2018年04月11日 14:52 弁護士ドットコム
「漫画村」など、インターネット上でマンガや雑誌が無料で読める「海賊版サイト」に対し、政府が国内通信事業者(プロバイダ)にサイトへのアクセスを遮断する「ブロッキング」の要請準備を進めていることに対し、専門家からは法的な問題を指摘する声が上がっている。
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情報法制に関する研究や政策提言を行う一般財団法人情報法制研究所(東京都文京区、鈴木正朝理事長)の情報通信法制研究タスクフォース(研究主幹=曽我部真裕・京都大学教授)は4月11日、「著作権侵害サイトのブロッキング要請に関する緊急提言」(https://www.jilis.org/pub/20180411.pdf)を公表した。それによると、ブロッキング要請には法的に大きな問題を含んでおり、「法治国家原理からの逸脱」と厳しく批判、冷静な議論を行うよう呼びかけている。
緊急提言ではまず、 サイトブロッキングは、問題のサイトへアクセスしようとした利用者だけでなく、一般ユーザーのアクセス先を確認して遮断するものであり、日本国憲法が定める「通信の秘密」(21条2項)の侵害に当たると指摘する。
その上で、現在も児童ポルノに関しては、通信事業者の自主的な取り組みとしてブロッキングが行われているが、「そもそも児童ポルノの流通自体が児童の人格に対する重大かつ回復不可能な侵害であること」や、「ブロッキング基準を定めて一定以上の悪質な児童ポルノサイトのみ対象とするなど、緊急避難の要件の充足に疑義のないよう慎重な考慮がなされている点を看過すべきではない」とその違いを説明している。
さらに、「ブロッキングは通信の秘密や通信の自由を侵害し、さらには検閲にも該当しうる重大な措置であり、政府がそれを(事実上)義務付けることが仮に可能であるとしても、そのための要件や手続について法令による慎重な制度設計が必要」として、そうした手順を踏まないブロッキング要請は、「法治国家原理からの深刻な逸脱と理解せざるを得ない」と厳しく批判している。
緊急提言では、著作権保護の重要性を否定しないが、重大な法的問題点があり、「政府においては、このような要請を行うことは差し控え、ブロッキングという措置自体の是非も含めて改めて冷静な議論を行うよう提言する」と結論づけている。これに対し、研究者や弁護士やNPO関係者などから、多くの賛同が寄せられている。
(弁護士ドットコムニュース)