仕事というのは、あまり本気になり過ぎると息切れをする。寝食忘れてのめり込むのは体に悪い。ある程度手を抜くことも、一種仕事の技術と言える。
現に僕は、原稿をやるときは大概飲酒をしている。お酒を飲まないと文字が浮かばないというほどではないが、適度にリラックスしつつ書けて効率も良くなるので、これは誰に咎められても止める気はない。(文:松本ミゾレ)
新入社員なら微笑ましいが、そうでないならシビアにとらえるべき
先日、ちょっと可愛い話を見かけてしまった。おーぷん2ちゃんねるの「【悲報】無能ワイ、仕事でどこまで適当にやればいいか分からない」というスレッドを、紹介させてもらいたい。
スレを立てた人物は、以前上司から仕事について「もっと雑でいいよ」と多少の手抜きを許されたという。そこで彼は雑に仕事をしてみたのだが、今度はその上司に「ええ……ちょっと雑すぎやろ」と困惑されてしまったというのだ。
手抜き加減が分かってないあたりがなんともハートウォーミングなエピソードである。個人的には、多少の手抜きを許された後にがっつり雑に仕上げる人って、嫌いじゃない。もちろんそういうのが部下にいるなら、そのあとは一応手抜きの極意めいたものをレクチャーしなければならないので手間はかかるんだけど。
さて、このスレ主については「さては新入社員だな? ほほえましいぜ」とか思ってたんだけど、読み進めると、勤続1年ほどが経過していたと説明されている。その上で自分のことを無能と自覚している節もあるようだが、1年ほど働いていて、上司にまだ仕事の手抜き具合を指摘されるとなると、ちょっと事情が変わってくる。頭をフル回転させているのに「よく考えろ」と怒られることもあるようで、可愛いとか言っていられない状況の可能性が高い。
部下は「俺が無能なんじゃない、上司がしっかり教えてくれないからだ」と感じていいと思う
今回の、自分を無能と呼んでいるスレ主のような人に自信を持って働いてもらうためには、当人の意識改革も大事だとは思う。だけど同時に、上司も上司で適切な指導をする必要は絶対にあるとも感じられる。
部下の仕事の出来なさは、必ずしも部下のせいではない。場合によっては上司が意図的に部下に適切な指導をしていないか、していると思い込んでいるだけのこともある。
このスレ主の詳しい状況については、実際にスレ主の職場での様子を観察しないと判然としないものの、世間には、指導を怠り部下の失敗を招く上司もいる。そしてそういう上司ほど、いざ問題が起きたとき「ちゃんと教えたろ」と、失敗を責めてしまいがちだ。自分の指導を立ち返ることもしない人の下についた人間が、しっかり育つことはないだろう。
もちろん、中には「こいつそもそも労働が向いてないな」としか思えない部下を持つこともあるかもしれない。だけどそういうイレギュラーは本当に少ないし、大抵はしっかり指導することで、何とか使い物になることの方が多い。
今回の話にこういうオチを持ってきた理由は、世間には、というか僕の周りには、部下にろくな指導をできていないのに、できた気になっている上司が多いのだ。僕は直接関与しないから実害もないんだけど、それでも、そういう上司の下で働く労働者はたまらないだろうなと思う。
僕は仕事については、下の立場の者は上に責任転嫁をすることをもっとみんなが覚えるべきだと感じている。部下は「俺が無能なのではなく、上司がしっかり教えてくれないことが原因じゃないのか」と感じていいと思う。
上司は上司で、そんな責任転嫁をされたくないのであれば、必死で指導をすればいい。職場の人間関係に馴れ合いは不要。そのほうが、上司にとっても仕事しやすくなるんじゃないだろうか。