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「ルパン三世 PART5」なぜデジタル社会を舞台としたのか? 矢野雄一郎監督×大河内一楼インタビュー

2018年04月07日 19:53  アニメ!アニメ!

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「ルパン三世 PART5」なぜデジタル社会を舞台としたのか? 矢野雄一郎監督×大河内一楼インタビュー
2018年4月3日より、前作から2年の時を経て最新テレビシリーズ『ルパン三世 PART5』が放送される。
イタリアを舞台にハードボイルドなドラマが展開された前作とは打って変わって、本作の重要な要素は「デジタル」。アルセーヌ・ルパンがその名を轟かせたフランスを中心に繰り広げられるデジタル犯罪に、ルパン一味はどう絡んでいくのか……。
そんな本作の監督を務めるのは、これまでもシリーズに関わってきた矢野雄一郎氏。そして、シリーズ構成を手掛けるのは『ルパン』初参加となる大河内一楼氏だ。
長きにわたる歴史の中で、様々なルパン像を描いてきた本シリーズ。最新作では、新たなる要素をどのように『ルパン』に取り入れていったのか。最新作の中核をなすお二人に、本作の魅力について訊いた。

アニメ『ルパン三世PART5』
https://lupin-pt5.com/


■ 現代の泥棒は、当然スマホも使うはず

――『ルパン』にこれまでも携わってきた矢野監督と、初参加となる大河内さんですが、それぞれが今回のお仕事をお受けになった経緯というのは?

大河内
トムスさんから、「今度『ルパン三世』のPART5を作るので、協力してください」といったご連絡が来て、『ルパン』がもともと好きだったのもあり、「やります!」と即答でした。

矢野
僕の方は、そのまま続投してほしいと言われて「はい!」 と。

――お声がかかった時点で、企画はどこまで固まっていたのでしょう?

大河内
『PART4』の続きであること、舞台がフランスということくらいでしたね。

――最初からデジタル要素を押し出して行くと決まっていたわけではなかったのですね。

大河内
はい。ただ、現代を舞台にルパンを描くとしたら、当然スマホも持っていて、盗みも現代の技術を活かした方法になるだろうし、盗られる側も守るために人を大量に配置するだけじゃなく、デジタル機器で対応しているはずだと思ったんです。『ルパン三世』の舞台を現代にする上で必然的にデジタルを扱うことになっただけで、電脳世界のルパンにしようと思ったとか、そういうことではないんですよね。

矢野
僕が参加したときは、すでにデジタルなものを扱うことが決まっていたのですが、未来的過ぎず、自然とデジタルなものが絡んでくるという今回の形に落ち着いたのはよかったと思います。


――そんな世界観で物語が繰り広げられる中、重要な設定として現実のダークウェブ(※匿名での通信が可能なサイトで構成されるネットワーク)を彷彿とさせるネットの裏の世界「ディープウェブ」が登場します。

大河内
今回『ルパン』を書くにあたって調べものをする中で、麻薬取引に使われるダークウェブの通販サイトの存在を知りました。それがとても興味深かったんです。手渡しよりも安全で安く、「ここの麻薬は混ぜ物なし!」などといったユーザーたちのレビューを参考に買うことができる。今回の『ルパン三世』では「今」を書こうと思ったので、一話から現代的な新しい犯罪を取り入れさせてもらっています。

■ ルパンのかっこよさは緩急から

――シリーズ中の各作品で印象の異なるルパンのキャラ像ですが、今回はどういった方向を目指されましたか? 

矢野
最初に企画書をもらったときに、「かっこいいルパンを描いてほしい」というオーダーがあったんです。で、かっこいいルパンとはなんだろう……と考えていく中で、それは緩急じゃないかなと。ルパンって、ゆるい部分が全体の80%くらいを占めているんだけど、いざというときは決める。そういうカッコよさと、普段のゆるさのバランスが人を惹きつけているのだろうと思い、そういった部分は特に気を付けて芝居を付けています。


――大河内さんは、『ルパン』という歴史のある作品のキャラクターたちを脚本上で動かしてみていかがでしたか?

