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あいみょんが明かす、音楽活動で芽生えた“闘争心” 「生々しい表現は知らずに出てくる得意技」

2018年04月05日 12:42  リアルサウンド

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 あいみょんが4月25日に4thシングル『満月の夜なら』をリリースする。


 本作は、昨年9月にリリースした1stフルアルバム『青春のエキサイトメント』以来の新作。アルバム発売後、今年に入ってからもあいみょんは『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)、『ミュージックステーション』(同)、『SONGS』(NHK総合)など、音楽番組に度々出演。もとよりクリエイターや音楽プロデューサーから注目を集めていたが、さらに広い層から脚光を浴びる存在となっている。


 メジャーデビュー曲「生きていたんだよな」、2ndシングル曲「愛を伝えたいだとか」、3rdシングル曲「君はロックを聴かない」と、リリースごとに新しいチャレンジに挑んできたあいみょんだが、今回の「満月の夜なら」でも、またこれまでとは違ったアプローチに挑戦。今回のインタビューでは、『青春のエキサイトメント』の反響や、「満月の夜なら」をはじめとした楽曲の作詞を中心に話を聞いた。(編集部)


■「もう一味違うあいみょんを見せたい」


ーー昨年9月に『青春のエキサイトメント』を発売して以来、最近だと『関ジャム』や『Mステ』、『SONGS』に出演するなど反響もかなりあったと思いますが、いかがですか?


あいみょん:音楽番組への出演はすごく嬉しかったのですが、本当に急に決まったので、まずは驚きましたね。『関ジャム』では「愛を伝えたいだとか」、『Mステ』では「君はロックを聴かない」、『SONGS』では「生きていたんだよな」と3曲違う曲も歌えましたし、このタイミングで複数のメディアで違う曲ができるのは、すごくありがたかったです。


ーー『Mステ』では、以前から憧れているという小沢健二さんとも共演して。


あいみょん:はい、まさか本当に会えると思っていなかったので、さすがに緊張しました。ご挨拶させていただいた時に、私のことも人繋がりで知ってくれていたようで。すごく優しく、素敵な方でした。


ーー大きな音楽番組に出演するにあたって、意識したことはありますか?


あいみょん:それはあまり考えなかったです。とにかく良い歌を歌おう、この曲の良いところが伝えたいと思っていました。


ーー今振り返ってみて、『青春のエキサイトメント』はどういうアルバムになったと感じてますか?


あいみょん:9月にリリースして半年近く経ちますが、今もずっと反響が続いている状況なので、長く聴けるアルバムになったのはすごく良かった。結果論でしかないかもしれないですけど、長くじわじわと愛される楽曲であるほうが良いかもしれへんなと思ってて。アルバムを作り終わったあと、私としては意識を先に向けて「次の曲、次の曲」って思っていた最中、こうやってまたアルバムを聞いてもらえて。配信とかサブスクでは、1曲1曲のリアクションもわかるから、ファンの人たちはこういうのが好きなんやとか、改めて自分でも聞き直しましたね。


ーーそして、4月25日にはニューシングル『満月の夜なら』がリリースされます。アルバムのあと、次はこういう曲にしよう、という構想はあったんですか?


あいみょん:具体的には考えていなかったですけど、前作を毎回超えていかなあかんっていうのはありますね。「愛を伝えたいだとか」を超えるもの、「君はロックを聴かない」を超えるもの、そういうのは常に考えています。


ーー今回の「満月の夜なら」も、今までにないアプローチの曲ですよね。この曲はいつ作ったんですか?


あいみょん:最近ですね。1月の半ばとか。特に意識していたわけではないんですが、1月は、自分の中で曲を作る期間だったみたいで、10曲くらい作ってたんです。「満月の夜なら」はその時に作ったうちの1曲ですね。次のシングルを出すという話もあがっていたんですけど、どれも表題としてはしっくりけぇへんなと思っていたなかで、たまたまこの曲ができて、おっいいんじゃないかと。スタッフさんからも反応が良かったです。


ーーその期間に作った曲は、どれも方向性は違ったんですか?


あいみょん:どれも違いましたね。でもちょっとグルーヴィーというか、揺れる感じをもう1回やりたいなとは思っていました。


ーー「愛を伝えたいだとか」のような?


