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中居正広、“ピン”の活動ににじみ出たSMAP魂 『行列』から『CDTV』まで直近の司会を振り返る

2018年04月12日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 「最近、ピンで活動させてもらってるんですよ」。広げた扇子には「ピン」の文字。お笑い芸人のようなコメントだが、これは中居正広の言葉だ。


 春の番組改編期を迎え、3月末から連日のようにスペシャル番組が放送された。中居正広は『ナカイの窓』(日本テレビ系)や『金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)などのレギュラー番組と並行して、『行列のできる法律相談所』、『中居正広の5番勝負!』(ともに日本テレビ系)、『UTAGE!』、『CDTV』(ともにTBS系)のスペシャル番組でMCを務めた。また『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)の最終回にゲスト出演。盟友のラストに華を添えた。スポーツに音楽、バラエティと中居が司会者として起用され続ける理由を探ってみたい。


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■初出演で初MC! 「中居ペース」のすごさ
 3月25日放送の『行列のできる法律相談所』では、初出演にして初MCを務めた中居。普段は東野幸治やフットボールアワーの後藤輝基ら、お笑い芸人が司会を務める枠に『中居正広の5番勝負!』(4月3日放送/同局)の番宣を兼ねて司会として出演。平均視聴率は18.3%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)をマークした。


 赤い幕があがると勢いよく歩き出した中居。観客の大歓声を背に、すかさずウエンツ瑛士の元へ駆け寄った。のっけからアクセル全開だ。「今回、司会を担当させてもらうことになりました、生まれた時から中居です!」と自己紹介を済ませると、同時間帯に他局のドラマ枠に嵐の松本潤、次クールからは二宮和也が出演するため、「嵐と嵐の合間を縫ってきた」と説明した。


 ひな壇に座る出演者と共演やプライベートでの交流もあるようで、東野が飲み会に誘っても「あの日を境に来てくれなくなった」と明かすと、腕時計をみて「あの日だ(笑)!」と自虐ネタもスイスイ飛び出した。さらには「最近、ピンで活動させてもらってるんですよ」と広げた扇子には「ピン」の文字。東野が立ち上がり「いまそんな芸風になってきた!?」とツッコまれていた。番組冒頭から中居のテンションにつられて一気にボルテージがあがったスタジオ。観客もゲスト陣も手を叩いて笑っていたの印象に残っている。


 後藤らに「ひな壇とMCではギャラが違うのか」という素朴な疑問をぶつけたり、女の子を家に呼ぶ話で盛り上がっていたかと思えば、突然「NGなんです」と“アイドル中居”に戻ったり。話の流れで顔芸も披露した。いじられ役のウエンツは、お馴染みの生意気な口調で「中居ペース」が嫌だと応戦。随所に年月をかけて築いてきた人間関係が生かされていた。


 また不倫ネタを彷彿とさせる話題を振られた宮迫博之は、まんまとトラップにかかってしまう。いたずらっ子のように芸人をいじれるのも、芸人を前に芸を披露できるのもアイドル中居ならではだろう。


 さらに東野が別の番組で「ゲストで来るときに『ワイドナショー』で中居くんから差し入れですって書いてあった」と明かすと、中居は少し顔を引き締めてポリシーを語った。


「ドラマの時みんなするじゃないですか。主役の人もすれば二番手の人も。バラエティしないって、舐められてる気がするって言うか。だから一年に一回、自分の名前が出てる番組とかはお弁当入れたりするようにしました」と、演者に限らずスタッフ全員に行き渡るよう差し入れをしていることを明かした。


 4月3日放送の『中居正広の5番勝負!』では、中居自ら体を動かし、アスリートと卓球や野球の真剣勝負をした。音楽番組でたくさんのアーティストを迎えたり、バラエティで活躍した中居。近所のお兄ちゃんのような飾らない親しみやすさ、アナウンサーでは踏み込めない領域を超えられるのもタレント同士だからこそ。ちょっぴりの毒舌や、いたずらを混ぜながら全方位に響く笑いを提供する。体に刻まれたリズム感と時間感覚でテンポの良い進行、司会者として場を巻き込む力ーー長年ステージに立ってファンを魅了してきた“アイドル力”が発揮されていた。


