メルセデスF1のトップを務めるトト・ウォルフは、F1が各チームに1億5000万ドル(約160億7000万円)のバジェットキャップを課すことができるという案について、上位チームにとってこの上限額は単純に低すぎるとして疑問を表明した。
F1経営陣は4月6日、バーレーンで各チームに対して、F1の未来像を描く一連の戦略構想を説明した。
商業権を保有するリバティメディアにとって、F1における支出水準の低減は、より平等な競争環境を実現して新規参入を促すための主要な課題だといえる。
会議ではバジェットキャップ制度の考え方に関する議論は行なわれたものの、特定の水準が正式に承認されることはなかった。ただし1億5000万ドルという額については、当面の目標として広く言及されたようだ。
ウォルフは、6日にイギリスのSky Sportsに対して、「この額については、より大局的な見地から考える必要がある。今は、マーケティング費もドライバーにかかる費用も、他の多くの活動費目も、その概念に含まれていないからだ」と述べた。
「我々はマニュファクチャラーとして、カスタマーチームの利益も追求しながらパワーユニットを作るために、多くの仕事をしている」
「つまり規模の大きなチームにとって、この額は随分と低すぎる。だが、より現場のレベルで言えば、我々はリバティと協働しながら妥協点を見つける必要があるのだ」
「この額では実現不可能だ。だが、より道理にかなった額ならば(実現できるかもしれない)。我々は皆、同じ財政の世界で生きているのだからね」
「除外されている費目をすべて足すと、1億5000万ドルよりはるかに高い額、おそらく2億5000万ドル(約267億9300万円)にはなるだろう。そうなれば、数字もさほどおかしくは見えなくなる」
「私の最優先事項は、チームの構造と人々を守ることだ。我々は長い期間F1にいる。フェラーリやレッドブル、そしていくつかの大規模チームも同様だ。そうした事実を検討に含めるべきなのだ」
「それを皆と共有したうえで、『これが我々の現状だ。どうすればF1の成功を達成できるだろう、どうすればコスト上限を決められるだろう、どうすれば持続可能なビジネスモデルを作れるだろう』と議論し、誰も困ることのないような結論を見つける必要があるのだ」
各チームは6日の会議で、F1の戦略を明快に理解できたという。今後はこれを検討、分析したうえで、それぞれの見解を示すだろうとウォルフは考えている。そしてそこから、利益の出るビジネスモデルとスポーツの伝統が両立する妥協点を見出すための、非常に重要な探求の道のりが始まるだろうと捉えている。
「以前はすべてが暗闇の中だったために何も見えなかったが、目指すべき場所が見えた今、我々はそこへ向けて仕事をすることができる」とウォルフ。
「今は少なくとも、これを正確に評価して、それについて我々が良いと思うことや違うと思うこと、実現可能なことや不可能なことに言及できる。どのように妥協点を見出せるのかを査定することが、我々の取り組むべき最優先事項だ」
「収益を増やし、観客を増やし、かつ我々がすでに持っているものは維持できるような優れたアイデアを確信を持って生み出せる限り、やっていける」
「F1の伝統を守りたい。これは高度な技術を用いたスポーツであり、最も優れたドライバーが最も優れたマシンを操るスポーツだ。確かなビジネスモデルによってそれを維持できるならば、我々は満足だ」