2018年04月10日 10:22 弁護士ドットコム
30年ほど前のバブル期と現在の年収を比較した税理士ドットコムトピックスの記事「『バブル期超え』だけどイマイチ実感なし…当時と今の年収1000万円、どう違う?」(https://www.zeiri4.com/c_1076/n_385/)を公開したところ、当時を懐かしむコメントが多数寄せられました。
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「毎日会社までタクシー通勤」「定期に預けたり、証券会社に預けるだけで金利が相当ついてた」など、今では信じられないようなコメントがありました。
税制の面では、「バブル期ってまだボーナスから保険料の支払いをしないで良かった時代だから手取りが今より多かったよね」「バブル期のボーナスは税金掛からなかっただろ」など、ボーナスに着目したコメントがありました。
バブル期のボーナス100万円と今のボーナス100万円とでは、手取り額にどれくらいの違いがあるのでしょうか。柴田篤税理士に聞いた。
バブル期を経て、現在、労働者が置かれている状況をどうみればいいのか。
「2018年2月25日付の日本経済新聞は、過去20年の日本の可処分所得の伸びはほぼゼロであったとし、原因として厚生年金保険料や医療保険料の上昇を挙げています。今後も給与所得控除の縮小、配偶者控除の一部世帯での縮小・廃止、医師報酬の引き上げに伴う影響が予想され、特に社会を支える中間層への負担は増大すると思われます。
デフレが続いてきましたが、一人あたりの給与総額はリーマン・ショック以来420万円超で横ばいで、平均貯蓄率は上昇しています(2018年3月23日付の日経MJ)。国内ではAI/IoT化、海外では新興国の安い労働力の増大で、日本の中間層は将来に不安を感じています。
IT化による競争が働きすぎているのです。昔は社会に反抗する学生運動等が社会を変革していきました。現在はIT化で競争が働き、我々の給与は上がらない、同時にスマホSNSでガス抜きがなされ、社会変革の気力も削がれ、踏んだり蹴ったりなんです」
それでは、ボーナスはバブル期と比べて、どう変わったのか。
「所得税法28条は給与所得を『俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう』と定義します。しかしながら、給与所得にあたるかどうか、グレーゾーンにあるものが多いのも事実です。
例えば社内割引販売や、社会通念を超える住宅手当補助などがそうです(給与所得の外縁を占めるものとしてフリンジ・ベネフィットと言われます)。最高裁の判決(最判昭56.4.24.)は『給与所得とは雇用契約又はこれに類する原因に基づき、使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付』としています。
ボーナスは給与にあたり、課税されてきました。いつごろから課税されるようになったのか調べてみますと、大正9年(1920年)の所得税法改正により課税対象に加えられたようです(「租税法22版 P48」 金子宏著 弘文堂)。その頃は2つの世界大戦に挟まれた時期で、新たな財源が必要になったようです」
社会保険料はどうなのか。
「社会保険料は、かつては給与所得かどうか議論があったようですが、個人の会社負担分社会保険料は、フリンジ・ベネフィットとして、給与所得にあたると解されるようになりました。2003年から正式にボーナスにも社会保険料が課せられるようになりました。ただ、社会保険料は税金ではありませんので、租税法で規定されているわけではありません。
ですので、バブル期には、ボーナスに社会保険料がかからなかったというのが事実で、課税されていなかったというのは勘違いだといえるでしょう。
バブル期のボーナス100万と今のボーナス100万では、社会保険料の部分だけ違ってきます。保険料率は都道府県で違いますが、東京都協会けんぽ保険料率(2018年4月~)ですと、
・健康保険料率 9.90%(介護保険料を含む場合 11.47%)
・一般の厚生年金保険料率 18.30%(除 坑内員・船員)
を労使折半します。
雇用保険の保険料率(一般の事業)0.3%が被用者負担です。
100万 × {(11.47%+18.30%) X 1/2 + 0.3%}= 15万1,850円 が、バブル期に比べるとボーナスから余分に差し引かれます」
【取材協力税理士】柴田 篤 (しばた・あつし)税理士
貿易通商・物流を中心とする国際税務会計事務所。貿易、国際税務会計・国内税務、国際投資国際法務、IT IoTの4部門からなり、システムエンジニアを3名抱える。
事務所名 :TradeTax国際税務会計事務所(東京・大阪・バンコク・欧米提携事務所)
事務所URL:http://www.japan-jil.com/
(弁護士ドットコムニュース)