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坂口健太郎主演『シグナル 長期未解決事件捜査班』にみる、韓国ドラマリメイクの可能性

2018年04月10日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 日本でのリメイクが決定し、坂口健太郎がテレビドラマ初主演を務めることで話題のドラマ『シグナル 長期未解決事件捜査班』(カンテレ・フジテレビ系)。同ドラマは、無線機を通じてつながる“現在”と“過去”の刑事が、長期未解決事件に挑むヒューマンサスペンスである。原作の韓国版『シグナル』は本国でたくさんの賞を受賞し人気を博しているがゆえに、日本でのリメイク版がどのような評価を得るのか気になるところだ。


参考:菊地成孔の『シグナル』評:韓国TVドラマ『シグナル』/『君の名は。』をご覧になった方々に伺いたい。ストーリー隈なく全部わかりましたか?


 原作の韓国版『シグナル』はとにかく本国での評価が高い。韓国で人気のケーブルテレビtvNが制作を務め、2016年のケーブルテレビ視聴率ランキングでは2位を記録している(参考:https://www.konest.com/contents/korean_life_detail.html?id=21297)。最高視聴率は12.5%で、2017年のケーブルテレビ視聴率ランキングでトップの『品位のある彼女』の最高視聴率12.1%を超える数字となっている。実際に観賞したところ、確かにそれだけ魅力の詰まった作品であると感じた。たとえば、過去と未来が交錯する複雑なストーリーは、先が読めず次が気になって仕方ないと感じる決め手であり、最長で20年間の時間を超えた同一人物を同じキャストが演じきっている部分では、感嘆のため息が漏れるほどの演技の実力を感じた。


 日本ではケーブルテレビというとあまり馴染みがないかもしれないが、韓国では地上波のテレビ局が少ないため、昨今はケーブルテレビで放送される作品が人気になることも多い。その中でも、tvNは特にドラマでの実績が多いテレビ局と言える。tvN制作の主な作品は、『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』、『応答せよ』シリーズ、さらに『シグナル』と同じ監督が手掛ける『ミセン-未生-』などがある。『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』は2016年のケーブルテレビドラマランキングで1位の視聴率を誇る人気であり、第53回百想芸術大賞では脚本家のキム・ウンスクが大賞を、主演を務めたコン・ユが最優秀演技賞を獲得した。百想芸術大賞とは、韓国のゴールデングローブ賞と言われ、韓国の映画やテレビドラマを対象とした賞である。『シグナル』は第52回百想芸術大賞で、作品賞、脚本賞、女性最優秀演技賞の3冠を獲得した。


 韓国版『シグナル』の監督であるキム・ウォンソクは2014年放送の『ミセン-未生-』で既に高い評価を得ており、tvNでの実績は認められての抜擢であったとうかがえる(なお、『ミセン-未生-』は2016年に『HOPE~期待ゼロの新入社員~』として日本でリメイクされ、同じくフジテレビ系で放送されていた)。


 今回主演を務める坂口は、同じく韓国ドラマのリメイクであるTBS日曜劇場『ごめん、愛してる』に出演し、主人公と真逆の役どころを丁寧に演じていた。韓国ドラマのリメイク作品への出演は、本作で2度目。坂口の演技は、主演映画『君と100回目の恋』のプロデューサー・井手陽子によって「役に染まる柔軟さがある」と評されており、本作でもその繊細な役どころにどう染まっていくのかが気になるところだ。


 韓国版『シグナル』には、実際に韓国で起きた事件をモデルとしたと思われる未解決事件が登場する。特に有名なものは「韓国三大未解決事件」と呼ばれ、いずれも2006年に時効が成立。その中でも「華城連続殺人事件」と「故イ・ヒョンホ君誘拐事件」は、『シグナル』で描かれる事件と類似していると感じられる部分が多い。


 さらに、劇中での法改正も現実の韓国での法改正と重なる部分があった。韓国では実際、2015年に殺人や強盗殺人罪の公訴時効を廃止する法改正案が成立している。『シグナル』の放送開始は2016年1月からなので、かなりタイムリーな問題を扱った作品であったと言える。このように韓国での法律や時事問題に準じたストーリーのリメイクとあり、細かな法案などが日本でどのように表現されていくのかも見どころとなりそうだ。


 過去の韓国ドラマのリメイク作品としては、長瀬智也が主演を務めた『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(日本テレビ系)が平均視聴率19.13%でを記録し、該当クールの中でトップを獲るほどのヒットを飛ばした。日本でリメイクするからといって、全てが日本色になるのではなく、程よく本国のスパイスを残した作りは、ドラマの未来にどのように左右するのだろうか。


(Nana Numoto)