ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チーム、中須賀克行の2018年シーズン全日本ロードレース選手権のJSB1000クラス開幕戦は好調な滑り出しだった、と言えるだろう。1大会で2レースが行われた今大会で、中須賀はダブル・ポール・トゥ・ウインを達成。その強さを存分に発揮した。
■難しいコンディションのレース1は2017年を踏まえ「慎重に」走ったと中須賀
開幕戦の週末、中須賀はすべてのセッションをリードした。4月5日に行われた特別スポーツ走行、翌日のART合同走行をトップで終えると、雨のなか行われた土曜日の公式予選ではレース1、レース2ともにポールポジションを獲得する。
迎えたレース1はハーフウエットの難しいコンディション。中須賀はスリックタイヤを選択した。2017年シーズンは開幕戦鈴鹿、そしてツインリンクもてぎで行われた2レースで中須賀は転倒を喫している。今大会はそれを踏まえてレースに臨んでいたという。
「去年、開幕戦からの連続転倒でチャンピオンを逃してしまいました。ツインリンクもてぎでも転倒しているので、とにかく慎重に、そして最後まで走りきることを考えました」
レース序盤は、高橋巧(チームHRC)、清成龍一(モリワキMOTULレーシング)にレースリーダーの座を明け渡した中須賀。しかし11周目、先頭を走っていた清成が4コーナーでハイサイドを喫してしまいそうになった隙を逃さず、清成の背後につけていた中須賀が前に出る。そのまま一度もトップを譲ることなく、最後は独走で開幕戦優勝を飾った。
「清成選手が前に出てペースを上げたときは、路面がまだ濡れていてリスキーだったけれど、こちらもペースを上げるしかありませんでした」
「清成選手が第4コーナーでハイサイドを起こしトップに戻りましたが、この頃から路面が乾きはじめペースを掴むことができました。ファクトリー体制なので勝つことが使命であり、それが達成できてよかったですね」
■レース2で中須賀が野左根に見せた“実力の差”
日曜日に迎えたレース2はドライコンディション。中須賀が再びポールシッターとして迎えたレースだったが、ホールショットを奪ったのは2番手スタートの野左根航汰(ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チーム#5)だった。
野左根は前日のレース1では他車と接触して転倒を喫し、リタイア。「オフシーズンのテストでは転倒が多く、流れがよくありませんでした。自分の感覚が信用できなくなっていましたが、金曜日の走行でようやく自分の走りが戻ってきたように感じました」と語っていた。
その野左根を追う形でヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームのワン・ツー体制の走行が続いたが、5周目には中須賀がS字コーナー入り口で野左根をとらえると、独走態勢に入る。中須賀は10周目にはファステストラップをマークして、そのままポール・トゥ・ウインを達成した。
「レース2は天気も良く、路面温度も上がって、安定して速いタイムを刻むことができた。レース序盤は野左根選手が先行したけれど、野左根選手の前に出てからは自分のリズムで走ることができました。次の鈴鹿は得意ですし、失ったチャンピオンを取り戻すべく、しっかりと戦っていきます」
開幕戦2レースをポール・トゥ・ウインという形で締めくくった中須賀。2017年に逃した王者の称号を奪還するため、好スタートを切ったことは間違いない。
一方、2位には野左根が入った。野左根は「去年、ここツインリンクもてぎで2勝していて、ホームコースでもあり得意意識があったけれど、実際には厳しい戦いになってしまいました」と語り、レース2後に臨んだ会見では「まだ中須賀選手の前に行く対策は見えていません」と悔しさをにじませている。
ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームの吉川和多留監督は今回のヤマハ・ファクトリーのワン・ツーフィニッシュについて喜びを表しながら、中須賀と野左根についてこうも言及している。
「野左根選手が好スタートをきり、その後に中須賀選手がトップを奪って独走するという展開でしたが、ふたりのタイム差が、現在のふたりの実力差であると言えます」
2018年のヤマハ参戦体制発表で、野左根は「チャンピオンを目指す」と明言している。2018年シーズンを好発進し貫禄を見せた中須賀だが、その前に立ちはだかろうとするのはホンダのワークスチーム、チームHRCの高橋巧だけではなさそうだ。