着用する制服の種類を選べる学校が増えてきた。4月に開校した千葉県柏市立柏の葉中学校は、入学予定の児童や保護者らの話し合いで、リボン・ネクタイ、スカート・スラックスを、性別に関わらず自由に選択できる。
沖縄県の浦添高校もこの4月から、性別によらず好きな制服を注文できるようにした。東京都世田谷区では、すべての区立中学で制服選択制を導入するか現在検討中だという。
背景には、LGBTなど多様な性自認への理解が進んだことがある。LGBTの支援団体「虹色ダイバーシティ」で理事を務める五十嵐ゆりさんは、こうした流れを
「LGBT等性的マイノリティの生徒への配慮という理由で導入されるといった報道がありますが、そもそも、子どもたちが自分で制服を選択できるようになったことがとても良いと思います」
と語る。
教職員のLGBTへの理解が懸念事項「先生・職員への研修も大事になると思う」
制服選択制は、LGBTへの配慮以外の理由で導入されている学校もある。例えば寒い地域では、冬場の防寒のためにスカートとスラックスを選択制にしている。最近は、多様な性自認への配慮を理由に導入するところが多いが、
「快適に過ごすために、好きな服を着ていいんだと、誰が何を着ていてもいいよねってことが子どもに伝わればと思うんです」
というのが五十嵐さんの本音だ。
一方、選択制導入で懸念しているのは、教師らの対応だという。
「スラックスを履いている女子生徒を『男っぽく見える』と言うなど、教職員が子どもに、自分の価値観を押し付けるようなことを言わなければいいなと思います。LGBTQについて、適切な情報を持って理解している教職員は、まだ多くありません。選択制導入に併せ、教職員への研修も必要だと思います」
教師の中には、「廊下や教室で騒いでいる男子生徒に『お前らホモか』と言うと静かになる。効果があるから使う」という人もいるという。
「こうした発言は、学校でも不適切なことなのだと気づいてもらいたいです」
「男女別のデザインや規定が本当に必要か、根本的な議論や見直しにつながってほしい」
五十嵐さんによると、少数ではあるが、働く場でも、男女の制服デザインを統一するところが増えてきているという。これまでは性別によって違う色・形の制服を着用しなければ仕事ができないという職場も多かったが、これによって「働く権利を奪われてきた人もいるはずだ」と訴える。
社会で働くトランスジェンダーの人たちからも「性自認にあった制服を着用したい」という声が出てきているという。
「男女でデザインや規定を別にする必要は、本当にあるのでしょうか。学校や職場での制服選択制の広がりが、こうした根本的な議論や見直しに繋がったら、と思います」
と語っていた。