のなかで「今、いちばん心を込めて歌える曲」として、「song for you」を続けて熱唱するのだった。〈なにもかもイヤになる/そんな日もあるけれど/きっとすべてはその未来へと続く物語さ〉。そんな歌詞のフレーズが胸に響く。その未来は今なのか。ドームという巨大な会場で、DURANとふたりきり、ささやかに……けれども大きな意味やメッセージを込めて歌い上げられたこれらの曲は、いよいよ本格的に再始動を果たすATSUSHIの思いを、かなり色濃く反映した選曲だったのではないだろうか。


 そして、アンコールでは、先ごろ自身のソロ名義のシングルとしてもリリースした、ブルーノ・マーズ「Just The Way You Are」の日本語オリジナルカバーを、自らピアノを弾きながら歌い上げたASTUSHI。日本を離れ、身も心も自由になった彼が、いち音楽ファンとして、何よりも惹きつけられたアーティストがブルーノ・マーズだったというのは、ある意味非常に興味深い出来事だ。ミドルテンポのバラード曲でありながら、どこか陽性の雰囲気に溢れているこの曲。ASTUSHIは、ブルーノ・マーズという稀有なアーティストが持つ天真爛漫さに、“音楽の純粋な楽しさ”と、それを心の底から“楽しむ”ことの意義を見出したのではないだろうか。かくして、盛大な拍手とともに「EXILE ATSUSHI PREMIUM LIVE」は幕を閉じるのだった。


 この2月に配信リリースされた「PARTY ALL NIGHT~STAR OF WISH~」を皮切りに、6ヶ月連続配信リリース企画「EXILE FRIDAY」がスタート。夏にはEXILEとしては3年ぶりとなるニューアルバムのリリースや、ドームツアー『EXILE TOUR 2018“STAR OF WISH”』の開催も決定しているATSUSHI。今回の『EXILE ATSUSHI PREMIUM LIVE』で、その空白期間に終止符を打った彼は、EXILEを牽引するボーカリストとして、今後どんな“歌”を響かせていくのだろうか。そのヒントと決意が散りばめられた、実に堂々たる“凱旋復活ライブ”だった。(麦倉正樹)