トロロッソ・ホンダがバーレーンGPの予選で2戦目にして今シーズン初のQ3に進出し、ピエール・ガスリーが6番手を獲得した。この結果にバーレーンGPのパドックは皆、一様に驚いていた。
なぜ前戦オーストラリアGPの予選で16番手(ブレンドン・ハートレー)、20番手(ガスリー)だったトロロッソ・ホンダが、バーレーンGPでは6番手と11番手に浮上したのか。
予選後、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターはこの結果を得られた要因を次のように語っていた。
「F1マシンというのは結局はパッケージ。クルマの空力とメカニカル、そしてドライバーとPU(パワーユニット)が今日はうまく噛み合いました」
たしかに、オーストラリアGPの予選ではドライバーがミスをしたことが大きく影響してしまったが、今回は2人ともほぼノーミスだった。
では空力とメカニカルはどうだったのか。今回、トロロッソはバーレーンGPに新しい空力パーツを持ち込んでいた。それを金曜日にガスリー車だけに搭載し、古いパーツを搭載したハートレー車と比較テストをした。その結果、新しいパーツに大きなアドバンテージがあることがわかった。そこで土曜日は2台そろって、新しい空力パッケージで予選に臨んだ。
チームマネージャーのグラハム・ワトソンによれば、「新しいパーツとはサイドポンツーン前のバージボード周辺とブレーキダクト周辺の細かなパーツで、完全な新しいパーツというのではなく、旧型をモデファイした改良版」だという。
「この新しいパーツは単純にダウンフォースを増やすことが目的ではなく、同程度のダウンフォースを獲得できるが、空気抵抗を減らした、効率の良さを改善した仕様になっている」(ワトソン)
予選最高速でガスリーはポールポジションを獲得したセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)の322.8km/hに次ぐ、322.5km/hを記録していたが、これはホンダのPUの性能というよりも、トロロッソの新しい空力が大きく貢献したわけだ。
では、なぜメルボルンで低迷していたトロロッソ・ホンダがバーレーンでここまで浮上できたのか。ワトソンは「マシンの特性とコースが関係してる」という。
「じつはわれわれは昨年から今年にかけて、マシンのコンセプトを変えたんだ。昨年はメルセデスと似たノーズにしてレーキ角(マシンの前傾姿勢)もそんなにつけないコンセプトを採用したが、それでは開発に限界があることがわかった。そこで今年はレーキ角を昨年よりも大きく取り、ノーズも一昨年型に戻した」
ワトソンはそれ以上、多くは語らなかったが、ドライバーたちはメルボルンで失速した理由を「路面がバンピーだったから」と口を揃え、「バーレーンはスムーズな路面なので僕たちのマシンに合っていた」と語っていた。レーキを大きくつけると、フロアの前端がバンピーな路面に底打ちし、ダウンフォースが抜けてしまうことでブレーキングで乗りにくいマシンとなる。メルボルンに比べるとバーレーンは路面がスムーズで、レーキ角をつけてもそのような悪癖が顔を出すことがなかった。
もちろん、このバーレーンで乗せ換えることになったホンダのPUも改善しているが、そのPUは車体に搭載されないと走ることができない。さらにその車体は4本のタイヤがついて初めて走る。PUの性能ももちろん大事だが、その性能を生かすも殺すも車体次第だということを、トロロッソはきちんと理解している。
田辺TDは言う。
「パワーがなくて戦えないという声は、いまのところドライバーからもチームからも聞いていません。今回の結果は、チームが持ち込んだ空力アップデートと、ドライバーがうまくラップをまとめてくれたおかげだと思っています」
昨年は感じられなかった一体感こそが、バーレーンGPの予選でトロロッソ・ホンダが6番手に躍進した最大の要因だったのかもしれない。