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坂口健太郎や池松壮亮、初主演作が続々スタート 4月クールドラマは90年代生まれキャストに注目!

2018年04月12日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 4月クール連続ドラマの話題作としてヒットが期待されているのは、月9の『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)と日曜劇場『ブラックペアン』(TBS系)。キャストとスタッフの豪華さからドラマファンの間でも今季はこの2作で決まりだ!という雰囲気があるが、この記事では1990年代生まれ=20代の若手キャストが主演する作品に注目してみたい。ドラマ業界でも世代交代が進んでいくのは必然の流れ。メジャーデビューした野球の大谷翔平選手(94年生まれ)のように新しい風を吹かせるのは、やはり若い力なのではないだろうか。


参考:坂口健太郎、初主演ドラマで多彩な表情を披露 『シグナル 長期未解決事件捜査班』恐怖を煽る演出


 本来は多様化の進む今、人を生まれた年でカテゴライズするなんてナンセンスだ。例えば、1989年生まれの吉高由里子(『正義のセ』日本テレビ系)と1991年生まれの波瑠(『未解決の女 警視庁文書捜査官』テレビ朝日系)の間に明確な世代ギャップがあるはずもない。同じく1989年生まれの岩田剛典(『崖っぷちホテル!』日本テレビ系)と1991年生まれの坂口健太郎(『シグナル 長期未解決事件捜査班』関西テレビ/フジテレビ系)にだってないだろう。それでも、この4人が主演しているという事実からしても、間にある1990という年は世代交代のひとつのメルクマールになりえるし、あえて年代で区切ることで見えてくる傾向もある。


 90年代生まれの俳優では、既に広瀬すず、川口春奈、松岡茉優、山崎賢人、菅田将暉、福士蒼汰、山田涼介や、朝ドラヒロインも経験した波瑠、有村架純、高畑充希、芳根京子が連ドラ主演を果たしている。そして、彼ら彼女らに続く第2波がこの4月クールから続々とこのポジションに参入してきそうだ。


 まずは『シグナル』で連ドラに初主演する坂口健太郎(91年生まれ)。彼の役どころには大きく分けて、『コウノドリ』シリーズ(TBS系)や『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)で演じたちょっと上から目線でS気味の男と、朝ドラ『とと姉ちゃん』(NHK総合)、『ごめん、愛してる』(TBS系)などで演じたお人好しで優しすぎる男という落差の激しい2パターンがあるが、『シグナル』で演じる捜査官・三枝はどちらかというと前者寄り。三枝は小学生の頃に同級生が誘拐された事件をトラウマとして抱え、警察にいながら警察を信用していない。冷めているようで、人一倍、強い正義感を持っている。坂口は舞台で鍛えた役者のようにセリフを明瞭にハキハキと言うタイプではないので、そこが捜査ものにハマるか心配だったが、警察の中の異分子ポジションなので“刑事らしくない刑事”として成立していた。冷静に犯人像をプロファイリングするときと、自白しない犯人に憤って「クソッ」と叫ぶときの落差もいい。


 次に、『宮本から君へ』(テレビ東京系)の池松壮亮(90年生まれ)。既に映画ではその演技力を高く評価されている彼は、ドラマ主演も『銀と金』に続き2作目だが、前作と同じテレビ東京深夜枠でも『宮本―』は新人会社員の青春ストーリーで、分かりやすいがゆえにファン層も広がりそうだ。第1話、駅のホームで好きな子を呼び止めるため「僕の名前は宮本浩です!」と絶叫する姿や、居酒屋で先輩に絡む酒グセの悪い姿には、筆者も笑ってしまった。こめかみの血管が切れそうな熱量で、ぶつけどころのない若者のパワーとそのイタさを表現する。やっぱりこの人、天才だと再確認した次第。これまでと違って、ごく普通の男を演じているからこそ、上手さが際立つ。


 そして、若手だが芸歴は長い神木隆之介(93年生まれ)も『やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる』(4月21日スタート、NHK総合)で主演。『11人もいる!』(テレビ朝日系)以来7年ぶりの主演で、中学校のさまざまな問題に対応する新人弁護士を演じる。その緩急自在の演技力は誰もが認めているのに、この数年、二番手のポジションが続いていた彼のフルスロットルが見られそうだ。企画も現代性があって面白いし、セリフ回しの上手い神木にはうってつけ。弁護士役ということでヘアスタイルがきっちりそろえられていて、前作『刑事ゆがみ』(フジテレビ系)などに比べるとイケメン感が落ちるのがやや不安要素か。


 長い連続ドラマを引っ張っていくのは、主人公のエネルギー。『シグナル』の坂口と『宮本―』の池松は既に第1話からそれを見せられているが、神木も演じるキャラクターなりの情熱を見せて、視聴者を物語の中に引き込めるか。主演の力だけではなく、脚本や演出という要素もそろわないと、なかなかそれは達成できないものだが、期待したい。


 女性キャストでは、なんといっても連ドラ初主演で「『花男』ブームよ再び」との期待を背負う『花のち晴れ~花男 Next Season~』(4月17日スタート、TBS系)の杉咲花(97年生まれ)に注目だ。池松と同じく既に映画界では高く評価され、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞(『湯を沸かすほどの熱い愛』)を獲得している彼女。お芝居も上手ければ声もかわいい逸材で、どちらかといえばアーティスト寄り。むしろ『花男』のようなベタな学園ラブコメでは主演しないのでは?と見るむきもあったので、意外性があって面白い。逆に言えば、ベタで予測可能なストーリーだからこそ、杉咲のように共感を呼べる実力派ヒロインの力が必要なのだ。かつて『花男』の井上真央がそうだったように。


 面白いのは、『花より男子』も『宮本から君へ』にしても、原作コミックは90年代に連載されていたということ(『花のち晴れ』は2015年より)。池松も杉咲も自分たちが生まれた頃にヒットしていたコンテンツをリバイバルのように演じることになる。


 もちろん今はいったん主演を張ったからと言ってずっと主演でいられる時代ではない。90年代生まれでバブル崩壊後に育った彼らは誰よりその現実をよく分かっている。大谷選手の二刀流にこじつければ、バッターとして打順が回ってきたときに打つのが脇役だとすれば、ピッチャーとしてマウンドに立ち続けるのは主役の力。先発を任されたとき、勝利投手となれるか。その力が今、試されようとしている。


 さらにこの流れは続き、7月クールは主演の土屋太鳳(95年生まれ)をはじめ90年代生まれ女子総出演の『チア☆ダン』(TBS系)なども控えている。テレビ局には、若いスターを育てるためにもキャストと同年代以下の視聴者にドラマを見てもらうためにも、目先の視聴率に一喜一憂せず、若手の主演作を放送し続けてほしい。(小田慶子)