大河内
いままでシリーズを観てきた人たちの中にあるキャラクター像を壊さないようにしつつ、ドラマ的に新しいことをチャレンジすることは、難しくもありつつ楽しかったです。例えば銭形は、有能な刑事でルパンのライバルということになっているけど、これまでのシリーズで何度となく負けてきた。どんなに有能ですとセリフで説明したところで、お客さんはみんな銭形が負けるところを見てきてしまっている。

――ときには味方になったりもしますからね。

大河内
そうなんですよ。これは銭形だけじゃなく、ルパンのことも次元のことも、お客さんはよく知っている。今回のpart5でどう変えたところで、みんなの記憶は変えられないんです。銭形の有能さや組織の人間としての彼を描こうとなると、もう一つ銭形側に視点がほしくなる。八咫烏というキャラクターは、そういうところから生まれてきたキャラクターでもあるんです。


矢野
銭形の代わりに激昂したりしてますよね。あと、今回ならではと言えば、五ェ門が機械をまったく使えなかったり、それぞれのキャラらしさが見える瞬間も見どころだと思います。

大河内
自然とキャラクターを表現することにもなりましたよね。ルパンは最新のスマホも使いこなすけど、次元はガラケー程度。五ェ門はまったく使えなくて、銭形はICPOのエリートですからね。当然、職務として使うことができる。

■ 絵のマイナーチェンジ

――現在公開されているメインビジュアルですが、絵のタッチなどからも『PART4』より現代的な印象を受けます。

矢野
前回の『PART4』は昔のセルアニメを彷彿とさせる、強弱のある線で作品の雰囲気を表そうとしていたんです。今回は逆にそういった線は似合わないだろうということで、現代的な世界観らしく整理された線になっていますね。そうやって、絵に関してもマイナーチェンジを加えているんです。

――映像面での見どころに関してはいかがでしょうか?

大河内
個人的に食事周りが印象的でした。

矢野
そうですね。今回、ルパン、次元、五ェ門の三人が一緒の建物に住んでいて、関係性が『PART4』よりも密な感じなんですよ。ご飯を一緒に食べるシーンなどで、三人の仲の良さを描いています。


大河内
いままでのルパンってどこに住んでるのとかはよくわからないけど、今回は次元と同じ建物に住んでることにしたんです。その部分を明確にしたのは、設定的にも映像的にも新鮮かもしれないです。

――日常以外ですと、PVに登場するシリーズファンにはおなじみのフィアット500はもちろんですが、今後登場するであろう現代ならではのアイテムとルパンたちの共演も楽しみです。

矢野
アクションなど、そのときのシチュエーションに合うアイテムの候補を考証の白土晴一さんに提案していただいて、それを劇中で再現しているんですよね。実在のものが多く登場するので、そういった部分も見どころになっているかと思います。

――では最後に、あらためて新シリーズの注目ポイントをお願いいたします。

矢野
映像で言えば、アクションシーンが多めなことです。ルパンたちを身軽な感じで描くことで、画面をエンターテイメントな方向に持っていきたいと思っています。ドラマ面では、単発のエピソードの中には過去作のテイストでまとまっている回があったりして、全体を通して観るとバラエティに富んだシリーズになっているかなと思います。

大河内
バラエティは自分がルパンを見ていて好きだった部分なので、意識しましたね。現代ならではのデジタル技術を活かしたこともやるんだけど、電子じゃない煙草もふかすし、恋愛や友情もある。さらには『PART1』みたいなハードさ、『PART2』みたいなギャグテイストも入っている。連続もののストーリーの中に、バラエティ豊かな単発話数が挟まれるので、毎週色々なルパンを楽しめると思います。「そうそう、昔観てたルパンってこれ!」など、各話ごとに周囲の人たちと語り合いながら楽しんでもらえると嬉しいですね。