4月7日、ツインリンクもてぎで2018年シーズンの全日本ロードレース選手権が開幕した。今季の話題はなんといっても10年ぶりに復活したホンダワークス、チームHRCとヤマハのワークス、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームのガチンコ勝負。注目された開幕戦のワークス対決だが、ホンダの高橋巧は思いがけない形でヤマハ中須賀の後塵を拝することになった。
全日本は2018年シーズン、レースカレンダーが刷新された。JSB1000クラスは開催レース数が13レースに増え、それにともない2レースが行われる大会が設定された。開幕戦も2レース開催大会のひとつだ。
■ケガを抱えた開幕戦レース1は2位表彰台。「最低限の仕事はできた」
土曜日の予選、そして決勝レース1はかなりの寒さとウエットコンディションのなか行われた。高橋はホンダの10年ぶりのワークスライダーとして、ディフェンディングチャンピオンとして6番グリッドからレース1を迎える。
ただ、高橋にはひとつ懸念があった。トレーニング中に左手を負傷し、事前テストにほとんど参加できなかったのだ。とはいえ走行に大きく支障があったわけではないようで、「ケガをした左手は100%もとのとおりに動かせるわけではないのですが、痛みはなく、大きな影響はなく走れました」とコメントしている。
「負荷がかからないような乗り方をして、ウイークを通してその乗り方に慣れることができました」とも語っていることから、ケガを含めて自身のコンディションを整えていたということだろう。
オープニングラップをトップで終えた高橋は、「昨年からウエット路面には自信があったので、途中抜かれるかもしれないと思いながらも、行けるだけ行こうと思って序盤から攻めた」という。
その後中須賀にトップの座を奪われ優勝争いからは脱落したものの、高橋裕紀(モリワキMOTULレーシング)と3番手争いを繰り広げ、21周目にはファステストラップを記録。最終的に2番手走行中の清成龍一(モリワキMOTULレーシング)を交わして、優勝の中須賀に続き2位表彰台を獲得した。
「途中一度ギアミスで中須賀さん、清成さんと離れてしまい、そこから追いつこうと走りました。清成さんのミスもあって、トップ争いに追い付くことができたので、行くしかないと思ってチャレンジしました」
「行けるとこまで行ってみようと走っていたら、ファステストラップを記録できました。清成さんを抜いて2位になり、ワークスライダーとしての最低限の仕事はできたと思います」
■予期せぬアクシデントで戦線離脱。レース2は優勝争いに加われず
レース1で「ワークスライダーとしての最低限の仕事はできた」と語った高橋は、事前テストに参加できなかった分もあってかこの週末、セッションごとにさまざまなトライをしていたという。もちろんレース1の内容も、翌日のレース2につなげるものでもあったに違いない。
しかし、高橋とチームHRCの全日本開幕戦レース2は思いがけない形で優勝争いを逃すことになる。日曜に行われたレース2は、レース1とは打って変わってドライコンディション。高橋は4番グリッドからのスタートだった。
スタートから飛び出した野左根航汰(ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チーム#5)と中須賀のヤマハ勢ふたりを3番手で追っていた高橋だが、オープニングラップの2コーナーで、後続車との接触によりマシンからサイレンサーが脱落するアクシデントが発生。緊急ピットインを余儀なくされた。
「スタートも悪くはなかったと思いますが、2コーナーで後ろから強い衝撃があり、立ち上がってマシンを確認したらサイレンサーがないことに気がつき、ピットインしました。ツナギにはタイヤ跡がついていました」と、高橋はそのときの様子を振り返る。
マシン修復後、高橋はコースに復帰したものの、すでに上位争いをするには程遠い位置となっていた。それでもホンダのワークスマシン、ホンダCBR1000RRWのデータを少しでも多く残すべく最後までレースを戦い、27位でチェッカーを受けた。
「現状のマシンを知る意味でも、データを残すためにも最後まで走りきろうと思いました。結果をしっかりと残せなかったことは残念です」
結果的にはヤマハの中須賀が開幕戦レース1、レース2ともにポール・トゥ・ウインで2連勝。とはいえ残りはまだ11レース、長いシーズンが幕を開けたばかりだ。高橋は前を見据えている。
「シーズンは始まったばかりなので、しっかりと取り返していけるように挑んでいきます」
次戦は4月21~22日、鈴鹿サーキットでの開催だ。強さを取り戻した中須賀と、ディフェンディングチャンピオンの速さを見せる高橋の勝負、そしてホンダとヤマハのワークス対決がより際立つことになるかもしれない。