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noovyが見せた“1年の集大成” 初ツアーファイナルを振り返る

2018年04月05日 13:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 リン・ユーチュンを輩出した台湾の王手マネジメント「EeLin」のオーディションで選ばれたメンバーによって結成され、2017年1月に来日。ライブを精力的にこなして日本でもメジャーデビューを果たした台湾の4人組バンド、noovy。彼らが東名阪を回った1st TOUR『Singin’ for you!!』の最終公演が、3月18日、渋谷TSUTAYA O-nestで開催された。


(参考:noovyが“ラブソング集”の2ndシングルに込めた思い 日本と台湾における「恋愛観の違い」も語る


 O-nestはnoovyがライブ会場限定作品を1000枚売ることを目標に日本での活動をはじめた場所にして、目標を達成して行なった初ワンマンライブの舞台にもなった4人の思い出の場所。彼らが初ツアーの最後に、ふたたび原点=ホームに帰ってきたことを伝えるライブとなった。


 今回のツアータイトル『Singin’ for you!!』は今年2月にリリースした2ndシングル曲「Singin’ for you」から取られたもので、恐らく、初の東名阪ツアーで「これまで支えてくれたファンのみんなに演奏を届けたい!」という気持ちを表現したものでもある。それを象徴するかのように、冒頭にはライブ会場限定作品を1000枚売り上げた瞬間、メジャーデビューをファンの前で報告した瞬間、そして現時点での最新シングル『Singin’ for you』のリリースを報告した瞬間など、バンドのこれまでを振り返るSEが次々に挿入され、その後ベースミュージック~トラップを基調にしたBGMに乗って4人が登場。ミニアルバム『ONE』の収録曲「Never Gonna Stop」の疾走感溢れるギターロックでライブがスタートした。


 この日印象的だったのは、メンバーの演奏力が鍛えられ、以前と比べてもバンドのアンサンブルが格段にソリッド&タイトになっていたこと。また、冒頭の「Never Gonna Stop」でメンバーたちが身を乗り出すように演奏する様子はもちろんのこと、続く「Cross the Line」ではMarkのドラムに乗ってボーカルのShawn、ギターのHankとベースのJKがステージを広く使って観客を煽るなど、ステージングもよりダイナミックに。序盤に疾走感溢れる楽曲をまとめて一気にライブに引き込んでいく展開も、ライブバンドとして成長した今ならではだ。


 また、「準備はいいですか? 一緒に踊りましょう!」と伝えてはじまった「Move It」では、序盤とは一転、J-POPとC-POPのよさを兼ね備えたポップでリズミカルな楽曲でShawnがホイッスルを吹きながら観客を煽り、続く英語バージョンの「bye bye darling」ではメンバーの合図で観客が手を振るなど、演奏面/ライブパフォーマンス面ともに様々な角度で観客を楽しませる。「ロック」「パンク」「ポップ」など曲ごとにカラフルなグルーヴが生まれているのも、今の4人ならではだ。


 noovyの4人はロック/ポップ/クラブミュージック/ヘヴィロックなど時代/ジャンルを問わず様々な音楽を聴いているため、彼らの趣味嗜好がより反映されれば、音楽性はさらに広がっていくだろう。中盤には「ここは僕たちが初めてCDを売った場所です。そのとき売れたのは6枚でした。でも、2人が2枚買ってくれたので、ファンは4人でした」「今、こんなに来てくれて感動です!」とMC。この場所から日本での活動をはじめた彼らが、観客とともに成長してきたことを伝える瞬間だった。


 そうしたオリジナル曲での逞しい成長があるからこそ、中盤にカバー曲として披露されたColdplayの「Yellow」(2000年の『Parachutes』収録)も魅力的なアクセントになっていた。この楽曲はShawnがオーディションの際に歌った曲。MCでは「『Yellow』があるから、今のShawnがいます」と思いを伝えてアコースティックギターを弾きはじめ、Hankのギターリフなどを加えてバンドの演奏がスタート。メンバーが促して観客がスマートフォンの明かりをペンライトのようにかざし、会場の風景がガラリと変わっていく。続いて〈寄り添い歩いていく〉という歌詞を持った「Lily」でメッセージをストレートに伝えると、Shawnが作詞/作曲を担当したUSポップパンク風の「First Kiss」では観客からクラップが生まれて会場一体に。Markが4カウントを取った新曲「Dunk Shot!」ではギターがドライブする爽快感いっぱいのロックチューンで、ポップでロックなnoovyらしさを全開にした。


 とはいえ、この日のハイライトは、「僕たちの初めての本格的なラブソングです」とMCしてはじまった「Singin’ for you」だ。エモーショナルなShawnの歌ではじまり、Markのドラムを皮切りにメンバー全員の演奏が熱を増すこの曲は、〈照れくさくて/言えない/想い乗せて/この声ずっと届けたい〉というファンへの気持ちが込められたナンバー。音楽的にもnoovyが大人びた表情を見せる、バンドの「深み」を伝える楽曲でもある。本編最後は最初期からの楽曲「Garage」。「この曲はずっと僕たちと一緒に成長して、どんなときも近くにいてくれました。一緒に色んな場所に行きました」と過去を振り返ると、ロック/ポップ/バラードと様々な楽曲を横断したこの日のステージを締めくくるように、ふたたび疾走感満載のロックチューンが広がっていく。アンコールではファンからリクエストされた「ONE」などを演奏。最後は〈Ohoooooo All for One/Ohoooooo One for All〉というサビを会場一体になってで合唱し、文字通り“ひとつに”なりステージを終えた。


 約1年前、日本にやってきたnoovyは、共同生活を送りながら精力的にライブをこなす中でバンドとしての絆をより深め、彼らの人気は徐々に広がっていった。その出発地点になった渋谷O-nestでのツアーファイナルは、2017年1月からはじまった約1年間におよぶ日本での活動の集大成とも言えるものだった。もちろん、4人にとってここはまだまだ通過点。現在バンドはハイペースでレコーディングに入っているとの情報もあるため、いよいよ日本でのデビューアルバムにも期待できるかもしれない。この1年間に様々な成長を遂げた彼らだからこそ、これからどんな景色を見せてくれるのか、ますます楽しみにしたい。(杉山 仁)


■セットリスト
M1. Never Gonna Stop
M2. Cross the Line
M3. Thunder(仮・未発表音源)
M4. Move It
M5. bye bye darling(English ver.)
M6. Yellow(COVER from Coldplay)
M7. Lily
M8. First Kiss
M9. Dunk Shot(新曲・未発表音源)
M10. Singin’ for you
M11. Garage


<ENCORE>
En1. Knockin’(仮・未発表音源)
En2. ONE