昨年の開幕戦で決勝トップ6を独占したレクサスLC500だが、今年の開幕戦の予選では6台中4台がQ1ノックアウト。6号車のWAKO'S 4CR LC500がQ2で4番手を獲得したのがやっとの状況となってしまった。昨年のチャンピオンメーカーに、何が起きているのか。
予想された20度前後の気温から一転、気温9度という低気温のなかで開催された予選。GT500クラスの多くのチームがタイヤチョイスで温度レンジを外してしまう形となったが、その影響を大きく受けたのがレクサス陣営だった。
ZENT CERUMO LC500の立川祐路が話す。
「今回、レクサス陣営はなかなかタイヤが温まらない。今回は思いのほか、タイヤが温まらないなかで、NSXの方が温まりがいいですよね」
立川が話すように、予選Q1の周回数を見ると、レクサス陣営がおおよそ9周を走って8周目、9周目にトップタイムをマークしているのに対して、ホンダNSX陣営は1~2周少ない。
もちろん、レクサス陣営が全体としてタイヤ選択を外したといえばそれまでだが、昨年まではブリヂストンユーザーとして比較すると、レクサス陣営よりもホンダ陣営がワンランク硬めのチョイスしていた傾向があったが、今年のホンダ陣営はレクサス陣営と同じようなタイヤチョイスになっているという。
そのことからも今年のNSXは昨年よりもセットアップの幅に広がりをもてる仕様になっているのかもしれない。
ホンダNSXがパフォーマンスをアップしている状況は多くのライバルが認めているが、昨年チャンピオン、KeePer TOM'S LC500の平川亮の見方は興味深い。
「厳しい結果ですけど、予想はしていました。この前の岡山での公式テストから、クリア(な状態)でアタックしても他のクルマの方が速かったりと、余裕はなかったですし、その後の富士テストでも好調ではありませんでした」
「レクサスのブリヂストンユーザー全体がいまいちでしたから自信もあまりありませんでしたし、この開幕でも気温が低くなるので余計にマズイなと思っていました」
「今日もタイヤが全然温まらなかったですし、5~6周掛かったり、ちょっと雨が降り始めた時には7~8周かかってしまうこともありました。もともとクルマのセットアップも決まっていないなか、この開幕戦ではタイヤの温度レンジも外してしまって厳しい1日でしたね」
ただ、自力でライバルに負けているとは思ってはいないようだ。
「NSXが速いというよりも、我々がまずセットアップやタイヤ選択を外しているのかなと。去年は速くてチャンピオンも獲れているわけですので、クルマのポテンシャル自体はあると思っていますので、今はクルマのセットアップで良い部分から外れちゃっていますけど、戻さないといけないのかなと思っています」
「セットアップとタイヤを外さなければ、まだまだ戦えると思っています」
レクサス陣営内ではWAKO'S LC500がトップで、Q1ではKeePer LC500との差はコンマ3秒あったが、そこに関しても理由があった。
「サーキットサファリ中に僕がフロントスポイラーを壊してしまって、新しいモノに替えたんですけど、そこでクルマのバランスが大きく変わってしまった。そのえらくバランスが変わった状態でニック(キャシディ)はアタックしてくれたので、そのなかではいい仕事をしてくれたと思います」
同じくレクサス陣営のZENT LC500のでQ1を担当した石浦は、素直に現在の状況を認める。
「テストから詰め切れていなかった部分があるので、6号車とのコンマ3秒はその部分があるのかなと思います。そこは詰めなきゃいけない」
今年はブリヂストンが新しい構造のタイヤを開発して、実戦に投入しており、そのタイヤの要素と、2018仕様のラテラルダクトを中心とした空力パーツ、そしてマシンのセットアップの組み合わせが、レクサスLC500のなかでまだまだ煮詰め切れていないというのが、現在のパフォーマンス低迷の理由のひとつで間違いないだろう。
今回の開幕戦ではそこにタイヤチョイスを外してしまったことが加わり、予選後にどのチームに聞いても「原因がよく分からない」状況だった。クルマ、タイヤ、そして空力、エンジンのそれぞれのポテンシャルはたしかにまだまだ高いのかもしれない。だが、それらの要素がバラバラで調和を欠いてしまえば、いくら昨年のチャンピオンメーカーと言えども、結果は出せない。さらに、もしかしたらTRDの体制変更もそこに影響を及ぼしているのかもしれない。
いずれにしても、スーパーGT500クラスのコンペティションの高さを改めて垣間見るとともに、レクサスLC500+ブリヂストンユーザーの組み合わせチームの復活には、まだまだ時間が必要だと実感させられた開幕戦の予選内容だった。