あいみょん:そうですね。でも、一緒にならへんようにっていうのは考えてました。私としても、「愛を伝えたいだとか」のインパクトって大きかったと思うんですよね。だからこそ、こういう横ノリの曲ばっかりを作ることはしたくないし、かと言って、もう1回“ザ・J-POP”として「君はロックを聴かない」をやるのも違う。その丁度うまい具合のところを行きたくて、もう一味違うあいみょんを見せたい、新しいことにもチャレンジしたいと思っていました。「満月の夜なら」は、1番と2番のAメロのメロディが違って、ラップみたいになっていて。こういうのは、前々からチャレンジしたかったんですよね。


ーーたしかに、全体的なサウンドからもグルーヴを感じられる曲ですね。


あいみょん:今回も、いつもお世話になっているagehaspringsの田中ユウスケさんと一緒にやらせていただきました。ギターと声だけのデモをお渡しして、私のイメージとかは特に伝えずに、田中さんに直感で一度アレンジしてもらって。その後に、田中さんから返ってきたものを聴きながら、一緒にここはもう少しこうしましょうという話をしました。第三者の意見を大事にしたいというか。


ーー歌詞も作曲のタイミングで完成したんですか?


あいみょん:そうですね。作詞作曲は同時なので、その1月の曲作り期間に書きました。その時は何も考えずに、言葉が下りてくるままに書いたんですけど。私の原点にあるのは、この曲にあるような官能的な詞なんですよね、きっと。桑田佳祐さんや平井堅さんのように、いい具合にいやらしさを出しつつも直接的じゃないという歌詞に憧れているので。


ーーインディーズの頃からそういう曲がありましたよね。


あいみょん:こういう曲の作詞を書くのが面白くて仕方ないんですよ。ゲームとかパズルみたいな感じで、うまい具合に当てはめていかないといけないので。例えば、私は<アイスクリーム>って歌っているけど、聴いている人はこの<アイスクリーム>をどう捉えるのか。私がこうやってインタビューで「官能的」って言ってしまうことで、歌詞が全部何かに引っかかっているんじゃないかってみんな錯覚するんかな、とか、別のことを考えるかもしれへん、とか(笑)。こういうテイストの曲の歌詞は、一度客観的になって作詞をするというか、みんなこの<アイスクリーム>という言葉をああいう風に捉えるやろうな、しめしめとか考えてますね(笑)。楽しいです。


■「闘争心を持ち続けたい」


ーーなるほど(笑)。カップリングの「わかってない」は、『tamago』(2015年)に収録されていた「分かってくれよ」のアンサーソングかと思ったのですが。


あいみょん:あぁ。私としては特に意識していたわけじゃないんですが、確かにアンサーソングと思われるかもしれないんですね。「分かってくれよ」は男目線だし、「わかってない」は女目線だから。聴いた人が「もしかしてこれ……?」って勘ぐってくれるのは面白いですよね。今回は2曲入りということがあったので、「満月の夜なら」を聴いた後にそのままスムーズに入れるような曲が良くて。「満月の夜なら」のなかにいる女の子が、「わかってない」の主人公なのかな? とか、対になっているという捉え方もできるだろうし。最近はたまたまリリースする曲が男目線が多かったんですけど、女の子目線は久々なので、新鮮だと思っていただけるかもしれないです。


ーー今回の2曲を通して、やっぱりあいみょんさんの軸にあるのは人間らしい生々しい部分だと感じました。


あいみょん:自分としては、それも特に意識せず出ているんですよね。昔と比べても、さらに意識しなくなりましたね。10代の頃は、こうやったらウケるかな? とか考えてたかもしれないですけど、最近は思いつくままに。そういう生々しい表現は、知らずに出てくる得意技なのかもしれません。