■歌番組でみせた中居の司会者スキル
 4月7日放送の『CDTV祝25周年SP』(TBS系)にもMCとして出演した中居。TBSアナウンサーの江藤愛と共にたくさんのアーティストを迎え、3時間に及ぶ生放送を無事に終えた。


 SMAPとして歌にダンス、トークのステージパフォーマンスの実績があり、コンサートの構成を考えたり楽曲制作をしたり、さらには後輩グループ・舞祭組のプロデュースと裏方(忘れてはならない“スルメさん”も!)としてステージを支えてきた経験を持つ。マルチタスクもいいところである。番組ではそんな彼の経験が生かされていた。


 中居の司会は、笑いをとりながらも、初見の視聴者を想定した基本的な情報を改めて盛り込むことがある。ファンが気になっていること、知りたい情報をさりげなくはさみ、視聴者目線を忘れない気遣いを感じる。


 例えば今回15回目の出演となるE-girlsは、メンバーの脱退を経てのパフォーマンスだった。ファンの中には複雑な気持ちで見守る人もいたかもしれない。そんな状況を踏まえてか、「メンバーが入れ替わったりだとか、進化されているんでしょうね」と、彼女らを送り出したあとに、ひとこと前向きなコメントを付け加えていた。


 事務所の後輩であるKinKi Kidsには、嬉しそうな表情で「お久しぶりです」と堂本光一にぐっと距離をつめて迎えた。KinKi Kidsの二人が中居をデビュー前からお世話になっていると紹介すると照れた様子でやんわり否定。「忘れますよそんな過去のことなんて。何かありましたっけ」とボケてみせたり、デビュー前のユニット名・KANZAI BOYAをネタに「なんで変えちゃったんですか? ずっと坊やでいられるんだよ」とツッコミを入れてみたり。反対に光一から「あの時はSMAPでよかったって思ってたでしょ? 名前」と振られると、「そりゃそうでしょ。KANZAI BOYA、SMAP坊や、冗談じゃないよ(笑)」と照れた様子。ここまでKinKi Kidsをいじれる司会者も、反対に中居をいじれるアーティストもいないだろう。


 昨年デビュー20周年を迎えたKinKi Kidsに、あえて「知らない人もいるから」と「堂本剛、堂本光一、兄弟じゃないんですよね」という堂々たる中居のボケに「え、いま?」とツッコむ二人。さらに「剛、耳大丈夫なの?」と、ファンであれば心配になる部分も、切り込んでいた。相手を気遣いながら、ファンにも情報を伝えてくれる。長年の付き合いもあるが、これも中居だからこそのやりとりだろう。アーティストの特別な事情について、絶妙な加減で触れることでファンも安堵するのではないか。司会としてファンとアーティストをつなげる役目をしっかり果たしていた。


 一方Kis-My-Ft2が登場すると「今日は誰が歌っているの?」と舞祭組のメンバーに声をかけた中居。6年ほど前から音楽番組で共演するたびに、北山宏光、玉森裕太、藤ヶ谷太輔とその後ろに立つ44の格差を気にかけ、「早く後ろの4人が同じ衣装を着れるといいですね」と声をかけていた。その後、中居がプロデュースを買って出て、ユニットとして成長していく彼らを見届ける眼差しは父親のようだった。


 25年間の総合ランキングは、50位のSMAP「らいおんハート」からはじまった。VTRにはスタンドマイクに手を添えて歌う20年ほどまえの中居の姿。画面が会場に戻っても司会者として立つ中居の姿があった。司会者でありアイドルである、ファンとしては中居の歴史を感じる番組でもあった。


 その後も90年代からのヒットソングが並ぶ中で、1位には「世界に一つだけの花」がランクイン。当時のSMAPの映像が放送された。『CDTV』に限らずだが、制作スタッフ陣からの応援の気持ちが込められているのではないかと深読みせずにはいられなかった。


 「Sports Music Assemble People」の頭文字を語源とするSMAP。中居の仕事は「音楽」と「スポーツ」がキーワードのように存在し、「ピンで活動してます」としながらもどこかSMAP魂を感じた。(柚月裕実)