2月のフェニックスの合同テストでは、トップタイムをマークしていたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLLR)の佐藤琢磨。当然このインディカー第2戦となったフェニックスのレースでは、嫌でも期待がかかろうと言うものだ。開幕戦は不運な接触で足元をすくわれただけに、ここで挽回したい気持ちもあろう。
だがそんな期待とはうらはらに琢磨とRLLRはプラクティスから苦戦した。4月の暑くなった気温に翻弄されたかチームメイトのグラハム・レイホールが17番手、琢磨が18番手という順位。
「マシンがまったくダメ。このままだと予選も期待できない」と琢磨はバッサリ切り捨てる。それほどニューパッケージのマシンは、状況の変化に神経質なのだろうか。予選でもダウンフォースをギリギリに削ってもスピードが回復せずに予選は13番手。グラハムも12番手にとどまった。
予選後、日が落ちてからのファイナルプラクティスではグラハム9番手、琢磨10番手とやや復調の兆しはあったものの、完全な復活とは言えず、「まだマシンはダメですね。もちろんレースは諦めたわけではないですけど、このままだと厳しいレースになると思います。テストで良かっただけに本当に残念だけど、レースが楽しみ!という感じではないかな」と浮かない表情を琢磨は浮かべた。
ポールポジションを決めたのはデイル・コイン・レーシングのセバスチャン・ブルデーだったが、やはりペンスキー勢が2番手、3番手、シュミット・ピーターソンはジェームズ・ヒンチクリフが5番手、ロバート・ウィケンスが6番手と帳尻を合わせてきたチームもある。全チームが揃ってニューエアロパッケージとなった以上は、環境の変化にエンジニアリングの差が出てしまったと言うべきだろう。
レースは夕方18時40分にスタート。陽も落ち始め気温も徐々に下がる中でグリーンフラッグとなった。
先頭のブルデー、そしてシモン・パジェノー、ウィル・パワーらがレースを引っ張る中で琢磨はスタートポジションを守りながら周回を重ねた。
だがレースはオーバーテイクは少ない。ダウンフォースの少ない今年のマシンと短い1マイルのフェニックスのコースレイアウトがそうさせるのであろう。
ルーキーのピエトロ・フィッティパルディ(デイル・コイン)、マテウス・レイスト(AJフォイト)らが戦列から脱落していく中で上位のドライバーは確実に周回を重ねた。
琢磨も途中の2回目のピットインは燃費をストレッチしてピットインのタイミングを変えて見るものの、大きなゲインとはならず、むしろピット作業でチームメイトのグラハムに抜かれたり、ポジションを落とすことも一度ではなかった。
レースを通してタイヤ交換を含めたピット戦略も成功とは言えず、琢磨は前にいきたい気持ちを形にできないまま周回を重ねることになった。
チャンスがあったとすれば最後のエド・ジョーンズ(チップ・ガナッシ)のクラッシュの時のイエローコーションだろう。レースは残り20周を切りギャンブルをしてステイアウトする作戦もあり得た。
事実、琢磨も「ステイアウトすると思ってた」と言うが、チームはピットインを選択。ライバルはアレクサンダー・ロッシ、ウィケンス、ヒンチクリフらがコースに残った。
「たらればを言ったらキリがないけど」と前置きし琢磨は「もしコースに残っていたらですけど、ヒンチクリフの後ろあたりでフィニッシュできたかもしれませんね」と語る。
最後のピット作業後、パジェノーにもかわされ我慢の250周を走りきった琢磨は11位でフィニッシュ。2戦連続での完走ではあったが、ここまでのリザルトはもちろん琢磨が望んでいたものとは大きく違うだろう。
「ここは事前テストが良かったから、僕たちも期待していたんですけどね。テストが良いとあまり大きく変えたくない、変えられないというのもある。新しいパッケージのマシンではダウンフォースが足りないからどうしてもアクセルを戻さざるを得ない」
「だから抜けないし、ハイレーンを使って2ワイドになるのもかなわない。結局みんな抜けないんですよね。今日のレースはイエローも少なかったし、ピットで順位も落としてるからどうしようもなかったです。でも前の方のマシンはしっかりと合わせ込んできているわけですから、言い訳はできないですね」
「来週のロングビーチは2013年に勝った思い出の地でもあるし、大暴れ出来るように頑張りたいと思います」