ーーあいみょんさんは他のアーティストに楽曲提供することもありますよね。


あいみょん:そうですね。同世代の方たちに書くことが多いです。初めては19歳の時にジャニーズWESTさんの「Time goes by」(2015年リリースの『ズンドコパラダイス』通常盤に収録)の歌詞を書いた時なので、自分のインディーズデビューよりも作詞家デビューの方が先だったんですよ。でも、その時の経験がなかったら、提供の面白さをわかってなかったと思います。すでにメロディがあって、そこに詞を乗せるという作業はその時が初めてでした。どこまであいみょんっぽさを出したらいいんだろうと悩みながらも、私に作詞を頼むっていうことは、私らしさもほしいし、でもジャニーズWESTさんの色もないとアカンって思うと難しくて。


ーー最近だと、DISH//の「猫」(2017年リリースの『僕たちがやりました』に収録)も。


あいみょん:「猫」、めっちゃいい曲ですよ(笑)。私にも歌わしてほしい(笑)。メンバーの方が私の曲を前から聴いてくれていたみたいで、オファーがあって。光栄でした。「猫」はDISH//のファンの方たちからも人気みたいで、カップリングの曲がフィーチャーされるって素敵ですよね。すごい嬉しい気持ちになりました。


ーー新しい学校のリーダーズに提供した「学校行けやあ”」は、かなり振り切った印象もありますが(笑)。


あいみょん:「学校行けやあ”」は、「自分って、こんな曲もできるんや」って思いました(笑)。すごく難しかったですよ。<学校行けや>っていうワードを使うというお題があって。そんな曲あらへんじゃないですか(笑)。設定のクセ、めっちゃ強いやんって思いながら、シチュエーションがわからへんから。でもそれが今後の自分の作詞の勉強にもなるので、提供は今後もできたら嬉しいですね。


ーーシンガーソングライター以外にも、作詞家・作曲家としても活動していることに関しては、どう感じていますか?


あいみょん:最初の頃は、自分がこういう活動をするなんて思っていませんでした。もし、自分の声に何かがあって歌えなくなったとしても、作詞は続けるだろうなと思うときがありますね。楽曲提供って自分の中で、大きな役割を持っていて。あいみょんっていうアーティストをやりつつも誰かの曲を書くときは一旦リセットできるんですよね。他にももっといい曲書ける気がするなって思ったりとか。やっぱり提供でこそいい曲を渡したいと思いますし。提供でめっちゃいい曲出しちゃったら次の自分の曲にプレッシャー感じることもあります。


ーー「声が出なくなっても詞は残したい」という発言は印象的ですね。


あいみょん:それはいつも思いますね。自分の声やからこそ良いところもあるんでしょうけど、他の人の歌声でも自分の作詞作曲の良さを出せるのも、実力のひとつだと思いますし。他の人の歌声でも自分の作詞作曲した曲たちは生き続けるから。もちろん、今は自分で歌いたいとは思いますけど。


ーーあいみょんとしての活動の幅も広がってきていますが、その手応えはどう感じていますか?


あいみょん:いろんなジャンルの音楽ができることを自分の強みにしたいですね。それが一番見てほしいところなのかも。色々コロコロ変われるのって、シンガーソングライターだからこそだと思うんですよ。今回の曲も新鮮な気持ちで聞いてもらえたりするんかな、って思います。「満月の夜なら」を聴いたあとに、例えば「生きていたんだよな」を聴いたとしたら、驚くと思うし、私はそれってすごい面白いなと感じていて。ちゃんと自分の軸がありながらも音のテイストを変えていったりすると、自分としても次が楽しみになる。まあ、自分でハードルを上げまくっていますけど(笑)。


ーーあいみょんさんは、自分からどんどん戦いを挑んでいく感じがありますよね。


あいみょん:バトルですよね。「音楽は勝ち負けじゃない」って言われるんですけど、私は勝ち負けだと思いながら、ひとりで勝手にバチバチしてるんですけど(笑)。


ーーそう感じるのはなぜ?


あいみょん:誰かのライブを見て、「うわー負けたー」って思いますからね。「私負けてるやん。これには勝てへん」って。でも、私はそうやって捉えていた方が、いい曲書けると自分に言い聞かせてるというか。音楽は楽しいだけでやっていて、ハッピーであればそれでいいかなと思う時もありますが、勝ち負けの感覚のほうが強いです。競い合うからこそ楽しいし、悔しい感情が糧になる時もあるし、私は闘争心を持ち続けたいなと思っています。


(取材・文=髙木智史)