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「塀のない刑務所」から逃走した受刑者、待ち受ける罪の重さは?

2018年04月13日 10:12  弁護士ドットコム

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4月8日、松山刑務所大井造船作業場から受刑者が逃走し、愛媛県警が単純逃走の疑いで公開指名手配している(4月12日現在)。逃走しているのは、窃盗などの事件を起こして服役中の平尾龍磨受刑者。


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松山刑務所大井造船作業場は、受刑者の居室のドアに鍵をかけていないことなどから「塀のない刑務所」として知られている。2年前の2016年8月にも、受刑者が行方不明となり、敷地内で発見される騒ぎがあった。


今回のように、服役中に刑務所から脱走した場合、どんな罪が加算されるのだろうか。坂野真一弁護士に聞いた。


●「1年以下の懲役に処せられる」可能性

「服役中に刑務所から脱走すると『逃走罪』に問われます。今回逃走している男性は、窃盗罪の確定判決を受けて服役中とのことですから、逃走罪の主体である『裁判の執行により拘禁された既決の者』(刑法97条)に該当します。


また、『逃走』とは『拘禁状態から離脱すること』を指します。報道によれば、男性は大井造船作業所外に出ていますので、男性の行為は『逃走』行為に該当します。そして男性は作業所外に出た後、行方をくらませており、拘禁状態から完全に離脱したといえ、逃走罪は既遂となります。逃走罪の法定刑は1年以下の懲役です」


逃走罪以外の刑に問われる可能性もあるのか。


「今回の事例では、あくまでも報道を基にした回答となりますが、もし逃走時に住宅を荒らして現金の入った財布や自動車を盗んだことが事実とすれば、住居侵入等罪(刑法130条)、窃盗罪(刑法235条)にも問われることになります。


なお、逃走犯人の男性が書いたと思われる『車をお借りします』とのメモ書きが残されていた、との一部報道もあるようです。


しかし、仮に男性が車を自分の物にする意思がなかったとしても、男性は車を返却せずに乗り捨てていること、ある程度の時間、他人の自動車を完全に自己の支配下に置いていたであろうこと等の報道が事実であるなら、不法領得の意思が認められ、自動車に対する窃盗罪は成立すると考えられます(最判昭和55年10月30日参照)」


2012年には、殺人未遂で収監中に広島刑務所から脱獄した中国人受刑者が、逃走、窃盗など5つの罪に問われ、懲役2年4月の判決が確定した事例もある。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
坂野 真一(さかの・しんいち)弁護士
ウィン綜合法律事務所 代表弁護士。京都大学法学部卒。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則」「判例法理・取締役の監視義務」(いずれも中央経済社刊)。近時は火災保険金未払事件にも注力。
事務所名:ウィン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.win-law.jp/