2018年04月05日 08:31 リアルサウンド
ヒロインが異例の胎児期からスタートしたNHKの連続テレビ小説『半分、青い。』。 そのため第1週「生まれたい!」の前半は主人公・楡野鈴愛役の永野芽郁と萩尾律役の佐藤健が胎児と赤ちゃんのナレーションとして参加し、4月4日放送の第3話から9歳の鈴愛を演じる矢崎由紗ら子役たちが活躍した。
『ひよっこ』を除き、朝ドラはヒロインの出演がほとんど第2週目以降になるため、第1週目は大人キャストの腕の見せどころ。本作でも、鈴愛の母・晴を演じる松雪泰子と律の母・和子役の原田知世が朝から眩しすぎるほどの美しさ対決を披露している。
ふくろう商店街きっての美人おかみの座を二分している晴と和子。『時をかける少女』で芳山和子(かずこ)を演じた原田に和子(わこ)という役を与えたのは脚本家・北川悦吏子の遊び心なのだろうか。1983年に女子高生役だった彼女が、母親役として再び80年代を歩むことになったが、彼女の少女性は35年経った今でも色褪せていなかった。
和子は夫とともに写真館を営み、時間があるときはピアノを弾く優雅な日々を送っているが、死体の中のカセットテープが喋るという架空の海外ミステリー小説『バニーリバー最後の事件』を出産前に愛読し、助産師を苦笑いさせる一面もある癖のあるキャラクター。作中でも楡野家と萩尾家との貧富の差が永野のナレーションにより説明されていたが、原田の少し赤らいだ無邪気な笑顔のせいか和子にはお金持ちの嫌味が微塵も感じられない。
北川が脚本を務めた『三つの月』(TBS系)でも夫婦役を務めた谷原と原田演じる萩野夫婦は、やはり声質に優しさが詰まっているように感じられる。2人とも白いベールを一枚通したような柔らかさがあり、おてんばで慌ただしい楡野家のペースをもグッと引き込んでいく。小花柄がよく似合う可憐な和子の空気に振り回されるキャストたちの姿が早くも想像できる。
一方、和子とは真逆で、食堂を切り盛りする庶民の晴を演じる松雪も異なるベクトルの魅力を見せている。彼女も原田と同じく内なる気品が溢れ出ている女優だが、なぜか困った顔がよく似合う。眉間にしわを寄せ想定外の妊娠に困惑する姿は、彼女の真骨頂と言ってもいいのではないだろうか。
へその緒二重巻きという難産で帝王切開を提案された際に真っ先にビキニが着れなくなることを嘆き、生まれてきた我が子に対して「猿みたい」と言ってしまう晴の正直さには思わず笑ってしまったが、過去には日清焼そばU.F.O.のCMでUFOガールヤキソバニーを演じたり、『デトロイト・メタル・シティ』のデスレコーズ社長役で脳裏に焼き付くインパクトを残している松雪のコメディーの才能は目を見張るものがある
同じ日に生まれた鈴愛と律を描く本作。原田と松雪も5歳離れているが、実は誕生日が同じ。第1話でも明かされていたが、これから鈴愛には耳が聞こえなくなる試練が訪れ、第2週からは永野と佐藤も登場することになる。鈴愛と律が成長するにあたり、和子と晴は脇に徹していくことになるが、対極しながらもどこか似たもの同士の2人はどんな母親像を見せていくのか楽しみだ。(阿部桜子)