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余貴美子は“みんなの肝っ玉母ちゃん” 3度目の朝ドラ『半分、青い。』で見せる明朗快活ぶり

2018年04月12日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 快調な走り出しを見せるNHKの連続テレビ小説『半分、青い。』で岐阜の田舎町にある岡田医院の院長・岡田貴美香役を好演中の余貴美子。町の子供たちの大半を取り上げ、その母親たちの良き相談者でもある彼女は、町の人々、そして視聴者にとっても母親のような存在だ。


 高校卒業後にオンシアター自由劇場に入団した余は、代表作『上海バンスキング』などに出演し、演劇の道を歩み始める。同劇団を退団した後、大谷亮介らとともに東京壱組を旗揚げし、80年代後半から映画にも多く出演。劇団解散後には活躍のメインフィールドを映画やテレビなど映像の世界に軸足を移していく。2008年度には『おくりびと』で、2009年度には『ディア・ドクター』で、それぞれ日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞し、2年連続最優秀賞受賞という快挙を達成。さらには2012年度にも『あなたへ』で同賞を受賞している。


参考:王道の『わろてんか』と攻めの『半分、青い。』 視聴者ひきつける朝ドラの攻防


 思えば、余はこれまでに母親役を多く演じてきた。この10年ほどで母親役を演じた代表作がいくつも上がる。『悪人』(2010)では思いがけず殺人者になってしまった主人公(妻夫木聡)を捨てた冷徹な母親を演じ、かと思えば『ツレがうつになりまして。』(2011)では主人公・ハル(宮崎あおい)の母親役で、うつ病になってしまったハルの夫(堺雅人)を受け入れる穏やかさを見せている。


 『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』(2011)や『横道世之介』(2013)でも母親役を務め、母の不在と追憶がテーマの『麦子さんと』(2013)では堀北真希演じる麦子の母親に扮し、出番は冒頭だけながらも圧倒的な存在感を示した。また先月公開された日本と台湾の合作映画『おもてなし』でも母親として登場。琵琶湖畔にある老舗旅館を舞台に、田中麗奈、木村多江らとともに日台の架け橋となる好演を見せた。そして『愛と誠』(2012)や『寄生獣』(2014-2015)などのマンガ原作作品、『逆転裁判』(2012)などのゲーム原作作品にも母親役で出演。毎度振れ幅が大きく異なるパターンの母親役に、見事にハマっている。


 またそんな余は、石井隆監督作品をはじめとする作品で、艶やかな女性も多く演じてきた。そのあたり、『悪人』や『麦子さんと』などで演じる奔放な母親像に活きているように思えるのだ。


 そんな彼女が今作『半分、青い。』で演じるキミカ先生は、“明朗快活”まさにそんな言葉が似合う、こんな人が身近に1人いてくれたらいいなと思える存在ではないだろうか。お茶の水博士的なヘアースタイルのインパクト大なルックスに、歯に衣着せぬ物言い、そしてどことなく漂うカリスマ性。まだ幼い鈴愛(矢崎由紗)や律(高村佳偉人)たちの愛らしい姿だけでなく、彼女の、“みんなの肝っ玉母ちゃん”然とした頼りがいのある立ち居振る舞いには元気をもらえる。


 正式なヒロインである永野芽郁がまだ登場していない現在は、子役たちが奮闘し、それらを母親役の女優たちが支えている。だが、余の存在は、鈴愛の母を演じる松雪泰子や、律の母親を演じる原田知世など、ベテラン女優たちをも支えるものにもなっている。


 自身の役について余は、『連続テレビ小説 半分、青い。 Part1』 (NHK出版)にて「貴美香先生は、親から受け継いだ町の病院で、お産から耳鼻科、時に悩み相談にも乗る、まるで駆け込み寺のような存在。強力で頼りがいのある人を演じていきたいですね。お産で町じゅうの子どもたちを取り上げているので、きっと生命力にあふれた人」と語っている。キミカ先生の子供たちを見守る目、そしてその母親たちに語りかけるときの声。町の人々に対する彼女の姿を見ていると、朝から優しい気持ちが満ちてくるのだ。


 余が朝ドラに出演するのは、『ちゅらさん』(2001)、『純と愛』(2012-2013)に続いて3度目。お転婆な鈴愛やクールな律たちの成長に、彼女が演じるキミカ先生がどのように関わってくるのか、今後楽しみなところである。


(折田侑駿)