2018年F1第2戦バーレーンGPはセバスチャン・ベッテルがバルテリ・ボッタスとの接戦を制し優勝。そしてトロロッソ・ホンダのガスリーが殊勲の4位入賞を果たした。F1ジャーナリストの今宮純氏がバーレーンGPを振り返り、その深層に迫る──。
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2連勝フェラーリ、2連敗メルセデス、節目の第2戦バーレーンGPは開幕戦とは全く違うゲーム展開で進み、接戦のまま終わった。1位セバスチャン・ベッテルと2位バルテリ・ボッタスの差は0.699秒、こんな“クロス・フィニッシュ”は昨年2度しかなかった。
18周目にソフトに換えたベッテル、20周目にミディアムに換えたボッタス。そこから二人ともがロングスティントを続ける戦いになっていった。追うボッタスはそのミディアムを試していなかった。1セットしか選んでいなかったからだ(ハミルトンは2セット)。逃げるベッテルは金曜にソフトでロングランをチェック済み、ただし“39周”いけるかどうか……。どちらも確信を持てないままラップを重ねていく。
40周目、7.527秒差。
45周目、6.746秒差。
この段階では互いにラップタイムは1分35秒台、ベッテルがギャップをコントロールしているかに見えた。
50周目、4.646秒差。
51周目、3.700秒差。
ここからボッタスが1分34秒台にアップし、逆にベッテルは1分35秒台後半にややダウン。ステアリング修正を戒め、ラインワークを駆使し、変調が始まったソフトを懸命にマネージメントする様子が見てとれた。とうとうピンチが忍び寄ってきたのだ。
52周目、2.887秒差。
53周目、1.704秒差。
チャンスがめぐってきたボッタスが、10コーナーで左前輪をロックさせた。1分35秒台にダウン、毎周1秒前後追い詰めてきた足元が鈍った。
54周目、1.354秒差。
55周目、1.021秒差。
向こうも辛そうだがこっちもつらい。肩を並べたふたりのマラソンランナーみたいだ。するとベッテルが1コーナーでわずかにラインミス。が、ボッタスのミディアムにも変化が急に始まっていた。一気に襲い掛かる気配が見られない。
56周目、0.760秒差。
どちらも1分36秒台キープ、最後の1コーナーで仕掛けようとしたボッタスを、予測したかのようにベッテルは抑え込んだ。そして後ろにひきつけ一瞬早くアクセルオン、トラクションをかけて加速し4コーナーに備えた。ボッタスは最後に仕掛けにいくためにDRS検知地点の9コーナーを攻め、下り10コーナーに進入。が、ここでまたロックアップ。バックストレートで仕掛けるのは未遂のまま終わり、あとはレースリーダーが何かミスを犯してくれるのを待つしかなかった。
57周目、0.699秒差。
ファイナルラップは自己ベストよりも2.580秒も遅い1分37秒033、200戦目のゴールはそれで充分だった。ヒーローインタビューに饒舌にしゃべるベッテル、一方ボッタスは紅潮した表情で言葉が少なかった。勝者と敗者、心の明暗がはっきり表れたのはこのゲームが、ほんものの『ドライバーズ・レース』だったからだ。
もう一人このドライバーズ・レースにはウイナーがいた。5位からスタートを決め、サイド・バイ・サイドでもひるまずに攻め、ミスも全くなく2戦目のトロロッソ・ホンダで4位初入賞のガスリー。初日FP1から彼の中に新しいリズムが湧き出し、予選、決勝でも無心にそのリズムを追っているかのように映った。2月に22歳になった彼は、自分がいままでとは違った世界に足を一歩踏み込んだのを知った――。