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スーパーGT:マザーシャシーの強みと弱みが見えた第1戦。かつてのライバルが互いに頼れる最高の相棒に

2018年04月10日 14:31  AUTOSPORT web

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ドライバーがともに経験豊富な実力者となり「Q1、Q2担当で悩む」ことに。しかし中山は自らQ1、スタート担当を名乗り出た。小林も「For The Team」で臨む。ライバルにとって脅威の存在が、また増えた
4月7~8日に岡山国際サーキットで行われた2018年のスーパーGT第1戦。GT300クラスではHOPPY 86 MCとのトップ争いを制した中山友貴と小林崇志が操るUPGARAGE 86 MCが勝利を掴んだ。今年からコンビを組む中山と小林はかつてSRS-F(鈴鹿サーキット・レーシングスクール)で競ったふたりだ。

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 予選Q1をトップ通過したのは、チャンピオン大本命と目されるマザーシャシー(MC)の25号車HOPPY 86 MC。テクニカルサーキットの岡山ではMCとJAF-GTが優勢との見方が強く、実際6台がQ1を上位で突破している。

 しかし、突如ウエットとなったQ2では状況が一変。最大の強みである軽さを活かしたコーナリングスピードの優位性は影を潜め、FIA-GT3がトップ4を占めた。大本命の25号車は5番手、その対抗馬として最有力候補の18号車UPGARAGE 86 MCは9番手に沈む。

 MCとJAF-GTは、得意なサーキットでドライの単独走行になるとGT3を圧倒する。ところが、Q1とQ2の結果からも分かるようにウエットになるとその強みは薄れ、決勝ではストレートスピードに勝るGT3が優勢にもなる。抜きづらい岡山で、上位グリッドからスタートするのは使命だった。

 決勝は厳しい状況となったわけだが、25号車と18号車は軽さを活かしたもうひとつの武器、タイヤ無交換作戦を敢行し、レース中盤から優勝争いを演じた。そして18号車が、チームとしても中山友貴にとっても、GT300初優勝を遂げている。

 18号車は2015年から参戦し、昨年まではRACING PROJECT BANDOHとのジョイントで若手ドライバーの育成にも積極的に取り組んでいた。しかし、このジョイントはGTレースの経験がないTEAM UPGARAGEの勉強期間として当初から3年計画だったこともあり、4年目を迎えた今季、チームは独り立ちする。

「僕たちだけじゃ、まだ若手を育てるだけの実力がない」と石田誠監督は判断し、GT500のシートを失っていた小林崇志に声をかけた。その小林が後半スティントを担当、GT500との絡みをうまく利用して25号車を鮮やかに抜き去りトップに立つ。


 初優勝を意識するようになると、ピット内は緊張感に包まれた。それを無線を通じて感じていた小林が「落ち着いてください。大丈夫ですよ、僕が絶対勝って帰りますから」と声をかける。レース後、その場面を振り返った中山は、「魅せるよねぇ、カッコよすぎ」と小林を称える。

 中山にとっても自身初の優勝だったが、中山は小林を信じ、「これまでにないくらい、落ち着いてモニターを見ていた」という。ただ、パルクフェルメにクルマを止めた小林のもとへは、だいぶ遅れて到着した。「初めての優勝で、どこに行けばいいのか分からなくて(笑)」。

「マサ(坂東正敬)さんからは、『中山を褒めてあげてください』と声をかけてもらった」とは石田監督だ。中山には過去3年、チームのために我慢を強いることも多かったという。本来なら今年、MCを小林よりも理解しているぶん、予選ではQ2、決勝は“魅せられる”後半スティントの担当を望んでもおかしくない立場にある。それでも中山は「勝つために一番いい」として、自らQ1とスタート担当を名乗り出た。

 決勝でタイヤを労る走りに徹した中山が、目立つ場面はなかった。しかし、小林は「いいタイヤでつないでくれたから勝てた」と話す。そして、「僕が来たから勝てたんじゃない。これまでの3年間でクルマを作ってきたチームの力です」と続けた。

 中山と小林はかつてSRS-F(鈴鹿サーキット・レーシングスクール・フォーミュラ)の同期生であり、トップカテゴリーを目指す当時は、ライバル心に溢れていた。それがいまは、互いに最高の相棒となった。勝ち方も学んだ今季、18号車はもっと強くなる。