2018年04月13日 10:12 弁護士ドットコム
自分が父親だと思えないが、認知しないといけないのかーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにこんな相談が寄せられました。
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相談者は出会い系で知り合った女性と、一夜限りの関係を持ちました。その後一度も会っていませんでしたが、女性から7か月ぶりに連絡がきました。そこで、「お父さんになるよ」と衝撃の一言を告げられます。
女性に出生前のDNA鑑定を依頼したものの拒否され、「(自分の子かどうか)納得がいかないのに、認知をしないといけないのか」と悩んでいます。
お腹の子が誰の子かわからない場合、強制的にDNA鑑定を求めることはできるのでしょうか。また、自分の子であるという確証がなくても、女性から求められれば、認知をする必要があるのでしょうか。澤藤亮介弁護士に聞きました。
お腹の子が誰の子かわからない場合、強制的にDNA鑑定を求めることはできるのでしょうか。
「DNA鑑定を女性が拒絶しているにもかかわらず、強制的に行う法的な手続はありません」
では誰の子かもわからないのに、女性に「お父さんになるよ」と告げられただけで男性は認知しないといけないのでしょうか。
「認知には、(1)男性側の自発的な意思で子との法律上の親子関係を発生させる任意認知と、(2)裁判上の手続で親子関係を強制的に発生させる強制認知の2種類があります。
認知自体は民法上の身分行為であり、女性側からの認知の要望に対して男性が拒絶すること自体は、その理由にかかわらず本来自由と言えます。
相談者のケースのように、女性のお腹の子が自分の子かどうか分からない場合など、男性が認知することに納得しないのであれば、認知自体を拒絶することは当然可能です。
ただ、女性は任意認知しない男性に対して法的な手続きを取ることは可能です。その場合、まずは、認知調停を家庭裁判所に申し立てることになります」
認知しない男性に対して、争うことができるということですね。
「はい。その際、双方がDNA鑑定に承諾していれば実施し、調停でも女性がDNA鑑定を拒否するのであれば、男性は調停でも引き続き認知を認めないという態度を取ることは当然可能です。
手続上は、調停でも結論が出なかった場合、訴訟(認知の訴え)に移行することも可能です。ただ、原告となる女性が訴訟でもDNA鑑定を拒絶するのであれば、生物学上の親子関係の存在について女性側の立証が不十分であるとして、判決では認知の訴えは棄却されることになるでしょう。
ですから、相談者の男性は、DNA鑑定に協力しない女性からの認知の要望に応じて、自分の意思に反してまで認知をする必要はないと言えます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
澤藤 亮介(さわふじ・りょうすけ)弁護士
東京弁護士会所属。離婚、男女問題、労働問題などを中心に取り扱う。自身がiPhoneなどのデバイスが好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。
事務所名:新宿キーウェスト法律事務所
事務所URL:http://www.keywest-law.com